オール学生振り返り

初めて記事を書きます、金沢大学二年の國井大彰です。少し時間が経ってしまいましたが8月26日(土)に行われたオール学生団体戦の振り返りをしたいと思います。余談ですが私はこの大会の前日まで集中講義があり、講義でなぜか頂いたアワビを家でバター醤油焼きにしてから前泊のホテルに向かうことになりました。結果メンバーで一番現地入りが遅くなり、コンディション不良が心配されましたがなんとか朝をそれなりの状態で迎えることができました。まあ中には自転車を200kmほどこいで現地入りされていた先輩もいらっしゃったので…. というわけでなんやかんやでメンバーが揃い、いよいよ金沢大学将棋部の戦いが始まっていくことになりました。今回、私はAチーム所属でしたので、主にAチームの振り返りとなります。
 


一回戦 開成中学校B


 初戦は開成中学校Bがお相手でした。まず、この大会に参加するにあたって、私は警戒するべき学校をある程度予想していました。早稲田大学や立命館大学は当然超強豪ですがそれ以外にも関東には強豪校が多く存在します。関東Aリーグに所属している大学は基本的に強豪です。慶應義塾大学や横浜国立大学など、強豪選手が所属する大学というのはトリプルアイズ杯、王座戦出場校以外にも多く存在し、関東のレベルの高さを実感させられます。また、警戒すべきは大学だけではありません。関東の名門開成高・中、麻布高・中、そして高校選手権団体覇者の横浜高校なども侮れません。このような予想を立てていたので、初戦開成中学校Bは正直嫌な当たりだなと感じました。正直現在の中学生の戦力は全く分からなかったので団体戦の順番は適当にならざるを得ませんでした。というわけで大将席に座った私の将棋を紹介していきたいと思います。

初戦の難所の局面を紹介します。下側が私です。この局面で相手から13香車と端の歩を取られてそのまま一筋に狙いをつけられるのが非常に嫌だと思っていました。13香車に25桂馬と跳ねて一見端攻めが決まりそうですがあっさり24角と逃げられて、13桂成と香車を取りたいところですが、こちら側に76桂のスキがあるため簡単に決断することができません。こう進むなら激戦必至となりそうでしたが、本譜は以下45歩同歩66角同歩76銀となり、相手が角切りから猛攻をかけてきました。しかし、66角同歩と取り返した手がそのまま65の桂馬取りとなり、先手が余せる形となりました。以下はしっかり受けきり勝つことができました。チームも4-1で初戦を勝利で繋げることができました。

二回戦 静岡大学戦


二回戦の相手は超難敵の静岡大学でした。昨年の王座戦では苦杯をなめさせられた相手であり、一年の田口氏が非常に好成績を残していて、今年さらに戦力に強化が入った強豪大学です。さて、オーダータイムが始まったわけですが、初戦の静岡大学のメンバーにオール学生個人戦覇者の林氏がいませんでした。私は林氏がいないと思ってオーダー会議を進めたのですがこれがとんでもない大誤算でした。オール学生団体戦は5人制ではありますが、6人目を補欠として登録でき、メンバーを相手に応じて変更できます。つまり、林氏を初戦出さないまま静岡大学は勝ちあがってきていたのです。こうして組んだオーダーだったので当たりとしてはかなり苦しいものとなりました。私が負ければチームの負けにつながると思って指しました。お相手は静岡県アマ竜王予選でベスト4など好成績を残されている田口氏です。静岡大学将棋部のブログでの読み筋を拝見させていただいた感じ、相当読みが深いと感じていたので、最大限の警戒を持って臨みました。

例によって私が下側です。田口氏の四間飛車、私の右四間飛車で開戦したところです。私が33銀と打ち込んだところですが、この銀の感触が非常に悪く、少し苦戦を意識していました。43飛車と軽くかわされて73飛車の転換を狙われるのが非常に気になりましたが、本譜は同桂同桂成41飛車23角51飛車44歩と進み、抑え込みが狙える形となりました。

以下進んで終盤私が77桂と跳ねたところです。この桂馬跳ねで相手の攻めが難しいのではないかと考えていました。しかし、72香車65桂馬同歩に77銀と埋めたのが大ポカで63桂馬と打たれて飛び上がりました。その後、長手数攻め込まれ、ほぼ逆転されてしまいましたが、オール学生団体戦は切れ負けだったので時間切れ勝ちという幕切れになりました。時間が無くなってからも正確に攻め込んでくる田口氏は本当に強かったとしか言えません。もう一回やって勝てる自信は全くないと言っていいでしょう。チームも3-2でなんとか勝利することができましたが、静岡大学の主力の強さを改めて感じさせられる戦いでした。

三回戦 明治大学A


なんとか鬼門の二回戦を越えて一息つきたいところですが、そんな甘い話はありません。明治大学Aのメンバーを見て大苦戦必至を確信しました。学生選手権個人戦ベスト4の窪田氏を筆頭に、奨励会経験者や学生大会全国大会経験者が大半を占めているメンバーで参戦してきており、強豪揃いのチームでした。窪田氏とこちらの主力が当たるのを避けたかったのですが、F原ー窪田を作られてしまい、苦しいオーダーとなりました。こんなこというとF原から「いや勝負だろ」と怒られそうなのでこれ以上は言及しません。正直勝っても3-2、つまり私はまたしても絶対負けられない戦いとなりました。対戦相手は中村光氏。かつての学生の全国大会で名前を見たことがあった福岡の英傑であり、激戦となると感じていました。

