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セッション

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・んあああああああ~~~~~」

「・・・・・・ふううううううううう~~~~~」

「・・・・・・もんのすご~~いもん、観ちゃったわね」

「・・・・・・うん」

「・・・おかずです!」

「・・・ずーこです!!」

「2人揃って」

「セッションにあたって
フラフラ~~~!」

「いやいや
そこは、映画にブクブク~~!でしょ!!」

「・・・・そうなんだけど」

「・・・・それにしても」

「・・・・もんのすご~~いもん」

「・・・・観ちゃった」

「・・・・あたしのガールフレンドとボーイフレンド」

「ああ、あの映画好きの2人ね??」

「「絶対映画館で観るべき作品よ」って言うからさ」

「うんうん。
いつもはさ、そりゃ映画は映画館で観るのが一番だって、わかっているけれど
あたしたちあれこれ体力的都合や」

「お財布の都合もあるしね」

「貧乏」

「映画貧乏」

「やめてッ!!
ボロは着てても心は錦~~♪」

「そうそう・・・って、古いわね。相変わらず。
まあ、だもんで、ロードムービーとかさ、
よほど入れ込んでいる作品とかじゃないと・・・なんだけど」

「これはマジで
映画館で観ないといけない作品!!!!」

「そうね!!!」

「とにかく
画面の「圧」と「熱」が半端じゃない!!」

「音!」

「音!!」

「それを「体感」するためには
ぜ~~~ったい映画館!だよね」

「ガールフレンドが
「映画館で一回だけ観る映画だと思う」って
言ってたんだけど
まさしく言い得て妙!」

「うんうん!」

「観た人は
彼女の言葉に、深く深く頷くと思う~~」

「・・・ってかこんなの、2回3回は
観られない・・・」

「10回観たわ!な~~んて人は・・・」

「変態!」

「変態よねッ!!」

「あーたより??」

「あたしより??」

「変態ッ!!」

「変態よねッ!!」

「余韻っつうより
なんつうか、もう、ねえ・・・」

「で、今回、若干ネタバレ含むと思うので
まだ鑑賞なさっていらっしゃらない方は・・・」

「そう。このあとのおしゃべりは、耳をふさいでらして」

「あーたの声大きいからー・・・聞こえちゃったらごめんなさいッ!」

「地声と頭が大きいのは、お互いさまッ!!」

「とにかく繰り返しになるけどさ

「音」よ!!

ラスト
ずーっと
ロールの時も 、ドラムロールが流れているじゃん???

ほんっとに
ほんっとに

最後の
最後の
最後の
最後

そのドラムロールが終わった瞬間に

「・・・・はああああああああああああ~~~~~~~」 」

「あーただけじゃなかったわよ。
周りに座ってらした御夫婦も

「はああああああああああああああああああ」

で、何やら
ミュージシャンらしき
でっかい図体の
外国人が来ていたんだけど

「・・・・・疲れた」
って、一言。 」

「そうなの。
疲れたよね~」

「あたしは今まで
ドラムソロは
「はいはい「ドラマー、一人ウットリタイムね」
くらいにしか思ってなかったのよ~~~

石原裕次郎だって
エースのジョーだって
トサカ頭のYOSHIKIだって

うまいのかしらんけど
「へ~~~~~~~
ハイハイ、上手ね、上手上手。
で、いつドラム壊すの~??」
くらいのノリだったのにさああ~~~~~~~~

怖かった~~~~~~~~」

「うんうん」

「あたしラスト15分
画面から発する熱で
ぐいーっと
シートに押さえつけられているような気がしたもの。

マジで
ピクリとも身動きできなかったわ。」

「そうよね。」

「とにかく
この緊張感!

音に精神がのってるのよ!!

