KINGKONG仲地

焼肉キングコングでの日常を書いておりましたが、2020年に退職。 現在は合同会社キング…

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焼肉キングコングでの日常を書いておりましたが、2020年に退職。 現在は合同会社キングコングで就労移行支援事業をしております。障がい者雇用で感じた事や、統合失調症について書いている事が多いです。つぶやき的コラム。感想等いただけると嬉しいです。

最近の記事

ミャンマー訪問記③

ミャンマー訪問記③ 〜rights-based approach(人権モデル)〜  ミャンマーに行く前も、行ってからも私はrights-based approachについて関心があり、そして実際にそのことばかりを書いている。community mental healthを考える際にどうしても今の医療や福祉は管理にみえてしまう。もちろん自身の日頃の振る舞いについても自戒の念を込めて言っているわけだが、ひどい事業者も最近は本当に多く混沌としている。社会が支援の理念や質を担保で

    • ミャンマー訪問記②

      ミャンマー訪問記② 〜アウンクリニック〜    ミャンマーでは5つの精神科医療機関と3つの非政府組織活動を視察した。そのどれも心に残っているが全てについて書いていては誰も読む人がいなくなる程長くなる。主には私の今回の視察のメインの目的であったアウンクリニックについて書く事にするが、その他についても簡単に触れておきたい。国立の精神科病院は広大な敷地に1600床。コロナ禍を経て800床にサイズダウンしたという事で使われていない病棟もあった。玄関には使用可能な薬剤名称が掲げられてお

      • ミャンマー訪問記①

        ミャンマー訪問記① 〜情勢〜  さて、ミャンマーに行くことになったのだが私がミャンマーに行くことを伝えると誰もが口を揃えて「情勢大丈夫なの?」と言った。もちろん私も報道を見ている限り、クーデターやデモ隊に発砲する国軍の様子、地方の少数部族に対する空爆も含む攻撃等、とても混乱した情勢である事を理解していた。 しかし、私はこういった情勢で社会的抑圧が日常になった環境下で精神障がいを持つ方々がどう暮らしているのか、そしてそこでright-based approachが行われている

        • 【番外④】やっと縫わせてくれたボタン

          以前、「美人ファーマーの飴玉」という文章を書いたことがある。人と接点が多くない統合失調症の男性が珍しく実習生に飴玉をあげたという話だ。本人の意思で一切の服薬を中断しているため日ごろからヒヤヒヤしながら見守っている私と裏腹に、緊張している実習生に対して安心の味がする飴玉をあげた孝雄さん(仮名)。彼はもちろん今も医療を再開などせずに1年と4か月が経過している。生活のリズムが崩れたり、親戚との付き合いのストレス等で調子を崩しやすい年末年始をもろともせずに、年明けも穏やかに事業所に通

        ミャンマー訪問記③

          【番外③】美人ファーマーの飴玉

             ある日、就労支援事業の活動を終えベンチで私がぼーっとしていると「おいしいけど食べるねー?」と向かいに座っていた孝雄さん(仮名)が私の隣に立っていた実習生に声をかけた。孝雄さんはその言葉を発しながらもポケットをゴソゴソしており、何が出てくるかまだ分からない状況に実習生は戸惑い、マンガのような返答で「あああああ、ええええええええ・・・・」と声を出している。誰が見ても分かる戸惑い様である。私はめったに他の人に話しかけない孝雄さんが実習生に何をあげようとしているのか非常に興味

          【番外③】美人ファーマーの飴玉

          【番外②】星座を紡ぐ分裂病のチカラ

           最近星を見ていないと思い、子ども達を連れて夜の海に行った。満点の星空が広がっていて、流れ星も見えた。一応「綺麗だねー」と言ってはみたが、本心は少し怖かった。子ども達の手前なぜかありきたりな言葉を選んでしまった。しばらく浜辺に寝そべって星空を眺めていて、頭に浮かんできた疑問がある。規則性なく無数に点在している星々を昔の人はどうやって結び、星座を作ったのだろうか。まったく何の形にも見えない星空にどんな物語を重ね合わせていたのだろうか。むしろ、今私が感じているように昔の人も怖かっ

          【番外②】星座を紡ぐ分裂病のチカラ

          【番外①】カレーライスと分裂病

          1、はじめに  年末も差し迫った時期に携帯電話が鳴った、何年か前に沖縄で統合失調症臨床研究会を開催した時に電話番号を交換してそれっきりであった日本評論社の編集者からだ。私に統合失調症治療における作業療法について「統合失調症のひろば」に原稿を書けという用件であった。ひろばは私が敬愛してやまない横田Dr(オリブ山病院副院長)が編集員として参画している雑誌である為に、この上ない話であったが、なんせこの領域に勤めて十余年作業療法を意識した事が皆無に等しい私に、そのテーマは重すぎた。

          【番外①】カレーライスと分裂病

          11,Bな私と、BIなキングコング

          11、Bな私と、BIなキングコング 私は、自分がつくづく不器用であると思う。人と会話をしていてもなぜかよく「聞いていないでしょ」とか「興味ないでしょ」と言われる。真面目に話を聞いているつもりなのだが目が泳いでいるし、「ふーん」とか「あはは」とか乾いた返答をしているらしい。更に話題が乏しく緊張が高くぎこちない、つまりコミュニケーションが下手なのだ。次の話題を考えながら話すので、今の話題に集中する事ができず、記憶にも残りにくい。そのせいでよく用事を忘れてしまう。例え覚えていたと

