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「動物病院四方山話」18(コタツで復活!)

私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています

今回は私が直接体験した話ではないんだけどね

前回の動物病院四方山話はこちら


里塚少年が中学に上がった頃

お友達のおうちでシマリスが子供を産んだらしい。
動物好きだった里塚少年は見せてもらいに行きました。

シマリスの両親は、子シマリスの時に友達ファミリーの一員になったんだって。
だからその子達は友達にとても懐いていたみたい。
特にお父さんシマリスは大変懐いていて、ケージを開けると友達の頭の上や肩の上に乗って来るくらい。

子シマリスたちは巣箱の中でお母さんシマリスと一緒。
あまりじろじろ見てストレスがかかるのといけないので、ちらっと見るだけにしたんだって。
子シマリス達はちっちゃくてとても可愛いかったみたいよ。


それから2ヶ月ほどたった頃

「一平ちゃん、子シマリス君もらってくれない?」

と、そのお友達に頼まれたの。

お母さんシマリスはとても子育てが上手で、これからも家族が増えると思うから、子シマリス達の新しいおうちを探しているんですって。

小さいころから動物好きだった里塚少年は、

「えっ、いいの?」

と、二つ返事で子シマリスを里塚ファミリーの一員として迎え入れたのでした。

里塚家に仲間入りした子は男の子。
名前を頑張って考えた里塚少年。

頑張ったつもりみたいだったんだけど、付いた名前が

「シマオ君」

本当に頑張って考えたのかしら・・・

本人曰く、色々考えたんだけど最終的には直観で最初に思いついた名前にしたそうよ。
・・・やっぱりそうだったのね😴

何はともあれ、晴れて里塚ファミリーになった「シマオ君」。

シマリスさん達って、そんなに人に慣れない子も多いそうなの。
小さいころから手の上でひまわりの種をあげたり、色々人に慣れてもらう方法はあるみたいなんだけどね。

もともと、自由主義の里塚家。
そこまで慣れてもらおうと頑張ることもなく・・・

でも一緒に暮らしていると、シマオ君はそこそこ慣れてくれたらしいわ。
友達のシマリスさん達ほどは慣れることはなかったみたいだけどね。

そんな里塚家での一日の恒例行事、運動を兼ねた

シマオ君の「遊びタイム」

ひと部屋を閉め切ってケージの扉を開けると、シマオ君は自分の巣箱から出てきて自由に部屋の中を駆け回るの。
一通り遊んだ後は、ひまわりの種をあげると、それをせっせと頬袋に貯め込むんだって。
そのしぐさが可愛いのよねぇ。

当のシマオ君は、頬袋にひまわりの種を貯め終わると、そそくさと自分の巣穴に戻っていってしまうの。
そうするとケージの扉を閉めて、「遊びタイム」が終了よ。

詰め込みすぎじゃない?

初冬のある日
シマオ君のケージは里塚おばあちゃんの部屋に。

おばあちゃんは、明治生まれ。
昔気質の人だったので、何でも「始末」を心がける人だったの。

ここで言う「始末」とは、無駄遣いをせず倹約した生活を送る、という意味よ。

ご飯を炊いた後のお釜にはお茶を入れて、ご飯粒を残さずきれいにこそいで食べるの。
昔は今みたいにテフロン加工などでは無かったので、炊飯器のお釜にご飯粒がくっついて残ったんだって。

あとね、焼き魚を食べた後はそのお皿にお湯を入れて、骨に付いた身をきれいにするの。
そこに少しお醤油を垂らしてお吸い物のようにして飲んだり。
侮るなかれ、これが魚の骨から良い出汁が出ておいしかったらしいの。
里塚少年も好きだったみたいよ。

今のように飽食の時代ではない時代を生き抜いてこられた方は、同じようなことをされていたと思うわ。
見習わないといけないわね。

あら、話が少しそれちゃったわね。

そんな里塚おばあさんだったので、多少寒くなっても暖房は付けずにコタツで暖をとっていたの。

「シマオ、ご飯食べるかい?」

おばあさんがシマオ君のご飯が入っている袋を取り出したの。

ご飯の袋を開けと、いつもはその音でシマオ君は嬉しそうに巣箱から出てくるのですが・・・

その日は巣箱から出てきません。

心配になったおばあさんは巣箱を覗きました。
シマオ君は小さく丸まったままで、動きません。
目も閉じたまま。

心配になったおばあさんはそっと巣箱からシマオ君を出して、手の上に乗せてあげました。
おばあさんの手の上でも、シマオ君は丸くなったまま動きません。

「シマオ君が弱ってしまった!」

と、おばあさんは慌てました。

そして、とっさに思ったのは、

「コタツに入れて温めてあげよう!」

でした。

おばあさんは、コタツの布団を開けてシマオ君をそっとコタツの中においてあげました。
熱くなりすぎないように、コタツの布団は開けたままで様子を見ていたらしいの。

2、3分程たったその時、

シマオ君は突然パッと起きて、部屋の中を走り回ったの!
おばあさんは、びっくりするやら、安心するやら。

シマオ君が元気になってくれてほっとしたのでした。

里塚おばあちゃんはその後、何度も

「この子はコタツで命拾いしたんだよ」

と言ってました。

* * *

学校から帰って来た里塚少年がそれを聞いて、原因を調べたんだって。

「疑似冬眠」

という状態だったみたいです。

冬の間でもおうちを暖かくしてあげていたらシマリス達は冬眠はしないんだけど、寒くなると体温を下げて冬眠状態に入るそうなの。

冬眠に入ること自体は悪くないんだけど、おうちで冬眠すると冬眠から覚める時に、うまく起きられなくなることがあるらしいのよ。

今のように、インターネットですぐに情報を集められる時代ではなかったでしょ。
だから、うまく冬眠から覚めさせてあげる方法をYouTubeで調べる、なんてできなかったしね。

里塚少年は、冬の間暖かくしてあげてシマオ君が冬眠をしないようにしてあげる事にしたんだって。
シマオ君のお父さんやお母さんシマリス(シマオ君の実家ね)のお友達に聞いたら、友達も同じようにしているって言ってたそうよ。

おわり


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