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2023 JLPGAツアー【総括】

 3月に開幕した2023年シーズンも、例年通り11月の宮崎「リコーカップ」で閉幕となった。
 今年もバラエティ豊かな見応えのある1年だったと思う。

 開幕戦の申ジエの優勝から始まり、穴井詩、菊地絵理香らベテラン選手たちの活躍、山下美夢有と岩井姉妹による優勝争いの日常に慣れてきたころ、櫻井心那が躍動をし始めて、ルーキー神谷そらを始め山内日菜子ら初優勝を飾る選手もたくさん生まれた。

 その櫻井や神谷の登場により、今シーズンは「飛距離」について今まで以上に語られたように思う。

 11月に大王製紙エリエールで今季2勝目をあげた青木瀬令奈が会見でこんなことを言っていた。

飛ばないプレーヤーたちにも勇気を与える存在になりたい

 “飛ばないプレーヤー”とはこの青木を含め、パー5において3打目の精度で勝負をする選手のことを言い、また、“飛ばすプレーヤー”とは2オンしてイーグルパットを打てる選手、やや乱暴だがこのように定義する。当然だがこれら“飛ばない”と“飛ばす”が、同じコースで優勝争いをしている。

 8月のニトリレディスで優勝した菊地絵理香も“飛ばない”選手である。今季一番の名勝負と言われる10月の日本女子オープン最終日の5番、同組の“飛ばす”原英莉花が目の前で2オンからイーグルを奪った。バーディをとったにも関わらず菊地がここで1打離されるのだ。結果は原が5月の腰の手術から見事なカムバックを果たすことになった。

 同じく“飛ばす”岩井姉妹神谷そらら、イーグルパットを打てる面々は、最終ホール(パー5が前提だが)にきて首位と2打差なら、自力でプレーオフにもっていける。一方、菊地や青木にとっての2打差は相手のミスを待たねばならないことになるのだ。

 もちろん“飛ばす”のは持って生まれたチカラだけではなく、さまざまな努力の上で成り立っているのは間違いないので、「ズルい」などというつもりはまったくない。また当たり前のことだが、遠くに飛ばせば良いというものでもない。

 それでも青木がわざわざそのような事を口にするのは、「2オン・イーグル」って、“飛ばない”選手にとっては、勇気を失ってしまうほどに、こちらが思う以上にインパクトが大きいのかもしれない。

 それだけでなく、コースを華やかに彩る“飛ばす”選手たちのビッグショットで、会場はたいへん盛り上がる。たとえ曲がったとしてもそのチャレンジに大きな拍手が湧き起こるのだ。そのざわめきが収まりきっていない中で、次にレイアップとかしなければならない“飛ばない”選手たち。

 プロは結果がすべてとはいえ、これには少々同情してしまう。

 と、ここまでは”同情すべき”飛ばない選手と”力を見せつける”飛ばす選手、というスタンスで書いてみたが、飛ばす選手の言い分はきっと、こうだ。

 「飛ばしても、勝てないんです

 そう、このように明らかに有利(だと思われる)ロングヒッターたちが、年間女王を獲得したか。

 答えは否、だ。

 今年ドライビングディスタンス(DS)1位の神谷そらは260.82y、2年連続で女王に戴冠した山下美夢有は230yそこそこだ。山下はティーショットでは神谷に20m近く置いていかれる計算になる。
 しかし自身の飛距離の無さをカバーして余りあるそれ以外の精度の高さが、結果として飛ばす選手たちを凌駕したのだ。

 一見、ビッグドライブをする選手が先を走るように見えるが、高精度なマネジメントを積み上げる選手たちが追い上げて、勝ち負けになってゆく。どちらが有利かという視点はあまり重要ではないのかもしれない。それぞれ持つ武器が違う選手たちがぶつかり合うから、ドラマの結末は何百、何千通りにも広がっていくのだ。観ている者の予測や願望などは常に裏切られる可能性をはらんでいる。だから見ていて面白い。
 
 さて、今季それらすべての選手たちの頂点に立った山下美夢有。来季は海外メジャーには挑戦するが、レギュラーは国内であることを名言している。もちろん目標は3年連続年間女王であろう。

 「山下はもう、日本でやり残したことはないのでは?

 来季も今季と同じように、結局山下がその強さを見せつけるのだろうか。

 いや2024年こそはあの双子姉妹を筆頭に、あの飛ばし屋とかパットの名手とかアプローチの神様、pumaのウェアが似合いすぎる姫、フィニッシュはパターよりウェッジで打ちたいアイドルなどが、山下の3年連続にきっと待ったをかけるはず。

 「いやいや、でも終わってみれば2024年も、山下かな」

 まずはこんな来季のエンディングを予想して、来たる3月の沖縄へ思いを馳せることにしよう。

 しばらくJLPGAツアーのない週末が続く。
 なあに、3ヶ月なんてあっという間だ。

 

カッコいい絵理香選手。3月の明治安田生命だったかな


 

2023.12.11.12:59


追記:やっと終わったー。週中にプレビュー、週末に結果を、後半戦からは各日バラバラに、時には絵理香選手応援コラムを、書いて書いて書きまくった1シーズンだった。とりあえずおつかれ私。


追記2:何度の加筆・修正を重ねただろう。もちろんこれが最終稿であるはずもなく、今月いっぱいくらいまで修正は続く。
……終わってねえじゃん私!


追記3:飛ばす選手の言い分が決まらない。ここじゃないのかも。

……終わんねえじゃん私!

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