役に立ったCFA:Level 3のBehavioral Finance

【おことわり】事業会社に居る私が長きにわたるCFAの学習を通じて役に立った内容を備忘録的にメモしていく記事です。CFA受験者の多くが金融業界の中の方と思われますが、非金融で投資業務に携わる方の参考になればと思い学習当時の自分の纏めノートを再編して公開するものです。間違いもあるかもしれませんので、念のため、ChatGPTでFact Checkしていますが、悪しからずご了承ください。


ポンピアンでこっそり分類してニヤニヤ

経済学に少しでも触れたことがある方は、神の見えざる手とか合理的期待形成とかを聞いた事あると思います。新古典派をベースとした伝統的ファイナンスを取扱うCFAでも、Eugene Famaの効率的市場仮説に基づきWeakからStrongまで市場のタイプを確認し、どの様なアプローチが好ましいか学びます。根底にあるのは、市場は効率的である、という前提です。

一方、実態としては市場は時に非効率にも見える予測不可能な動きをする事もあり、MacroではMarket Anomaliesと呼ばれる現象が多数存在します。これらの背景には、個人は必ずしも効率的ではなく(REM: Rational Economic Manではない)、様々なバイアスに基づき非合理的な判断をするというdescriptiveな考え方があります。これらをFinancial Advisor或いはAnalysitの立場で学ぶのがLevel 3のBehavioral Financeです(行動経済学の中の行動ファイナンス)。

CFAではMarket Anomaliesも扱いましたが、集合としてはトレンドを踏まえてある程度統計的に予想が立つけれど、個人の行動は予想できないと私は考えています。属性や置かれた環境等から相対するグループの考えを事前に想定しても、そのグループの個々人が実際にどう言動するかは全く想定外という事が良くあるからです。感情的な反応をされたり、話がずっと噛み合わなかったり、全く反応してくれなかったり。。。そういった様々な想定外の個人の言動に関するエッセンスが詰まっているのが、このBehavioralだなぁと思いました。

カリキュラムとしては、Biasに関する暗記量が多く、問題を解くためには、各バイアスの特徴を発現の仕方や解決方法も含めてみっちり覚える必要があるので結構大変でした。それでも、実際の世界の人びとの考えや行動に関する”あるある”みたいな話を体系的に整理したものという感じで、面白みはあります。

たぶん、数あるバイアスを完全に習得し、トーク術とか処世術として使いこなせれば、実生活でも結構役に立つのではないでしょうか。ちなみに私は、会社の同僚を心の中でBITやPompianで分類してニヤニヤするくらいしか活用できていません。。

役にたったこと(L3のカリキュラムから)

人生経験が人々の投資スタイルに影響する

  • Barnwellの投資家2分類には強い説得力を感じました。2分類とは、自分がFinancial Advisorの立場を想定したとき、ClientをおおまかにPassiveタイプとActiveタイプに2分類する考え方の事です。Passiveに分類されるのは、他人資本で財を成したタイプの人でビジネスマンや専門家が該当します。比較的安全に運用したいと考える傾向が高い事から文字通りPassiveと分類されます。一方、Activeに分類されるのは自分資本で財を成した人で例えばスポーツマンや芸能人、起業家などです。比較的積極的な運用を好む傾向にあるそうです。

  • 私は会社勤めなのでPassiveタイプに分類される側の人間だと思いますが、結構Risk Toleranceは高い方だと分析しています。自分の力で頑張ってきたから、そういう発想になるのか、やっぱりなーと一瞬だけ思いましたが、単純に未だ財を成していないからだと気が付き悲しくなりました。

  • ただ、成功やキャリアの原資が他人資本なのか自分資本なのかという視点は非常に説得力があると思いました。Comapny Manやサラリーマンに安定志向が多いのは、正しくその例ですし、散財してアップダウンのある人生を送るセレブなんかも該当している様に思います。

