190201_前田高志さん取材_

「世界に“永遠の童心”を打ち出す」その過程を楽しんでる_デザイナー/漫画家・前田高志の惰性を破る柔軟な生き方③

クリエイティブテーマ「永遠の童心」と、スローガン「おもろ!たのし!いいな!」を掲げる前田デザイン室。そのオーナーをつとめ、ロゴや装丁など、あらゆるデザインを手掛けてきた前田高志さんは、実は得意とする分野に「ブランディング」を挙げている。テーマやスローガンの意味、そして新たな挑戦に込めたサロンへの思いとは?


クリエイティブテーマ「永遠の童心」の由来と意味

――『マエボン』の巻頭でお話されてる部分でもありますが、前田デザイン室のクリエイティブのテーマが「永遠の童心」なのはどうしてですか?

前田さん:あれは、メンバーの1人から言われたんですよね。もともとクリエイティブテーマっていうのはなかったんですよ。単純に「おもろ!たのし!いいな!」っていうスローガンだけがあって、「おもしろくて、たのしくて、いいもの」はなんでもつくろう、やってみようみたいな感じやったんです。

でもなんかZoomで喋ってるときにあるメンバーから「前田さんって童心があるというか、それが前田デザイン室っぽいですよ」みたいなこと言われて「あぁ童心か。いい言葉やな」って思って、「永遠の童心」に決まった。

――メンバーのふとした発言がきっかけだったんですね。「永遠の」ってついているのは、ずっとそうありたいという思いで?

前田さん:そうですね。その言葉にビジョンを入れたっていう感じです。でもただ「懐かしい」とか「子どものころ好きだったもの」とかそういう意味じゃなくて、「固定概念なく、純粋な気持ちで、何でもチャレンジする」とか、「面白がってみよう」とかそういった意味合いです。『マエボン』の表紙のキャラクターは「童心くん」っていうんですけど、にやってしてるんです。なんていうか、企みをしてるんですね。

――あ、これ童心くんっていうんですね。

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▲『マエボン』。表紙に「童心くん」が描かれている。サインは僕が発刊記念イベントで前田さんからもらったもの。

前田さん:そうです、童心くん。「こんなのあったらおもしろいだろうな~」みたいな感じで、にやにやしてる。その「気持ち」なんですよ。

――あぁなるほど。心がにやついてるんですね。

前田さん:にやついてるんです。だから、いわゆる「懐かしいもの」「子どもが好きそうなもの」みたいなことではなくて「気持ち」なんですよね。

「子どもの頃の気持ち」なんです。永遠の童心って。遊び心ですね。

――前田デザイン室のみんなにそれを持っていてほしいなっていう思いも?

前田さん:あーまぁそこまでは思ってないですけどね。そんな縛りはなくて。永遠の童心っていろいろ幅広いじゃないですか。「これも童心だ」っていえばその定義は広げもいいかなって思います。

――自分としてそう在りたい、童心を忘れないといった意味合いでもなく?

前田さん:いや、そういう意味じゃないです。なんか、勝手にそうなってるっていう感じですね。なんでもおもしろくしようとか、楽しくしようとか、べつに決めてるってわけじゃなくて、勝手にそうしてるなーっていう。

――あ、なるほど。打算や狙いがあって決めたテーマというよりも、「メンバーのふとした発言から生まれた」ことが象徴してるように、みんなが自然とそうなっていたり、前田デザイン室をつくる過程でそう “見えた” 、「自然とそうなっていた」っていう部分がテーマになったんですね。

前田さん:そうですそうです。他にもいろんなオンラインサロンがあるので「前田デザイン室はこういうものをつくっていく」っていう指針がある方が、やっぱりそこにいる価値が出る。そこをはっきりと出したいなと。ビジョンとか目標とか、こういうのが前田デザイン室だと。ブランディングですね。

これも僕がスターじゃないから。この場所がいいって思えればっていうことです。


「世界に永遠の童心を打ち出す」その過程をいま楽しんでるんです

――全部つながってるんですね。目標といえば、前田デザイン室で1つ掲げられているのが、世界のデザイン市「ミラノサローネ」への出展ですよね。

前田さん:まぁ、具体的にミラノサローネにしたんですけど、要は、世界にこの日本のふざけたものでアプローチしてバズりたいっていう。

――ピコ太郎みたいなことを。

前田さん:そうですそうです。「世界に対してこれやったらおもしろいだろ」みたいなことをやりたいんです。

それで何かおもしろいものを今探っている段階。ヒットが出るかもしれないし。「おぉ、やばいのできたね」みたいな。そういうものを出そうと。

「オンラインサロンは会社とは真逆」ってよく言ってるんですけど、そこにやっぱり価値があるんですよね。

オンラインサロンだからできる。前田デザイン室だからこそできたみたいなものをつくりたいんです。仕事みたいにやってたら、そういうものは生まれてこない。

だから前田デザイン室の価値は「仕事とは違う」ところで「永遠の童心」をもって「おもろ!たのし!いいな!」っていうものをつくること。そういうものが生まれてくる気がしてます。

テーマもスローガンもそのための言葉です。「聞く言葉」というか「行動を促す言葉」のような意味でつけてます。

――なるほど。そもそもですが、世界最大のデザイン市といわれるミラノサローネってどんなものなんですか?

前田さん:東京デザイナーズウィークってやってるでしょ?あれみたいな。あれが、そのままミラノサローネの東京版です。プロダクト系が多いんですよね。家具とか雑貨とか、生活に密着するようなものが出品されてますね。

1区間で出品料が30万円かかるんですよ。なので30万円を目標に、前田デザイン室での売り上げ収益をそこに充てようとしています。

――やっぱり出品には審査なんかも?

