おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡

過日。ちょっと、ちょっと温泉に浸かりたくて行って来ました。
表題の写真は部屋についている露天風呂です。意外と僕はこのこじんまりとした露天風呂が大好きなのです。一人でゆっくりと浸かれるし、一杯やることも可能。

今年はどんな年になるのか…。年々予想だにしない出来事が多すぎて、本当に心細く感じる今日この頃です。

だけどいつも胸には、希望と感謝の念を持っているべきだ。そうでないとあっという間に奈落の底に転落してしまうのは必至。

という訳で、僕は露天風呂に浸かりました。
「嗚呼…極楽極楽。これぞ、温泉ですな！」

そう言った僕は、早速缶ビールを開けて飲んだ。
「くうぅ…まさにこれぞ温泉の醍醐味。最高ですネ！」
時刻は16時過ぎ。
世間の皆様、一足先に始めさせて頂いております。

今回は本格的な旅行ではなく、あくまで温泉に浸かりにきたので、夕飯もそこまで期待はしていない。お酒と温かいマンマがあれば十分なのだ。

僕はチビチビ飲みながら温泉を楽しんでいると、外から男性の声が聞こえてきた。
「悔しくてよォ、昨日は一睡もできねったョ」
男性の声から察するに、おそらく60代。どうやら電話をしているようだ。
「昔だったらよォ、ぶん殴って終いなんだけどョ。いまの時代、あの…なんだっけ…コンプライアントだっけか？」

惜しい。それはきっとコンプライアンスのことだ。同時に僕はブライアントという、確か近鉄バファローズに所属していた野球選手を思い出した。

「それだォ。要は聞いている奴がパワモラだと思ったら、パワモラになるんだろ？ そうなんだろ？」

これまた惜しい。パワハラとモラハラが一緒になってしまっている。

どうやらこの男性は、自分の部下が何かをやらかしたので注意したのだ。それを部下がパワモラ………ちがう、パワハラだと言って上司に報告したのだ。
男性は現在、同僚か他の部下に電話で詳細を喋っている最中。仮に上司と喋っているのであれば、もう少し丁寧に敬語を使っているだろう。

これは続きが気になる。

「俺もよォ、そこまで考えてから言ったんだよ、アイツに。別におまえをこき使っているわけじゃない。こうでもしないと仕事が終わらねんだョ。分かるだろ？ 今度時間がある時に、教えてやっからョ」
男性が洟をすする音が聞こえた。

なるほど。どうやら電話をしている男性は親方で、部下は手元だ。手元とは親方に工具類を渡したりする補助的な仕事をさす。つまり部下はまだ新人という事になる。

「そうしたらアイツ、俺を睨みつけやがった。ほいで俺の指示を聞かねーで、勝手に歩いてトイレに行きやがってョ。こりゃあ頭にくるだろ？ あ？」
親方の声が明らかに大きくなった。

僕は申し訳ないけど、親方の電話をアテにビールをぐいぐい飲んでいく。

「10分くらい経ってから戻ってきやがった。そうしたらよォ、あいつ臭うんだョ。そう、タバコ吸ってきやがったんだよ。まだ15時の一服前だぞ。俺？ 俺は吸わねーよ。しかもアイツ、紙タバコだぜ」

不貞腐れた新人が反旗を翻し、仕事中にも関わらずタバコを吸って戻ってきたのだ。
いいね～。青春だね～。
「だからョ。おめえ勝手な事すんじゃねーョ。一人前に仕事ができるようになったらやってもいい。分かったか。分かったな。って言ってもアイツ返事をしねんだョ。だからョ、軽くな、ヘルメットの上からモンキーで叩いたんだョ」

僕は飲んでいたビールを吹き出してしまった。

親方、あなた完全にアウトです！

モンキーとはモンキーレンチのことで、色々なサイズのボルトやナットなどを回すことが出来る工具だ。モンキーは鉄製も多い。ヘルメットの上からでも衝撃はある。

「会社に帰ったら、金城課長から1時間の説教だぞ。これもパワモラじゃねえのか？ ああ？ ほいで今日は朝から始末書を書いてから現場に来たんだォ。仕事が進まねーよ」

親方はそう言ったあとで、大きなため息をついた。

気持ちはわかるけどね、親方。

「アイツ？ アイツは今日から西丸の下についたョ。まあどれだけアイツがもつのか、見物だけどョ。ひっひっひっ」
親方が気味の悪い笑い声を上げた。
どうやら親方は、そこまで反省をしていないようだ。

親方はまだ喋っているけど、僕はのぼせたので露天風呂から出た。

夕飯を頂いた僕は、もう一度露天風呂に入った。

時代に乗り遅れず、自分を守る為にも、変化を受け入れることだ。
そして自分自身も変化を恐れてはいけない。
つまり、アップデートが必要なのだ。

アップデートを拒絶すると、親方のような事態を起こしてしまうのだ。

親方、ありがとう。

それと親方、大変かも知れないけど、あの惜しかった横文字を是非、言えるようになってネ！

【了】

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