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ゲレッパ君 part1

※エストロゲンは女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育、維持させる働きをもっている。
女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモン。

※量子のもつれとは
量子もつれ(エンタングルメント)とは、複数の量子の間で起こる現象で、量子状態の操作によりある量子を観測した際に、他の量子の状態に影響を与えてしまうという状態。

この地方の方言で最下位の事をゲッパと言う、しかしそれに有名ソウルシンガーが歌ったフレーズのゲロッパが混ざったかは不明だがゲッパからゲレッパに移行したのである、

物心ついた時から彼はいつも最下位だった、試験も徒競走も全てだった、言わずもがなあだ名はゲレッパだった、
両親からも殆ど諦められ見捨てられていた、学校も何となく高校をフェードアウトした形で卒業もしていない。
当時はモテる男は三高と言われ高学歴、高身長、高収入が条件となっていた、
もちろん彼はその真逆だった、スーパーの雑用のバイトをしながら四畳半一間のゴミダメの様な部屋に住んでいた。

ゼロ次元にて、「TERA III空間に送り込んだ炭素体ユニットだがソロソロ自分の役割と言うものに気づいてもらわんとな。」

ある時ゲレッパはスーパーの仕事仲間達からボーリングに誘われた、
彼がイジメられもせず目立たないのは以外と社交的で付き合いも悪くないところにあった。
ボーリング場にて早速ゲームが始まった、
驚いた事にゲレッパは初めてのボーリングで150と言うハイスコアを出したのだが、周りは女子も含めて何故かさらなるハイスコアを叩き出していた。
そう、つまりゲレッパはそれでも最下位、つまりゲレッパだった。
解散となったその時仕事仲間の女子英子に呼び止められた。
「ねえゲレッパ君、私思ったんだけど今日の私達の信じられないハイスコアは実はゲレッパ君のお陰なんじゃないかな?
貴方には何か特別な才能なのか役割がある様な気がするのよね、私実は、、」
その時後ろから声がして友達からの食事の誘いで英子は食事に行ってしまったのである。
それ以来ゲレッパは英子を意識する様になった、やがてどちらかというとパッとしない地味な存在だった英子がドンドン綺麗になっていった、
周囲の男達の目線も彼女に集中する様になった、そしてレジのバイトのイケメン大学生と付き合う様になった、
どうやらレジ打ちの大学生は既に卒業後一流会社に就職が決まっていて、卒業と同時に英子と結婚する事になっていた。
ある日、英子から呼び出された。
「ねえゲレッパ君、実は私の父は大学の教授でね、
ホルモンとか分泌系の研究してるんだけど、
私の劇的変化に興味を示してね。
私の身体にある装置を埋め込んだの、嫌だったけど父の研究だから仕方なく承諾したのだけど、そこで面白いデータが取れたらしいの。
その装置というのは私のエストロゲンの分泌状況がリアルタイムで大学の父のパソコンに転送されるという代物なのよ。
おかしな事に彼氏とのデートの時よりもこの部屋でバイトしている時の方が圧倒的に多く分泌されるみたいなのよ。
私、この前のボーリングでの事を父に話したの、
つまりゲレッパ君の事、そしたら凄く興味をもってね、
あなたを研究室に連れてきて欲しいと頼まれたの、やっぱりあなたって、あ、電話、父からだわ、
ごめんなさいちょっと失礼するわね、」
英子は電話を終えて戻ってきた、
「やっぱり、たった今父から電話あって、現時点で私のエストロゲンの分泌量が最高値を出したらしいの。
あなたと二人きりで会ってると言ったら、絶対に連れて来てくれと嘆願されたわ、それなりのお礼はすると言ってるのよ、どうかしら?」
ゲレッパはやむを得ず承諾した。
「ありがとう、底上げ君!」

ゼロ次元にて、
「さあてソロソロ回収だな、
瞬間ビッグバンで回収だ、
あちらではプランク時間と言うらしいがあの程度の知的レベルでは計測は不可能だろう、
それでも底上げは成功したのだから良しとしょうではないか。」

次の日の朝が来た、
ホルモンの相互作用と量子のもつれの関係を実証してノーベル賞を受賞した英子の父親は今はスェーデンにいる。
ゲレッパの存在は既に無く、いや最初から存在していなかった。
ゲレッパの両親には子供はいなかった、つまりゲレッパは産まれていないのだった。
元々美人だった英子は既に結婚が決まっていたのだった。

※ゼロ次元にて、「底上げは成功か、
回収と言ってもゲレッパとは私の事なのだがね、
本来物質の相互作用というものには距離も時間も関係が無い、
これにて少しは底上げになった様だ。」
続く


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