          11,Bな私と、BIなキングコング

          10,A型やめようか

          10、A型やめようか。 2012年から始めたキングコングの障がい者雇用プロジェクトをこれまで綺麗なストーリーで綴ってきたが、今振り返ってみるとリアルは実に泥臭く、そして衝突の連続であった。今回はその衝突についてできるだけ包み隠さず書いてみたい。別にうまくいかなかった愚痴をこぼしたい訳ではない。これから披露するエピソードは全てが今のキングコングに必要なプロセスであったと考えている。異文化の混ざる地点で起きる摩擦や歪みはあって当然で、これをどう解消していくかという事に私は関心が

          10,A型やめようか

          9,ワクワク経営戦略勉強会

          9、経営戦略ワクワク勉強会 キングコングはB(不器用だけど)I(一生懸命)な人達の集まりだ。忘れっぽかったり、怒りっぽかったり、悩みやすかったり、期待に応え過ぎたりと不器用なんだけど、仕事に関してはやる気に溢れている。キングコング愛に溢れている。前回紹介したしずくさんはキングコングの社員になるのが最初の夢だった。前々回紹介したエイ君は、「自分の記録より店舗の記録」と言った。その前に紹介したやっさんは体調を崩しかけたが、ナムルは俺が作ると職場復帰した。他にも飲酒運転で免許取り

          9,ワクワク経営戦略勉強会

          8、ずっと一緒に働きたい しずくさん

          8、ずっと一緒に働きたい しずくさん 2019年1月、嵐の活動休止という衝撃的なニュースが日本を揺るがした。そしてここキングコングにもその衝撃を受けている人がいる。しずくさん(本人の希望仮名)は嵐のファンなのだ。その日、出勤したしずくさんは口数が少なかった。このニュースに触れると、「そうなんです、残念です」と硬い笑いを浮かべ身体をねじった。一緒に東京のジャニーズショップへ行った時の話をしながら少し気分を盛り上げた。 そうあれは、2015年の春だった。私と店長としずくさんは

          8、ずっと一緒に働きたい しずくさん

          7、洗い場のエイ君

          7、洗い場のエイ君 キティちゃんTシャツにキティちゃんパーカーを着て、青いナイキのニット帽をかぶり今日もエイ君は朝早くに出勤してきた。事務所に入ると、キティちゃんのサンダルに履き替えて「重要書類が来てますよ」と言ってポストの中身を毎日私に渡してくれる。私の服装を見てスーツの日は「出張っすか?」、作業着の日は「今日は草刈りですか」とあまり関心がなさそうに、でも必ず聞いてくる。そしてユニフォームに着替えながらため息をつく。エイ君どうしたの?と聞くと「いえ、今日も負けられない戦い

          7、洗い場のエイ君

          6、やっさんのナムル

          6、やっさんのナムル キングコングで働いている従業員は全員不器用だけど一生懸命だ。一生懸命だけど不器用なので、問題は起きる。だが、キングコングでは問題が起きないことを目指してはいない。いつも起こる問題をその都度その都度話し合い、みんなで解決しながら7年が経過している。この不器用だけど一生懸命な姿勢をキングコングではBI精神と呼んでいる。 今回紹介するやっさんはBI精神に溢れた、とても魅力的な従業員である。 それでは、やっさんと働いてきた日々にご案内しよう。 やっさんは

          6、やっさんのナムル

          5、寿司職人になった郷君のはなし

          5.寿司職人になった郷君 キングコングで働いているBIメンバーは皆、とても個性的で人間としてとても魅力的だ。私は、ちゃんと人間な彼らが大好きである。毎日いろんな出来事が起こるが、そこがまた面白みであり、関わるみんながアドベンチャーだ。 今回は、郷君をみなさんに紹介したい。自閉症で、こだわりが強く、コミュニケーションの障害があり、触覚の過敏さを持つ郷君。彼が一人前の調理人になるまでのプロセスにおいて、従業員全員が知恵を出し、多くの試行錯誤を行った。 それでは郷君と過ごした

          5、寿司職人になった郷君のはなし

          4,不器用だけど一生懸命なBIメンバー

          4.不器用だけど一生懸命な人達、BIメンバー こうしてキングコングの障害者雇用が始まった。一人、また一人と就職者が入って来た。健常の従業員と障害のある従業員が2人1組でペアを組み、協力しながら業務を進める。お互いの良かったところをミーティングで言語化することも繰り返し行っていった。大小様々な、トラブルとも言える出来事が次々と起こったが、それを上回るエネルギーがキングコングには沸き始めていた。なんとなく店全体が新しいことをしている感じでうっすらとワクワク感に包まれてきていた。

          4,不器用だけど一生懸命なBIメンバー

          3、キングコングの蠢き(うごめき)

          3.キングコングの蠢き(うごめき) こうして障害者雇用をしよう、と決まったはいいが、何のノウハウもないまま障害者雇用ができるはずもない。そこで白羽の矢を立てられたのが私である。 社長と幼馴染であった私は、当時、精神科の病院で作業療法士というリハビリの仕事をしていた。就労支援として、働きたいと希望する患者さんの支援も年に数件は行っていた。「飲食業でアルバイトしたことがあるから、また飲食業で仕事をしたい」と希望する患者さんがいた時には社長に頼みに行ったこともある。その時には彼

          3、キングコングの蠢き(うごめき)