悪い芝居上演に寄せて

悪い芝居との出会いは2014年。「マボロシ兄妹」という作品。
キャラメルボックス劇団員で同期の渡邊安理が出ていたので見にいった。青山円形劇場。

同期の活躍もさることながら、山崎彬が放つ独特の世界観と出演者のパワーに、「ええもん見た」と思ったのを覚えている。

2015年のリーディング公演「乱暴と待機」@赤坂RED/THEATERで山崎くんと演出家と役者として相対することになる。

公演自体は充実していたけど、稽古期間は短かったし、上演台本も本谷有希子さんのもので、「マボロシ兄妹」で感じたような山崎ワールドにどっぷり浸かった感覚が無かった。少し不完全燃焼の感があった。

2016年、赤坂RED/THEATERで観た「メロメロたち」で心を掴まれた。爆音を響かせながら、観客の心に拳を振り上げながら土足で踏み込んでくるお芝居で「バカだこの人たちは」と思いながら、羨ましくもあった。

その解放感に。
才気走った世界観に。

好き嫌いは分かれるかもしれない。
だけどそもそも力が無いと「好き」か「嫌い」かさえ分かれる作品作りはできない。

そして思った。
自分がこの中にいたら、どんな演技をするんだろう。

山崎くんはたぶん私より一歳上で、同年代にこんな才気ある演出家がいることがとても刺激になった。

その後、山崎くんは役者としてキャラメルボックスに客演してくれるけど私がキャスティングされていなかったり、同じ事務所だけど共演機会が無かったりと、なんだか近しいところにはいるけれど、ニアミスで終わる距離感が続いていた。

2020年、なんとなく熱視線を送り続けてきたのが実ったのかどうか分からないけど、悪い芝居vol.26「トキメキメイクライトアンリアル」という作品に呼んでもらう。

私は息巻いていたけど、稽古2週間ほど過ぎたところで、コロナの影響で公演が中止に。またもや不完全燃焼を味わうことになる。

翌2021年、悪い芝居出演者オーディションが目に留まる。
待望も待ち続ける続けると執念になってくる。
顔見知り、というか、もはや知り合いだったけど、なりふり構わず出演者オーディションを受けた。

そんで2022年。
念願叶って悪い芝居に出演、上演できるところまでこぎつけたのである。

とまぁ、前置きが長くなったけど、ずっと出たかった団体だったんです。

悪い芝居と言えば、爆音鳴らしながら歌っちゃったり、ゴワゴワの動きにくそうな衣装を身に纏ったり、その派手さのイメージがあるけど、私が出演することになったのは何と「悲劇」。

それでも悪い芝居節、山崎節は健在で、初日を明日に控えた今現在、どっぷり浸かれたなぁという充実感がもうあったりします。

本番で感じることもたくさんあるだろうけど、稽古でもたくさんのものをいただきましたし、たくさんのことを考えました。
だって演劇って、本番より稽古期間のほうが長かったりしますから、そこ充実させないでどうするって感じ。

ご時世のこともありますけど、より一層「演劇できる喜び」「しかも、悪い芝居の中で」を感じて、悲劇だけど楽しくってしょうがない私が、本番にいるような気がします。

明日から頑張ります。
「悲劇」だけど心はぴょんぴょん跳ねている様を見てくれると嬉しいです。

悪い芝居ホームページ
http://waruishibai.jp

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