中村氏の石田流に銀冠で対抗して進んだ図です。この局面、次に31角から86歩を見せられているのでこちらは動くしかない場面でした。以下覚悟を決めて36歩を決行し同歩同金37歩同飛車25桂同金37飛車成同桂69飛車と進みました。

この飛車打ちが強烈でめぼしい受けがありません。以下仕方なく67銀と引きましたが、86歩同銀87歩と楔を打ち込まれ大変な形勢となりました。98玉と逃げて事なきを得ようとしますが猛攻は続いて次の図。

ここで34桂と角を攻めて優勢になったと思っていたのですが、待ってましたと言わんばかりに75角と突撃され、同角同歩と進んでみると、52竜には66香車が痛打であることに気づきました。ここで52竜と指しては相手の術中にはまると思い、負ければ敗着になりそうな手ですが、36角と打ちました。結果的にはこれが功を奏し、なんとか逃げ切ることができました。感想戦でも75角は桂馬を打たせての狙い筋だったとおっしゃっていたので、さすが全国県代表経験者だなと感じました。というわけでなんとか私は勝つことができましたが、チームは2-3で敗れました。明治大学には小西氏など他にも強豪がいたので、こちらとしては今後、部として戦力をもっと上げていく必要があると感じました。

四回戦 桐朋高等学校


さて、三回戦で負けてはしまいましたが、チームとしては悪くない戦いぶりであると私は感じていました。四回戦は桐朋高等学校との対戦となりました。正直現在の中学生・高校生の強豪を私はほとんど知らないのでオーダーの組みようがありませんでした。よってまたしても順番は適当です()。この悪癖は今後訂正していきたいですね。今回私の相手は向こうの勝ち頭であった南谷氏でした。相手チームの主力と当たったようだったので警戒していこうと思っていました。 

さて、またしても石田流と対峙する私。まあ実は中学生選手権の全国大会で五局全部石田流引いたこともあるので結構石田流とは因縁深いんですよねえ。困った戦法ですよ全く。というわけで攻める振り飛車こと石田流の猛攻を受けて上の図。64桂馬がうまい手で私の陣は金なし将棋に受け手なしのようにも見えますが、私は受かると確信していました。三手一組です。以下73角61飛車成に67飛車と打ち込んでみると、64の桂馬の上手い処置が石田流側にありません。これでこちら側の受けが決まり、一気に形勢を引き寄せることができました。チームとしても5-0という最高の形で勝つことができました。F原が三回戦で発狂していたので大丈夫かと思っていましたが杞憂に終わりました。

さて、ここまで3-1で優勝の目はありませんでしたが、最後勝って少しでも順位を上げたいと思っていました。この時点で全勝チームは3チーム。うち1チームは3-1のチームと対戦することになっていました。私は冗談で言っていました。「次ワンチャン全勝チーム引くんじゃね(笑)」と。この軽率な発言を私はこの後全力で後悔することになりました。なぜなら……

五回戦 立命館大学B


五回戦の相手は絶対王者立命館大学。その中でも選りすぐりの猛者が集っているのがこのBチーム。朝日アマ名人戦挑戦者となった畑山氏を筆頭に、高校二冠の本田氏、昨年主将の宮越氏など、五人全員が学生将棋をやっているなら知らない人間はいないほどの有名人です。まさか本当にこの最強チームと当たることになるとは思いませんでした。今後軽率な発言をしないと心から誓った瞬間です。言霊怖すぎだろ…..。しかしながら、こちらもただでやられてやるつもりはありませんでした。オーダーである程度の勝率は担保しようと必死に考えた結果、ある程度狙い通りのオーダーを組むことができました。私の相手は宮越氏でした。昨年寝屋川将棋まつりの団体戦で一戦交えて以来の再戦でした。

またしても石田流を相手にすることに。私の対策に対し、宮越氏の対応がうまく、96角成とされた局面はかなり苦戦を意識していました。また、時間も五分差ほどつけられており、時間的にも形勢的にもかなり辛い状況でした。しかし、私はここで千日手含みで74角と打ち、勝負に出ました。千日手ならば指し直しでディスアドバンテージが時間だけになるので妥協、手を変えてくるならば用意の読み筋がありました。本譜は宮越氏が千日手を嫌い、95馬と勝負に出てきました。以下84銀同馬同飛車76飛車で受けづらそうですが、そこで66歩同飛車65角!が用意の受けでここで時間差がついにほとんど無くなりました。以下76銀に78角と打ち込んで激戦となりました。

以下65銀同金68飛車に89の桂馬を取らずにあえて87角成として95角の筋を間接的に防ぐことに成功し、勝負形に持ち込みました。以下も激戦が続き、最後は打ち歩詰めで私の玉が詰まず、勝ちとなりました。しかしながらチームは2-3で敗れました。やはりさすがは立命館大学といったところでした。それでも、優勝した立命館Bチーム相手にこれだけのスコアを残せたのはトリプルアイズ杯に向けていい弾みとなりました。

総合成績として金沢大学Aは3-2で11位でした。目標としては上位入賞だったので少し悔しい結果となりました。しかしながら、各々課題が分かったと思うので、それを改善して、今後に繋げていけたらなと思います。ちなみにBチームも奮戦し、3-2だったようです。来年こそは上位入賞できるように日々精進していきます。最後に、オール学生団体戦を開催するにあたって尽力頂いた関係者の皆様に感謝の言葉を述べまして、オール学生団体戦の振り返りとさせていただきます。対戦していただいた学校の皆さんもありがとうございました。次回はトリプルアイズ編になる…..かな?




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