【非公式】2020年期補習所考査「固定資産」解答例

注意事項

・内容の正確性について
 本ノートの内容が正確であることについて、筆者は最善の努力を尽くしますが、必ずしも正確であることを保証することはできません。
 また、本ノートの内容が不正確であったために利用者が何らかの不利益を被った場合、筆者は責任を負いかねますので、各自の責任でご利用ください。
・本ノートの著作権について
 本ノートについて著作権者の許可として私の許可が必要な利用を行う場合、以下の条件を全て満たす限り、私の許可があったものとみなします。(ここで言う利用には、編集および再頒布を含みます。なお、引用その他の著作権者の許可を必要としない利用については、以下の条件に拘らず当然に可能です。)
1. (コピーレフト)
 二次著作物について、本ノートと同等の条件を満たす利用の場合、著作権者の許可があったとみなすこと。
2. (無償提供)
 二次著作物を他者に提供する場合は、無償で行うこと。
3. (不適切な編集の禁止)
 著しく不適切な編集等を行わないこと。当該編集には、明らかに誤った内容への編集や利用者に不利益を与えることを目的とした編集を含みます。
4. (盗作の禁止)
 二次著作物の提供に際して、原著作者が自身であるかのような表現を行わないこと。
5. (法令等の順守)
 原著作物が規制の対象となる各種法令や契約等について、二次著作物の提供に際しても当該法令・規則等を順守すること。これには、原著作物中の適法な引用について、二次著作物についても同様に適法な引用を行うことを含みます。

参照したリソース

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企業会計基準適用指針第 6 号 「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20190704_19_20220701.pdf

監査・保証実務委員会実務指針第 81 号 「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」
https://jicpa.or.jp/specialized_field/81_3.html

企業会計基準適用指針第 16 号 「リース取引に関する会計基準の適用指針」
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/shihanki-s_9.pdf

監査委員会研究報告第 11 号 「監査マニュアル作成ガイド 「財務諸表項目の監査手続編」(中間報告」
https://jicpa.or.jp/specialized_field/_11.html

企業会計基準第 20 号 「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20190704_13.pdf

企業会計審議会「研究開発費等に係る会計基準
の設定に関する意見書」
https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a909e1.htm

EY新日本有限責任監査法人(2020)「外食産業における不正の傾向と対策」
https://www.ey.com/ja_jp/library/info-sensor/2020/info-sensor-2020-12-04

企業会計基準第 18 号 「資産除去債務に関する会計基準」
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/aro.pdf


会計問1

解答例
1:×|会計上、固定資産の計上に金額基準は存在しない。
2:×|休止固定資産であっても時の経過による減価を反映するため減価償却を行う。
3:×|企業の状況に照らし、耐用年数又は残存価額に不合理と認められる事情のない限り、当面、監査上妥当なものとして取り扱うことができる。
4:〇
5:×|土地のリース取引がオペレーティング・リースであると推定されるのは、所有権移転条項および割安購入選択権がない場合に限られる。
6:×|実査により遊休資産の有無を確かめるなど、評価の妥当性についても監査証拠を得られうる。
7:×|販売目的のソフトウェアは研究開発等に係る会計基準の適用を受けるから、減損会計基準の適用から除外されている。
8:×|賃貸等不動産には将来の使用が見込まれていない遊休不動産が含まれる。

根拠
1
そもそも固定資産に関して全般的な会計基準は存在しない。
2
休止固定資産(遊休資産)について、減損適用指針56項により減価償却が求められる。
3
監査実務指針81号24項による。
4
減損会計適用指針52項5号による。
5
リース会計適用指針19項による。
6
監査マニュアル11.4600.16について、具体的な監査手続として実査がありうることを鑑みて指摘する。
7
減損会計適用指針6項3号による。
8
賃貸等不動産会計基準5項による。

会計問2-1

解答例
研究開発費は、発生時には将来の収益を獲得できるか否か不明であり、また、研究開発計画が進行し、将来の収益の獲得期待が高まったとしても、依然としてその獲得が確実であるとはいえない。さらに、実務上客観的に判断可能な資産計上要件を規定することは困難であり、抽象的な要件のもとで資産計上を求めることとした場合、企業間の比較可能性が損なわれるおそれがあると考えられる。そのため、研究開発費を資産として貸借対照表に計上することは適当でない。 

