私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています

前回の動物病院四方山話はこちら

私が動物病院に来てから半年たった頃かな？

その日はすごく忙しかったの。
夜の診察が終わったのが９時過ぎ。

そこから後片づけや、入院している子達の治療なんかをするの。
そんなこんなで、やっと一息ついたのが１０時頃。

獣医さん3人と看護師さん2人が処置室で帰り支度を始めていたわ。

そこへ、副院長先生が入ってこられたの。

「今日は遅くまでご苦労様でした。」

と、みんなをねぎらっておられた、その時。

待合室から

「すみませーん。」

と、女の人の声がしたの。

「『はーーい。』」

処置室にいた全員が返事をした。

この病院では、返事ができる人は全員で返事をすることになっているの。
そして一番近くにいる人が対応するんだって。

その時は受付の扉の一番近くにいた副院長先生が待合室に出て行ったの。

私は、
「こんな時間に誰だろう？」
って思ったわ。

みんなもそう思ってたみたいよ

・・・その時はね・・・

夜の10時頃だから、病院内はシーンとしている。

受付で副院長先生が誰かとしゃべっていたらその声は聞こえるはず。
でも、副院長先生は誰ともしゃべっていない。

「・・・？？？」

と思っていたら、副院長先生は何事もなかったかのように戻って来たのよ！

「あれっ？」
「今どなたか来られませんでした？」

看護師さんが副院長先生に聞いていた。

「いえ、誰もおられなかったわ。」

と言いながら、これまた何もなかったように処置室から出て行ったのよ！

えっ !?
確かに
「すみませーん」
って声聞こえたわよね。

だって、全員が
『はーい。』
って返事したじゃない！

副院長先生も受付まで出て行ったじゃない！！

・・・そうなんだけど・・・

言われてみれば、確かに変よ！

だってこの時間は、病院の入り口はとっくにカギがかけられていたんだもの。
誰かが外から入って来るって事はあり得ないのよ。

これって・・・もしかして

『心霊現象』

ってやつ？

でも、そうだとしたらみんなもっと驚いてもいいんじゃない？
怖くないの？

スタッフの人達ったら、

「気のせいだったんですかねぇ？」
「でも、確かに聞こえましたよねぇ。」
「私も聞こえました。」
「だって全員が返事しましたものね。」
「副院長も受付に出て行きましたしね。」
「でも考えてみたら、入り口のカギは閉まってるので誰かが入ってくるはずがありませんよね。」

などと、呑気に話をしている。

あまりびっくりしていなさそうね。

どうして？
そんなことを思っていると、ベテランの看護師さんが、

「よくあるんですよ。」

ですって！

「夜に一人で作業していると、処置室の中をマルチーズが走り回ったり。」
「あれっ？、って思うといなくなってるんですよ。」
「その日はマルチーズは入院していないので、いるはずがないんですけどね。」
「でも、別に怖いって感じでもないんですよねぇ。」

この、マルチーズが走り回る話は有名らしい。
複数のスタッフが経験しているらしいのよ。

という事は、心霊現象は時々起こっているって事よね。

まぁ、一平ちゃんは霊感なんてこれっぽっちも無さそうだから大丈夫だと思うけど。
実際、マルチーズも見たことが無いって言ってたし。

それからはね、私も注意してみるようにしたの。
そしたら意外といるものなのよ。

人間よりも私たち猫の方が感性は鋭いのよね。

一平ちゃんが夜勤の時なんかもね、
一平ちゃんには見えていないみたいだけど、例のマルチーズさんが走ってたの。
私がそっちの方を見て教えてあげようとしているのに、一平ちゃんったら、

「なに？」
「何か見えるの？みぃちゃん」

って言うのよ。

私が見てる場所を見た後でも、

「何もいないじゃない。」

だって！

本当に人間って感性が鈍いのかしら？
それとも一平ちゃんが特別鈍いの？

おわり

猫達って一点をジーッっと見つめる事ってありますよね。
それって
絶対何かがいるに違いない！
って思っているんですが、私には見えないんですよねぇ。

ちなみに、

「すみませーん」

の言葉は本当にはっきりと聞こえたんです！

ウソじゃないんです！

本当にそこにいたみんなが一斉に返事もしたんですよ。
今思っても不思議な出来事です。

この話以外にも、その病院のスタッフはいろんな体験をしているそうなんです。

しかーし、
里塚は「すみませーん」以外はそんな体験は一度もしておりません。

みぃの言う通り全く霊感が無いんでしょうね。

えっ？
鈍感なだけ？？

おわり