前田さん:あるかもですけど、まだそこまでは。

――まずは資金も含めて、そこを目指しているということですね。

前田さん:資金と、アイデアですね。やっぱり目標があると盛り上がるじゃないですか。オンラインサロンに入っていても、目標がないと何のためにやってるのかってなる。だから物語があるといいんです。

漫画の「ワンピース」って、ワンピースっていう宝を見つけるっていうストーリーがあるからできてるじゃないですか。ナルトは火影(ほかげ)になる。その段階を楽しむ。前田デザイン室は「世界に“永遠の童心”を打ち出す」。そこを目指してるんですよ。その過程をいま楽しんでるんです。

――「過程を楽しむ」っていうのは「永遠の童心」にもつながる、すごく前田デザイン室らしいフレーズだと思います。


前田デザイン室があるから漫画家になれた

――ちなみにデザイナーと漫画家で、お金ってけっこう差があるものなんですか?

前田さん;そうですね。漫画家は安いですよ。原稿料なので。

――でもそこに飛び込めるのはすごいですよね。

前田さん:それは前田デザイン室があるからですよ。精神的な支えもあるけど、金銭的な支えがあるから。

――前田デザイン室の存在が根本から前田さんを支えていて、反対に前田さんもとても大事にしているっていうのがすごく伝わってきます。

前田さん:そうなんです。漫画家になることもある意味、僕が漫画家として成り立つまでの過程が楽しめるっていうコンテンツのひとつでもあるんです。

いやぁ、めちゃめちゃおかげですよ。毎月収入が得られるって大きいですよ。将来的に僕が漫画でヒットして、何かの形でお返ししたい。僕の描くキャラクターのモデルに、前田デザイン室の人が出てきたらうれしいですよね。

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実績を増やしてポートフォリオをつくれる

――前田デザイン室にはデザインをやっている人、これからやりたい人も多いと思います。偏にデザイナーといっても、会社に勤めるインハウスデザイナーもいれば、前田さんのようにネットをフル活用していく形もありますが、これからデザインをしていきたいという人はどのように活動していくのがいいと思いますか?

前田さん:メンバーは、仕事とは違う前田デザイン室でいろいろおもしろいことをやっていけば、ポートフォリオが楽しくなっていくと思うんですよ。

仕事でのライバルを追い抜きながら、自分の個性とか強みを発揮したポートフォリオつくっておけば、どこにでもいけると思うんです。

たとえば、いざ5年後くらいにやりたいことが変わって「今までこれだけやってきました」って言えれば次のステップアップにもなる。

違う会社に行きたいときにも使える。フリーになりたいと思ったときもできるじゃないですか。だから「ポートフォリオつくる」ってことですよ。

自分の作品をつくってポートフォリオにまとめて、自分の可能性を模索していくってことじゃないですか。それは前田デザイン室だとどんどんできる場所だと思います。

――なるほど。これはデザイナーに限らず言えますね。今まさに前田さん自身もやってることでもあります。デザインをやってきたけど次は漫画家を目指して、自分を試す。どこかで突き抜けるときがくると信じているけど、苦しい時期は必ずあって、乗り越えて、また自分を試していくっていう。

前田さん:そうそう。

――なるほど。ちなみに前田さんが今10代、20代だったらどんなことをしますか?

前田さん:やっぱりオンラインサロンに入ると思います。ツイッターもガンガンやる。TリーグのTシャツを一緒につくってくれた高校生クリエイターのGOくんみたいなことをやると思いますね。


(前田高志さんインタビュー連載最終回「『苦しみは楽しみに変わる』_デザイナー/漫画家・前田高志の惰性を破る柔軟な生き方④」に続きます)

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【掲載広告募集のお知らせ!】

『NASU 前田高志のデザイン』に掲載する広告主様を3枠募集します。(2019年3月31日まで)各枠 150,000円 先着順

※広告枠は巻末に掲載いたします。
※広告の作成に加え、完成品の「NASU本」1冊をご指定の場所に配送いたします。

●おことわり● NASU本のテイストに合わせ、前田デザイン室側で広告ページを作成させていただきます。製作日程の都合上、ヒアリング後のデザインに関する細かな修正にはお応えできかねますことをご了承ください。

(下記 書籍情報)

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【書籍発刊のお知らせ!】

『NASU本 前田高志のデザイン』前田高志監修、5,800円、前田デザイン室(発行)、日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社(印刷)

前田の「ものづくり」のこだわりがすべて詰まった「クリエイターの指南書」。アートブックであり、ビジネスマンが仕事で使えるデザイン思考を収録した実用書パートも兼ねております。

クリエイターのための本書はタイトルのネーミングにちなみ、前代未聞の “ ナス(茄子) ” をかたどった書籍として発刊。

印刷には、日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社の高品質カラーデジタル印刷システム「NDP(Nissha Digital Printing)」による、高彩度・高精細な印刷技術を採用しており、“ 全ページフルカラー ” にてお届けいたします。

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【トークイベント開催のお知らせ!】

「前田デザイン室トークイベント『えっ!? 元任天堂デザイナーが漫画家に?〜41歳でたどりついた後悔しない生き方〜』」

15年にわたって宣伝広告デザイナーをつとめた任天堂から独立し、株式会社NASUの代表としてデザイナーとして活躍の場を広げる前田高志が、2019年、41歳にして漫画家に転身。本来の夢に向かって突き進む前田さんが持つワークスタイルを存分に語るトークイベントです!ぜひ、足をお運びください!

日時:3月21日(木) 14:00~16:00(開場13:30)

場所:梅田 蔦屋書店

〒530-8558 大阪府大阪市北区梅田3丁目1−3


ライター:金藤 良秀


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