根拠
意見書3項2号を要約する。

会計問2-2

答え
①オ|実行可能性 ②ク|意思
③ウ|能力    ④ア|経済的便益
⑤エ|利用可能性 ⑥カ|支出

根拠
IAS38号57項による。

監査問1

解答例
(不正に減損を回避する手段)
・経費等を業績の悪い店舗から良い店舗に付け替える
・本社費等の間接費について、配賦基準を操作し業績の悪い店舗への配賦額を過少にする
(それに対応する監査手続)
・経費等につき適切な店舗で計上されているか、証憑突合や趨勢分析等により検証する
・本社費等の間接費について、配賦基準が経済的実態を適切に反映しているか検討する

根拠
不正に減損を回避する手段については、EY新日本(2020)を参照した。
対応する監査手続については、記述した手段に適切に対応していれば具体的な監査手続の内容によらず正解になると考えられるから、手続の対象を明示して記述すれば十分であると思われる。

監査問2-1

答え
1,3600,000千円

根拠
 監査実務指針81号15~16項によれば、耐用年数の変更は(合理的な見積りによる限り)会計上の見積りの変更に該当し、その影響は将来にわたって認識する。以下では本問の場合について考える。
 物流基地(取得価額3,000,000千円、耐用年数30年)について、2020年3月31日時点では残存耐用年数17年、簿価1,700,000千円である。
 ここで残存耐用年数を5年に変更するから、2021年3月31日時点では残存耐用年数4年、簿価1,360,000千円となる。

監査問2-2

解答例
 耐用年数の変更について、過去に定めた耐用年数が、これを定めた時点での合理的な見積りに基づくものであり、それ以降の変更も合理的な見積りによるものであれば、当該変更は過去の誤謬の訂正には該当せず、会計上の見積りの変更に該当する。
 本件においては、新規の物流基地の解説に伴い既存の物流基地を閉鎖するいう事情があり、これに伴う合理的な見積りの変更であると考えられるから、会計上の見積りの変更として認められる。

根拠
 前段は監査実務指針81号15項による。後段は、問題文中にある変更理由が妥当である旨を当てはめて解答すればよい。

監査問2-3

答え
使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合

根拠
減損会計適用指針の目次では、以下の6種類を減損の兆候として例示している。本問の状況では、新規設備投資の影響による閉鎖決定が要因であるから、13項が最も適切である。
12項 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合
13項 使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合
14項 経営環境の著しい悪化の場合
15項 市場価格の著しい下落の場合
16項 共用資産の減損の兆候
17項 のれんの減損の兆候

監査問2-4

解答例
理由
 当該物流基地は、契約上、借地契約の期間満了時にA社の負担で解体することが定められているため、当該解体義務に対応して資産除去債務を計上する必要がある。
金額
 200,000千円

根拠
理由については、資産除去債務会計基準3項1号を本問の資料2の契約条件に当てはめればよい。
金額については、資産除去債務会計基準6項より解体費用の見積額の割引価値となるが、割引率がゼロのため解体費用の見積額200,000千円をそのまま計上する。

 「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。

資産除去債務会計基準3項1号

監査問2-5

解答例
 資産除去債務の計上を行えば、除去費用は除去時までの各期に配分されて費用化され、除去時までは資産除去債務が負債計上されることになる。しかしながら、資産除去債務を計上しないとすれば、除去費用は除去時または資産除去債務計上開始時以降に費用化され、資産除去債務は負債計上されない。したがって、除去費用の費用化が遅延され、債務額が少なくなるという影響を財務諸表に与える。
 そのため監査上では、資産除去債務の計上を要さないとする主張については、費用の先送りおよび債務の過少計上を企図したものである可能性に留意して、十分な検討が必要である。本問の状況であれば、現時点においても契約で解体が義務付けられており、解体費用の見積額も算定されていることから、指導的機能を発揮して資産除去債務の計上が必要である旨を指導すべきであろう。

根拠
 前段は資産除去債務会計基準6~7項に規定された会計処理について、その適用有無による差異を対比して記述すればよい。
 後段は、前段を踏まえて留意点を指摘し、本問の状況を当てはめて解答すれば足りると考える。