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常連客と店員と私~ある朝食~

ゴミ出しをした帰り道に、ふと近くのファミレスに立ち寄った。休日の朝だけ、朝食メニューをやっていると聞いたからだ。

立ち寄ってすぐに、何となく、後悔した。店の中は店員と親し気に話す常連客ばかりだったのだ。

「いつものね」「かしこまりました」
「今日はいつもの和定食に卵をつけるわ」「いいですね、おいしそうです」

そんな会話がそこらから聞こえてきて、私は彼らの楽しみに水を差したような気分になった。

仲の良いクラスに放り込まれた転校生の気分だった。

私が彼らに何か影響を与えるのではないかと、漠然とした不安に襲われる。本当はそんなことはまるでないと思うのだが、実際にメニューを頼むまで、いささかの勇気を必要とした。

トーストと目玉焼きの朝食をそそくさと食べ、そのまま会計を済ませて、店を出た。朝ご飯は、とても美味しかった。

帰り道、自分に嫌気がさした。

毎回のようにいけば常連になる人もいるだろうし、店員が親しくなることを私が悪く思う必要は全くないし、不安や勇気を必要とした私の方が妙なのだ。

むしろ常連と顔見知りの店員しかない空間だからこそ、私は逆にみられることもないというのに。

ゴミだけ出して、すぐに帰ればよかった。

そう思いながら帰宅して、朝のコーヒーを淹れる。怖がった自分も一緒に煮えて溶ければよい、揺れるコーヒーを覗き込みながら、私はそんなことを考えたのだった。


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