大根役者
床の隅、放置にあるそれの確固たるや如何に。
「叙情って、どういう意味ですか」彼れが問う。
叙事とは別というもの。しかし、そうともいえない。それが反映されたものが事実であるなら、叙事も叙情。
彼れを手に、とわたしはそれを鍵指差した。そして、
それが叙情か叙事かを判断するのは、指差した指だと云った。
「ますます、わかりません」
そう云いながらに噴いている、
それがまさに叙情だろうと、わたしは彼れに云う。
ぶつくさと噴きながら、彼れを手にする。
そこへ鏡を手渡してやると、それは顕に、
わたしは彼れに
それの役割は、と尋ねた。すると、阿呆の蓋が外れたような表情をつくりながら
「湯を沸かすことでしょう」と答える。
きみは大根役者だね。
叙情を述べるにつまなく、
湯を沸かすにある形状、それの概観になく。ましてや心情になく、それと疑念を持たせ、しかし思わせることもなく、隠しもしない。