役に立ったCFA:Level 3の個人資産運用(Private Wealth)

【おことわり】事業会社に居る私が長きにわたるCFAの学習を通じて役に立った内容を備忘録的にメモしていく記事です。CFA受験者の多くが金融業界の中の方と思われますが、非金融で投資業務に携わる方の参考になればと思い学習当時の自分の纏めノートを再編して公開するものです。間違いもあるかもしれませんので、念のため、ChatGPTでFact Checkしていますが、悪しからずご了承ください。


Private Wealthは自分ごとなので案外楽しい

Level 1からLevel 3のAlternativeくらいまでは個別の科目を学びますが、それらが統合的に扱われるのがPortfolio Managementです。その中でPrivate Wealthは、当初関心がわかなかったのですが、2度目の受験勉強でテキストを真面目に読み始めたらこれは面白いなと感じた科目でした。

なんというか、世の中の識者やFP、成功した投資家などが主張していそうなTipsや考え方が正確かつ網羅的に纏まっているという感じでしょうか。学習や仕事が一段落したら、自分自身の計画も作ろう、そう思うきっかけになりましたし、実際、自分自身のポートフォリオ運用のヒントになっていたり、事業会社オーナーとの対話など仕事でも役に立ったりと、予想外の成果が得られた科目です。

以下、役に立ったことをメモから抜粋します。

役にたったこと(L3のカリキュラムから)

個人IPSの目的は自分ごととして理解

  • 科目の勉強として個人のIPS(Investment Policy Statement)の要諦を学びましたが、これは実際の自分の人生にとって考慮しておくべき重要な事柄になっている事がわかり、ハッとしました。私がメモした個人IPSの作成において重要になる、投資目的の整理・明確化における主な論点は次の通りです。これらを踏まえてWelath PlanningやEstate Planningを検討する必要があります。

    • 今の生活水準を向上させたいのか

    • 生活水準を今後維持していくことは可能なのか

    • 子供の教育費は確保できているのか

    • 住居を変更する予定があるのか

    • キャリアのステージは?

    • 保険の状況は?

    • 老後の設計はあるのか?

    • 相続や寄付などのゴールはあるのか?

    • 資産運用においてSignificanceな負債や制約はあるのか?

    • 老後の優先度はあるか(WILL NEED、MAY NEED、NEVER NEED)

  • これらってまさに、自分自身が考えないといけないこと、ですよね。子供の教育や住居費、現役・退職後の生活費といった大型の資金需要をベースに、退職するまでどの程度まで生活水準を向上させたいのか。つまり、生活費を増やす程度を決める。また、自分のキャリアステージを踏まえて今後所得はどの様に推移するのか(どの様なキャリアを形成して所得をいくら獲得していくか)、どの様な老後生活を設定するのか、余暇やレジャーへの出費をどうするのか、死後にお金を残したいのか(税金・コントロール・家族を踏まえてストラテジックに)。。。お金持ちでは無くとも、常に問いかけて、用意しておきたいポイントだと思いました。

Private ClientはPortfolio全体でリスクを見る

  • 個人ベースでポートフォリオを考える時、忘れてはならないのは、人生全体のRisk/Returnを考慮する事だと学びました。これには、なるほどなと頷きました。

  • 例えば、クライアントはどんなアセットクラスに配分しているのかと考えるのは当然ですが、主なアセットはどの国にあるのか、地理的な観点から分散出来ているかも考慮する必要がありますよね。更には、クライアント本人をアセットと見立て、本人の稼ぎ方はエクイティ的なのかFixed Income的なのかHuman Capitalを考慮する事を学習します。

    • ここでは、人生におけるアセットを、Human Capital (HC)、Financial Capital (FC)、不動産、年金の4つに整理。HCのValueは期待値が高い若い頃が最大ですが、FCと年金は退職時が最大で、(生前贈与や事前に処分していない限り)一般的には不動産は死亡時に最大となります。このあたり、テキストや練習問題では結構計算も含めて勉強するエリアです。

  • こういった学習を通じて、例えば、アメリカのシクリカルとされる会社に勤める人なら、サイクルにインカム(給与)が影響される可能性が高い点を踏まえて、アメリカで株式投資をする場合は、自らが働く会社とは違うディフェンシブな株の方が適している、という事を学びました。

アメリカの色々な制度や法律

  • アメリカで働いている為、こちらの様々な税金の制度等をCFA学習を通じて触れる事ができたのは、とてもラッキーでした。同僚の話で蚊帳の外だった話題でも結構ついていける様になりました。Private ClientのPortfolio Managerからすると当然の様な事も、私には新鮮で、知っていて損はない、まさにそんな感じでした。

    • Forced Hership:これは強制的な相続の事を指しています。最初、なんのこっちゃと思いましたが、実は日本はそうですが、アメリカはForced Hershipではありません。基本的にCivil Lawの国で多い制度で、民法などで故人の資産の相続者が規定されている事を指しています。相続なんてそんなもんだろうと思っていた私には衝撃でしたが、Common Lawの国アメリカでは基本的に相続は遺言によるものでした。故に、CFAでもEstate Planningは重要なトピックスです。

    • Probate:プロベート、ネット辞書だと検認と出てきますが、これが正しく米国で遺言を確認・認定する裁判所を介したプロセスです。たまにプロベートを請負いますというAttorneyのチラシがポストに入って来たりますが、まったく縁のない世界だったので、CFA Level 3に行かなければずっと知らない単語だったと思います。

    • Step-up:米国の相続では、遺言で明記されProbateで確認された相続人に遺産が渡りますが、(大きな控除がありますが)相続税があります。この際、例えば不動産や金融資産なら日本では含み益も課税対象となると聞きますが、米国では相続したときに資産をFair Market Valueで計上(Step-Up)しTax Baseとするため含み益への課税は有りません。日本とは全然違いますね。

    • Trust:信託の事です。私自身がお金持ちではないので縁遠いだけかもしれませんが、個人でTrustを作るという発想は無かったので新鮮でした。私がCFAの学習をせずにPrivate Clientの支援をしたら、まったくもって役に立たなかったと思われます。。。

    • 全世界課税:Private Clientに対してはパスポートを確認したりして、主な所在と収入源を確認し、課税状況を明らかにする必要があると学習しました。これはまさしく自分ごとでした。私自身、日米でしっかりと納税していますが、私がClientであれば、どこで利益を確定させるかというのは税率や課税所得、為替なども絡み、重要なポイントでした。

おわりに

Private WealthはCFAとして個人のClientに対してポートフォリオの構築や市資産運用のアドバイスをする際に必要な情報が網羅されています。故に学習量も多く大変な科目だと思いますが、実際に自分の役に立つ情報が多くて驚きました。また、テキストを読む事の効果をもっとも感じた科目だったかもしれません。これから学習される方には、私の様に先ず問題に(無謀にも)飛びつくのではなく、しっかりと理解しながらテキストを読まれる事をお勧めいたします。

自分の為に書いたメモですが、お役に立てれば幸いです。

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