バイアスは、どう対処するかが大事

  • 様々なバイアスを勉強しますが、大事なのはなぜ発現してしまうか、そしてどう対処するのかです。これは即ち、自分がManagerならどうポートフォリオを正しく調整するか、Advisorならどうclientに助言するかという事です。

  • この対処に関して思い出深いのはHindsightです。これは自分の限界を見えなくする(成長しなくなる)、という事を知ったからです。

    • Hindsightは辞書だと後知恵と出てきますが、日常会話でも出てくる便利ワードで私のイメージは”後付け”という感じです。このHindsightバイアスは、Cognitiev Error (Belief Perseverance:思い込み)の一つで、過去の出来事や言動に対して、後になって予想可能だったと思い込んでしまう事です。

    • このHindsight、実際の投資行動として発現するのはTrend Chasingなんだそうです。なぜか。Trend Chasingは投資戦略として、特にHFTなどのアルゴで、一般的と理解していますが、個人が取る戦略としては決して大勝出来るものではない様に思えます。しかし、例えば高騰を続けるミーム株を眺めている場合などに「あれは高騰間違い無しだったはずなのにどうして俺は買わなかったのか」というHindsightバイアスが発生、Trend chasingの結果、Excessive Tradingによるパフォーマンス低下に繋がってしまう、というものです。

    • 他にも、自分の予想が正解したときに、不正解だった人を過剰に批判してしまうケースがあるそうです。これは自分がManagerやAnalystを採用する場合に注意しておくことですね。Hindsightバイアスが原因で自分の限界を把握できない。つまり、分からなかった事、予測できなかった事を正しく把握できないため、反省・改善が出来なくなるのです。なんだか、人生論の様ですが、本当にその通りだなと思います。

    • ビジネスパーソンも投資Managerも、後付けの説明は辞めて、フェアに結果を受け止めて、正すべき事は正すという行動が自分を成長させる(ポートフォリオならリターンを向上させる)、という事ですね。

  • Regret 後悔は2種類

    • Regret Biasでは過失による後悔と不作為による後悔の二つがある事を学びました。ちょっと観点は異なりますが、私自身が迷ったときに考える軸が、やる後悔とやらない後悔だったので、よく覚えています。

      • Trade offの選択肢で判断に迷った場合、後悔は行動しなかった事に対して強く出るので、後悔を減らすには行動するべき、と考える様にしています。これは色々な著名人が異口同音に言っていることですよね。

    • カリキュラムではError of CommissionとError of Omissionとして学習します。前者は失敗を恐れて保守的になり過ぎる、後者は見逃しを恐れてHerdingしてしまう事です。これらへの対処としては効率的フロンティアなどの基礎を教育する事です。

    • これらは投資のみならず、ビジネス一般においてとても大事だなと思います。失敗を恐れて何もしない人とはいい仕事は出来ないですし、他の人の言動次第で判断がブレる人と仕事してもストレスがたまるだけです。CFAの学習を通じて、Error of Commissionへの恐怖が強い人には物事を過度に恐れる事が無いように充分な知識を付けて貰い、Error of Omissionが怖い人には判断がブレない様に客観的な分析力を身に着けてもらう必要があると理解しました。

おわりに

最初の方で、分類でニヤニヤと書きましたが、結構あたってるなとも思っています。仕事でPassive Preserver(PP)の様な人だなと(私が勝手に)思った人がいたのですが、個別案件の具体的な話にはエモーショナルな反応をしてきた一方で、マクロ寄りの非定量的な将来の話や主語の大きな話をしたら、共感を得られた事がありました。教科書通りの状況に、おぉPompianすげぇと思いました。

これまで学習してきたハードスキル的な内容とは異なり、ソフトスキルの強化に役立つ科目でもある、そんな印象の科目でした。時間があるときに専門書を日本語で読んでみたいなと思った部分です。

自分の為に書いたメモですが、お役に立てれば幸いです。

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