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あの交差点に、僕とあの子がいた ①小学生編 #ノートの切れはし

小学1~2年生のころ、僕は片思いをしていた。相手はある日転校してきた女の子だ。

可愛くて学校では比較的おとなしいのに、遊ぶときはなぜか女の子とではなく、僕ら男の子と遊ぶことが多かった。

その子はスポーツも取り分け得意だということもなかったけど、運動は好きで、よく一緒に漫画のキャラクターになりきって “ごっこ遊び” をしたり、大人は誰も入ってこない近所の小さな森に忍び込んだりして秘密基地をつくって遊んでいた。(秘密基地はスコップで穴を掘ったり斜面を安全に降りられるようにロープを張ったりと、なかなか本格的だった)

そうして遊んでいるうちは、「可愛いな」となんとなく思いつつ、その子に告白をしようとかそんな感情は小学2年生の僕にはまったく湧かなかった。

ただただ、一緒に遊ぶのが楽しかった。

そうして一緒に遊んでいるうちに季節が変わり、僕らは小学3年生になった。あの子とは別々のクラスになり、次第に遊ぶ回数も減っていった。3年生の記憶といえば、担任の先生が嫌いだったことと、口笛が吹けるようになったことくらいだ。

*   *   *

5年生になり、僕はまたあの子と同じクラスになった。しかも6年生までの2年間、もうクラス替えはないのだという。僕は密かに喜びを感じていた。

しかし、あの頃よりも一緒に遊ぶことが随分と少なくなった。一緒に登下校はしても、“ごっこ遊び” なんてとっくにしなくなったし、お互いの趣味も付き合う人も多少変わって、あの子は女の子ともよく遊ぶようになっていた。


そんなときに、ふと思った。


「このまま卒業してしまうのか」


“中学校” とはどんな世界なのか僕にはよくわからなかった。きっとあの子とは離れ離れになってしまう。そうするともう会えなくなってしまうかもしれない。あの子は僕を忘れてしまうのではないか。

同じ中学校に進むというのに、そんな極端なことを考えていた。

そして僕は、ある決断をした。


「告白しよう」


“告白” の意味はよくわからなかったが、“告白” をしなければと思った。とにかくそう思った。


そして、小学校の卒業式を間近に控えたある日の下校時、僕は彼女と一緒に帰った。一緒に下校することはたびたびあったので、不自然でもなんでもない。帰り道は途中まで同じだった。


長い坂を下って、公園の横を通り過ぎる。


僕の心だけがずっとドキドキしていた。


そしてついに、分かれ道の交差点に着いてしまった。僕は右に。彼女はまっすぐに行けば家に着く。


少し後ろを歩く彼女。前を歩く僕。


僕は思い切って振り返った。そして言った。


「まだ小学生なのに馬鹿だと思われるかもしれないけど、中学生になったら僕と付き合ってください!!」


言い終わって、僕は頭を下げた。特に意味はない。告白とはこうするものだと思っていたからだ。漫画で見たことがある。


沈黙が走った。すると10秒ほどしてから彼女が口を開いた。


「はい」


僕は少々驚きながら、彼女に確認した。「本当に?」

彼女は可愛く「うん」と頷いた。


僕は歓喜の表情を見せながらも冷静さを装いつつ、「ありがとう、またね」と言ってその場を去った。


「やったー!!」と空に雄叫びを上げながら帰り道を駆けていった。彼女は僕の後ろ姿を見つめていた。たぶん。想像だが。



何もかもをやりきったような表情で、僕は家にたどり着いた。


「ん?」

僕はなにか違和感を覚えた。このモヤモヤはなんだろう。

頭の中に立ち込めた濃霧を掻き分けて、ついに違和感の正体を見つけた瞬間、僕は我に返った。


「付き合うってなんだ」


「付き合ってください」とは言ったものの、「付き合う」とは果たして何なのか。

僕は、“好きな女の子には好きと伝える” ことはなんとなく知っていたし、好きな子に好意を伝える呪文として「付き合ってください」を知っていた。しかし、“好きと伝え” た後のことはまったく知らなかった。

「このあとはどうするんだ? “彼女”ってなんだ。よくわからない。というかよく考えたら、僕はもっと気の強い子がタイプだ。どうして僕は告白したんだろう」

自問し続けた末に答えは出なかった。夜、布団を敷いて寝床に就く瞬間まで考え込んでいても、気にせずぐっすり眠れるタイプだった。


翌日、僕は生徒の色恋話の好きな若い男の担任の先生に相談した。恋愛相談をいつも自分から受けに来る先生だったが、今日は僕の方から相談を持ち掛けた。

「先生、実は昨日、あの子に告白したら、『はい』って言ってくれたんだ」

先生は驚愕。「えええ!! 先生いつもこういう話するけどそこまでになるとは想定してなかったよ。それ以上はもう君たちでうまくやっていくところだ。先生の入り込む余地はない。がんばりな」


「いや、だけどね、好きかどうかよくわかんなくなっちゃったんだ」


そう言うと、先生は困った顔をした。

「そうか、それは残念だけど、じゃあ丁寧にお断りしないとね」


そうか、丁寧にお断りすればいいんだ。タイミングを見計らって丁寧にお断りしよう。告白した側であるのに、僕はお断りをすることにした。


その日の午後、クラスのみんなが視聴覚室で思い出作りのレクリエーションをしていた。

輪をつくってみんなが賑わうなか、僕はそっと彼女の後ろに回った。


「あのさ、」


「ん?」彼女が振り向いた。


何と言おうか一瞬迷った。そして、僕は言ってしまった。


「昨日のは、ずっと友達でいてねって意味だからね」



彼女から返答があるまでに、一瞬の間があいた。


「......うん」


あ、よかった。わかってくれた。

僕はそう思ってホッと胸をなでおろした。



......


中学に入ってからは、お互いに普通の友達としての関係が続いたが、ほとんど会話をしなかった。

中学を卒業すると、僕は地元の県立高校。彼女は女子高に進学し、ついに会うこともなくなってしまった。


そして、僕とあの子はあの交差点から6年の時を経て、突然の再開を果たすことになる。


あの交差点に、僕とあの子がいた ②中学生編に続きます〉



ライター 金藤 良秀(かねふじ よしひで)


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金藤 良秀 ライター

フリーライター。取材、WEB、雑誌、ライティング代行、文章ゼミ。お仕事はDMかyk.2030.sgi@gmail.comへ。ミスチルをこよなく愛し、素材研究、建築、インテリアが好きな甘党です。note ☞ note.mu/kinto2030

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