いやあ
ほんとに
もんのすごいもの見せられたわ~~」

「あらすじを追っていくと
物語の主人公は、アンディ・ニーマン(マイルズ・テラー)って男子。

彼は一流のジャズミュージシャンを目指していて、
名門音楽校シェイファー・コンサヴァトリーの生徒なの」

「このニーマンを演ずるマイルズ・テラーがさあ
ルックスがね、正直ちょっともさっとしているのよね。」

「最初そのもっさりっぷりからして
この子、ほんとにドラムなんて叩けるの?って思ったもん」

「あたしも思った~~」

「でも、優秀なのよね」

「うんうん。すごいの。」

バディ・リッチに憧れてて、ね」

「そうそう。」

「バディ・リッチってのは、伝説のアメリカのJAZZドラマー。
もんのすごいテクニシャンなのよ~~」

「ニーマンは、はっきり言って、天才なのよ。

だけど当初は完全に「目覚めては」いないの。

名ドラマー、バディリッチに憧れていて練習して、
彼の演奏をある程度「なぞる」ことは、できているのだけれど」

「あたしはそれだけでも、たいしたもんだって思うけどね」

「そりゃそうよ。
あたしたちに、あんだけできるかっつうたら
できるわけないもん。」

「でもさ、その分、この段階でさえ彼ってば自意識もすごくて
自意識無制御状態

「鼻につくよねえ」

「まあ若いってこともあるとは思うけど
それだけじゃない
エゴ!!」

「エゴイスト!!」

「あたしはさあ~~
この映画、なによりも「才能」って非常に形にしにくいもんを
こんなにも的確に見つめて描いたことに驚いたわ」

「うんうん」

「才能ってみんな「賛美」するけどさ
それだけじゃない部分を、ね」

「ニーマンのその自意識の鼻のつき方ってさ
なんか妙にリアル」

「これまたあたしのガールフレンドが言っていたんだけどさ

「日本人ってさ聖人君子みたいな天才が好きじゃん。
天才なのに~~性格も良くて謙虚で~みたいな。
でもさ…あいつら本当は、みんな鬼なんじゃ…」

「うう。そうかも。」

「実際、それを突きつけられる物語展開」

「そうそう。
才能ってさ
ほんとの天才ってさ
過剰で大きく欠けているんじゃないかって、うっすら思ってはいたけど
この映画でどーんとリアルに突きつけられたもんね」

「当初、真の目覚めまでは遠いところにいるニーマン。」

「そう。そして音楽校で
テレンス・フレッチャー(JKシモンズ)に出会う。」

「出会ってしまう!!!!」

「フレッチャーは、有名な鬼教師で、実力者」

「ってかさ、フレッチャーもまた
一種の天才なんだと思うの、あたしは」

「あ~~~~」

「あの、指先ひとつで全員を導いて行く感じ!!!」

「ね~~~ッ!!!!」

「なんだろうか、あの説得力!!!」

「でもさ
物語の終盤近くで
フレッチャーがプレイしているシーンがあるんだけど
それはさ、彼の指導力からみると、全然ピンとこないっつうか・・・」

「うん。
巧いかもしれないけれど
天才レベルじゃないのよね」

「だけど
彼の指導力は・・・・天才なのよ。

あ、あたし言っとくけど
あれを、あの方法論を「いい」とは言ってないわよ」

「うんうん。
全面肯定はできないよね。

でも
素人がうかうか「悪い」とも言えない気がする。」

「そうなのよ!」

「この作品、有名な映画評論家の間で物議を醸したって聞くけど」

「あ、実際プレイヤーでもある大物が
ジャズのアンサンブルっていうのは
ああいうもんじゃないって、批判的に言ったんだってね。」

「そりゃちょっと言いたいって部分あったかもね」

「音楽の「楽しみ」も描いてよ~って、ね。」

「実際問題、今の世の中でフレッチャーのあれやったら
即、退場か訴訟だと思うけど。」

「そこはお話なのかもしれないけど。
でもさ、天才が触媒になる人物を得て、
真の天才に成り上がるって話の側面をみれば
「ある」話だとも思うわ~」

「けどさあ
天才を真に目覚めさせるために、あんな激しい・・・・」

「そう。
もちろん
とても
とても
とても
偏っているとは思うわよ。

思うけれども・・・」

「ある意味
洗脳だし
精神的ハラスメントの連続だし」

「それでも
ニーマンが食いついていくのは、なぜ??」

「自意識を
こてんぱんにへし折られて
憧れのバディのポスターも外して」

「血まみれスティック!!!」

「血まみれスティック!!!!」

「つまりこれは
2人の天才による
才能のガチンコ勝負なのよ」

「教師のフレッチャーはさ
自分がプレイヤーとして天才でないことは自覚しているよね」

「うん。
だからさ、「才能」を持っている生徒に対して
「目覚めた天才」になって欲しいっていう思いも持ちつつ
自分にはない才能に嫉妬する思いもある。」

「だからこそ、才能に「完璧」を求める訳じゃん??」

