不自由なふたり。



彼は鴨居に取りつけた鉤に紐を垂らし首を吊っていた。彼女は台所の隅で四角い卵焼きを焼いていた。 


鴨居からだらしなく垂れる首と紐の相性が良くないせいで、彼はいつも死ねずにいる。

四角い卵焼き器は、いつも燻っているおかげで彼女の焼く卵焼きは黒焦げてしまう。



彼は彼女のために死にたいし、彼女は彼のために卵焼きを焼きたい。

彼らは愛されている。