「動物病院四方山話」13(わたし、失敗しませんので)
私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています
前回の動物病院四方山話はこちら
「おかえりー」
一平ちゃんが外から帰ってくると、階段の下までお迎えに行く。
一平ちゃんの車の音は覚えているから、一平ちゃんが帰ってきたらすぐに分かるの。
車のエンジンが止まるころにはもう玄関でスタンバイ。
ケンタももちろん私の後から一緒にお迎えに降りてきているわ。
「みぃちゃん、ケンタ、ただいまー」
一平ちゃんは靴を脱ぐと、まず私たちをなでてくれるの。
私もお返しにスリスリしてあげるわ。
でも、ケンタはあまりスリスリしないのよねぇ~。
これがいつものお迎えのパターン。
その後、私たちは一平ちゃんを先導するように階段を上がっていくの。
ルンルン気分で階段を上がっている時、
ズルッ
んっ?
やだっ、少し足が滑ってしまったわ!
そう思った瞬間
「あれっ?」
「みぃ、今階段踏み外した?」
一平ちゃんが何だか嬉しそうに、しかもからかい気味に言ってきた。
「いいえ!」
「私、階段を踏み外してなんかいませんけど!」
振り向きもせず、私はすまし顔で二階へ戻っていったわ。
だって、
わたし、失敗しませんので!
一平ちゃんったら、まだ何か言っているわ。
意地悪なんだから。
もう、意地悪な一平ちゃんなんて相手にしてあげないわ!
顔も見たくないんだから!
ほとぼりが冷めるまで窓のカーテンに隠れて外でも見ていようっと。
今度は違う日の出来事ね。
お天気がいい日で、窓から差し込んでくる日差しが気持ちよさそうだったの。
部屋には床から1メートルくらいの高さの所に窓があるのね。
その窓枠の所には、ちょうど私たちが乗れるくらいのスペースがあるの。
そう、この前私がカーテンに隠れていた場所なんだけど、日向ぼっこにちょうどいいのよ。
外を行きかう人や車を見下ろしたり。
なんといっても鳥や虫も飛んでくるからずーと外を見ていても飽きないの。
私たちにとっては、1メートルくらいの高さを飛び乗ることなんて余裕のよっちゃんよ。(ちょっと古いかしら?)
身軽な私はひょいッと登れるわ。
お茶の子さいさいって感じね。
でもね、その日はいつも登るところの床に、一平ちゃんの脱いだトレーナーが置きっぱなしになってたの。
それもちょうど踏み切る場所にあったのよ。
「もう、脱いだらちゃんと片づけなさいよね」
なんて思いながら、いつもの場所と少し違うところから飛び上がったの。
そうしたら、余計な事を考えてたこともあったのかしら、目測を誤ってしまったみたいなの。
手の引っ掛かりがいつもより悪かったの。
ズルッって少し滑ったのよ。
とっさに身をひるがえして華麗に床に飛び降りたわ。
ナイス着地!
って自画自賛しちゃったりして。
さすがでしょ。
ちなみに、ケンタは少しどんくさいところがあるから私のように華麗には着地できずに、ドスッと落ちちゃうけどね。
身が軽い私はずり落ちるなんて格好悪いことはしないわ。
もう一度念のため言っておきますが、落ちたんじゃないわよ、飛び降りたのよ!
でも、ちょっとごまかす感じで毛づくろいをしてみたりして、へへっ。
そう、その時よ。
もう分かるでしょ!
こういう時に限って一平ちゃんって目ざとく見てるのよ。
そしたら、ほら、また前と同じよ。
「あれっ?」
「みぃ、窓に登ろうとしてズリ落ちた?」
だって。
もう、いや~ねぇ、嬉しそうに言っちゃって。
何度も言いますけど、
「いいえ」
「ズリ落ちてなんかいません!」
そうよ!
だって
わたし、失敗しませんので!!
元はと言えば一平ちゃんがちゃんと片付けなかったからじゃないのよ!
そう思わない?
もう、一平ちゃんなんて無視してやるんだから。
本当に意地悪よね。
そういうとこ、嫌いよ・・・、ふんっ!!
* * *
今までの歴代の猫達を見ていて思いますが、ほとんどの子が失敗するとバツが悪そうに知らないふりするんですよね。
澄ました感じでささっとどこかへ行ったり、毛づくろいをしたりなんかしたりして。
聞こえないふりをする時もあったり・・・
(でも、耳だけはこっち向いているんですよねぇ)
当の本人たちは、おそらく触れられたくないんでしょうね。
分かってはいるんですが、それが可愛くてついつい突っ込んでしまうんです。
えっ?
皆さんはそんなことはしない?
もしかして・・・私だけ?
そうだとすると、私はみぃちゃんが言うように相当意地悪な奴ですよね。
反省しま~す。
おわり
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