「そうそう。
半端な才能では満足できない訳よね。
それは自分のためにも、「完全」な目覚めじゃなければならないわけよ」

「生徒とはいえ
才能に対する嫉妬も意地もある訳だから」

「完全なる才能の目覚めを引き出すこと、
望んでいるけど望んではいない・・・
フレッチャーって、すっごく複雑な、相反するものを抱えているよね。」

「けど
けど、
けどさあ~~~~~」

「その指導の天才の指導は
キワキワ」

「追い詰めて
追い詰めて
追い詰めて
追い詰めて」

「で、向こう側に
「落ちてしまう」人間も出てくる」

「・・・・・・」

「ニーマンはさ、何度も落ちそうになりながら」

「なりながら!!!」

「その落ちそうになる瞬間が」

「もう、ね!」

「ね~~!!!」

「けれど」

「そう!」

「真に目覚めるのよ」

「天才が天才として」

「・・・・・」

「・・・・・」

「だけどあたしたち、それ観ていて
「ああ、良かった」とか
「羨ましいわ」とか
そういう甘っちょろい感情は、
持てない。」

「吹き飛ばされるよね」

「うん。

そこに
「救い」とか
「カタルシス」とか
そういう手垢のついた着地はなくて

ただただ・・・」

「・・・・・」

「・・・怖い」

「・・・怖い。」

「あたしのボーイフレンドはさ
この物語
「我欲にまみれたクソ師弟の到達点は
嫉妬とか復讐とか絶望とか飛び越えてイッちゃってる」
って
言っていたんだけど

その通り、イッちゃってます 。」

そして更に
「こんな世界がおらの外で現実に起こっているのなら、太刀打ちできないよ

なんに太刀打ち出来ないのかは判らんけど
ちょっと出来ただけで一端を背負った気になってる連中や自分の
なんと小さいこと・・・」

とも言っていたんだけど
これまた、ほんっとに!!!!」

「あーたが鑑賞後、なかなか立てなかった訳よね」

「あたしなんて素人だけど
これクリエイターのヒト達は
観たらあれこれ、きっついと思うわ~」

「あ、でも
「お話」として置きに行く人も多いんじゃない??
まあ、お話しだから、ねーって。
映画だから、さーって。」

「あたしのガールフレンドとボーイフレンドは
きついって言っていたわよ~。

「天才って天から才能もらった人じゃん?
そんな人が努力したらすげーーー事になるのね。
もはや人間じゃないちゅーか
鬼や!
天才の「向こう側」・・・恐い~~~~~」
だって」

「あーたのガールフレンドが言ってた意味も、わかるよね」

「そしてまた
ボーイフレンドの言葉を、繰り返し、かみしめちゃう」

「ちょっと出来ただけで
一端を背負った気になってる連中や
自分のなんと小さいこと・・・」

「ほんとにさ
世の中
自称天才や、自称才能豊かが溢れているけれど」

「本物は、鬼!!!」

「それは、「業」を背負うってことだもんね」

「うう~~~~」

「うう~~~~~~」

「鬼・・・・」

「鬼・・・・」

「・・今だと、皆さん大好きなほら、フィギュアの、あの方とか、さ」

「よしなさいッ!!!
世の中、月夜ばっかじゃないんだから!!」

J・K・シモンズがさ、オスカーとったのは当然よね」

「圧巻だもの」

「なんというか
キワキワなんだけど、観ていて彼の方法論、彼の存在を
全面否定はできないってところまで私に思わせたってのは、
ある種の彼のエレガントさゆえだと思う」

「エレガント、ねえ」

「うん。
極めると、エレガントなのよ!!

けど
更にすごいのは
監督のデミアン・チャゼル
これ監督した時、あーた!28歳だってよ!!!!」

「・・・・・・・!!!!!」

「なにをか言わんやだわよ。

彼の次回作
楽しみなような
怖いような・・・・」

「ってか、あーた知らないの??
2017年のオスカーで大注目だった
「ラ・ラ・ランド」撮っちゃったじゃない!!」

「彼もまた天才?」

「だから撮れたの??」

「はううううううう~~」

「とにかく名画座でもなんでも
映画館上映チャンスはあるはずだから
チャンス見つけた方は、ぜひ!!!!!!」

「映画館で観て
打ちのめされて!!!!!」

「打ちのめされてッ!!!」

「・・・それにしても」

「なによ」

「巷でこの作品とよく比較されている
ブラックスワン
あたし、あっちは最終的に笑える部分だってあったのにさあ
こっちで打ちのめされちゃったのは、なぜなのかしら~」

「・・・・・」

「エレガント」

「エレガントに、打ちのめされたのね~~!!!」

「やっぱり、自分にないものを突き付けられると・・・」

「お黙りッ!!!」

「エレガント」

「・・・・エレガント・・・・」


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