トリプルアイズ杯振り返り(桑原)

初めまして、1年の桑原と申します。大学入学して最初の全国大会となったトリプルアイズ杯争奪将棋大会について、対局の内容を中心に自分なりに振り返ってみたいと思います。

ところで、「2023春大会振り返り」で番井先輩が述べておられる「そこそこ戦力になる1年生①」とは私でございます。実力はおそらく1年生②の方が何枚も上手なので、私は覇気とか意外性とか三味線とか、そういう技を磨いていく所存です。冗談です。


初日

9月に入り、群馬県にある実家に帰省してのんべんだらりと過ごしていたため、ひとまず体調は万全の状態で会場入りしました。初日は私には声がかからなかったので、初日フルオーダーだった1年生②=蛯澤君の戦いぶりを見つつ、机と机の間をうろうろしていました。

2戦目の抜け番が決まったと母に伝えると、母から「早起きしたのにね〜」とLINEが来ましたが、団体戦を戦うということのプレッシャーは個人戦の比ではありません。とにかく体力・メンタルを保って、初戦にすべてをぶつけろということなのかなと解釈していました。

5回戦 vs立命館大学 亀山氏

なんとなく、立命館戦か早稲田戦で選出されそうだなと予想していました。東京にせよ立命館にせよ早稲田にせよ、誰と当たってもだいたい格上ではありますが、まさか今期学名覇者とは……。

がっぷり四つの戦いでは勝機がないと見て、阪田流向かい飛車に誘導することにしました。

全局、下=桑原。図は△7七角成まで

とりあえず力戦に持ち込んでなんとかする!というのが、私のスタイルです。

さて、先手有利で迎えた下図。

△6二桂まで


ここで▲6四金としたのが悪手。素直に▲8三歩成と攻め合っていれば優位を保てていたようです。しかしながら、この手薄な自玉の目と鼻の先で、金銀を渡したうえで△5七桂成(不成?)が見えているので非常に指しづらいところ。以下、竜を作られてしまいますが、その後馬を消し、竜も消し、盤面をきれいにしたところで、ようやく優勢を自覚しました。

どうやっても自玉が手薄になってしまう戦型なので、最後までかなり苦労しましたが、なんとか勝つことができました。

8回戦 vs山口大学 財津氏

戦型は雁木調の出だしから陽動振り飛車を選択。
そこまで得意な戦型ではないですが、やはり力戦調の将棋は大好物なので、とにかく序中盤でペースを握って、あとは持ち前の覇気(?)でなんとかしようという算段でした。 6五の位を主張に押さえ込みを狙っていましたが、あまりにも歪な形で、ソフトの評価値ではダメダメなんだろうなと思いながらバシバシ早指ししていました。後で調べてみると意外に競っていたようで、図の時点ではほぼ±0でした。

便宜上先後逆(後手の桑原が下)。△7二飛まで

ここで▲7五銀!
指してすぐに気付き、血の気が引きました。

当然の一手

△7二飛を見て少考していたのは、この△3七角成を考えていたのではなく、ずっと△5五角と出る手が嫌なのではないかと(なぜか)ずっと考えていたのでした。角と銀桂の二枚替え程度なら、普通はまだまだやれそうなものですが、この場合、馬をどれで取っても次の△4五桂が激痛で、もはや押さえ込みが成立しません。いきなり大劣勢になってしまい、恥ずかしくて早く投げたい気分でしたが、大丈夫な振りをして強気にバシバシ指し続ける以外ありません。 以下、ひたすら粘って時間を稼ぐも、いいところ無く投了。

昔からこういうしょうもないミスをよくやらかす者ですが、それを減らしていかないことには我が部のエースに並びかけることは一向にかないません。 チームに救われ、山口大学戦は3−2で勝利。

9回戦 vs静岡大学 林氏

ここを勝てば3位という、超重要な一戦となりました。静大も強者揃い、誰と当たっても苦戦は必至ですが、私はその中でもエースの林氏と戦うことになりました。
先手番の私は右四間飛車を採用。△3三桂を跳ねて右玉にしてきたのは予想外でした。

下が桑原 △3三桂まで


桂を跳ねてしっかり受けられると、右四側も速攻はできないので持久戦になります。のんびりした展開の中で組み換え組み換え、なんとか端の仕掛けに成功しました。

▲1二歩まで

ペースを握ったと思っていましたが、評価値は互角だったようです。 少し進んで下図。

△3二銀まで
右辺がすべて捌けて大満足の展開だが

ここで最善手が▲95歩! 囲いの端から攻めていく見えづらい手ですが、これが厳しかったようです。右玉の急所でもあるので、強い人ならひと目かもしれません。本譜は手拍子で▲4二角成としてしまいチャンスを逃しました。まだ終盤の入り口というところですが、どうやら端に手をつけるにはこれがラストチャンスだったようです。

進んで下図。わかっていたことですが、ここからの猛攻が非常に厳しい。

8筋は相手の玉にも近いので、強気な対応を続けますが

図は△4四歩まで

ここで▲8五歩と突いた手が疑問手。8六に桂を打てる空間を作ってしまいました。ここは▲8五桂が好手で先手優勢でした。玉頭戦はやはり難しい。
以下、二転三転あって下図。

△2一飛まで

もしかするとまずいかも、と思っていた手が現実になりました。受けがわからず大パニック。とりあえず困ったら駒を投入しまくって何とかするタイプなので、秒に追われながら▲3八金と打ってみるも、これがまた大悪手。何を受けているのかさっぱりわかりません。正着は△4五桂をしっかり防ぐ▲4六歩で、これを打てていればまだ先手優勢でした。
自玉は4六まで追いやられますがぎりぎり生きている状況。

▲4六玉まで

ここで△7二銀!

△7二銀まで

林氏曰く「(▲4六玉の時点で)詰めろだと思った」。調べてみると、確かに15手詰です。そもそも相手玉が詰まないと思っていて△4七銀を見て適当に王手ラッシュした後投了しようと思っていた私、大パニック。またしてもチャンスを逃す▲3五歩以下、必死の防戦もむなしく即詰みに討ち取られました。詰みの嗅覚が足りないと感じます。
△7二銀に対しては▲同桂成△同玉に▲4三角がまたしても詰めろ(▲8三銀以下)で先手勝勢。この詰めろまで見えていないと、桂を一枚渡す▲同桂成は指しづらい。

参考図は▲4三角まで

正確に受けきっていれば勝てていた(であろう)だけに、非常に悔しい敗戦でした。


振り返り

チームメンバーの奮戦により、金沢大学は3位入賞となりました。チームメンバーには感謝してもしきれません。一方で私は1勝2敗の負け越しとなり、まだまだ実力不足だと感じました。特に終盤力のなさは三局目をご覧の通りです。ああいった場面できちんとチャンスをものにする力を養っていく必要があります。
次回に1つでも多く勝ち星を残せるよう精進しようと思います。 大会関係者の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。


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