お食事会に招かれて


いっそ全員エディ・マーフィのが良かった...




私の、ペルー料理をもう一度食べたいという願望が娘に届き、娘が誘われたペルー人のお友達家族との食事会に私を誘ったのだ。




外国のファミリーパーティ...



もみくちゃに歓迎されて「ヒョーー」とか「フィーーー」とかよく分からない奇声が終始飛び交う どんちゃん騒ぎ に戸惑い、テキーラのショットグラスを渡されたら「いやーこれはちょっと...」と断れるのかな、マナー的にダメなのかなと気を使い、退散のタイミングを見図るが肩を組まれて全然離されず、隙を見てこっそり抜け出す計画を立て「明日は早出の仕事なんで」と言いながらそそくさと立ち去るだろう自分の姿をイメージトレーニングして行った。

しかし実際は


ニコニコとお母様が立ち上がり照れがちに
「...ハジメマシテ……アエテウレシイ……ハハハ」
くらいの挨拶で、ハグするわけではなく、もちろん肩など組まれるわけもなく

なんなら私から差し出した握手の手...
何もなかったようにこっそり引っ込めたくらいだ。握手の文化は北だけだったか。
おいこれはしょっぱなからどうなってんだ。


一つの大きなテーブルには、ご夫婦とお父様の弟さん、お友達の妹弟ちゃん達が座って待ってくれていた。

ソコニスワッテ と、
私は大人達とは真反対のお子様側の席に案内された。お母様は私から離れたテーブルの真ん中の席に座りやはり照れながらニコニコとしていた。

この時点での私は
「ウェーーイ」の方に事は進まず、テキーラを回される心配も無くなりホッとしていたが、座った直後に事前にしてきたイメージトレーニングと180°違う展開になっていることに気がついた。


予定での私の席はお父様とお母様の間に挟まれテキーラを回されるハズだった。
それがこの距離...
これは
向こうも私と同じくらいの隠れ陰キャで適度な距離を取ってきたということなのだろうか。

そしてこの位置が意味することは?

これは恐らく日本語ペラペラの子供を通訳として間に置くことで私との会話をスムーズにするためだろう。

これは......

わ...

私が回すしかないのか!!!


MCスイッチを入れて開き直った私は
日本語ペラペラのおしゃべりな小2の弟くん相手にゲームの話を盛り上げたり、おばはんが向かいに座ってきて妙に緊張してる小6の思春期を迎える時期の妹ちゃんが居づらくならないように、会話が途切れそうになるのを恐れて学校トークをガシガシ引き出そうとしたり、弟くんとの話題に引き込んだりと回すことに必死だった。

お母様もまた
ゲストを放っておいてはいけないと気を使いゲームトークと学校トークに片言の日本語で参加もしてくれるが、並行して反対側にいるご主人とその弟君にもペルー語で話題を提供している。

みんな 楽しんでる?


...ハァ...ハァ


この食事会に参加してもよかったのだろうか...

いつもの、ほぼ一員になりつつある娘だけの参加なら家族色がもっと濃く出た気楽なものだっただろうけど、往年の日本人の参加で「言うてもココは日本、古き価値観に固められた日本人に合わせた接待しなければ」な、緊張に満ち満ちた場となってしまったのではないのだろうか。

いっそ全員エディ・マーフィのが良かった。


そう思ったが、

いやまていやまて


エディ・マーフィだって自国ではあの調子だろうが場所が変われば彼も大人だ、TPOをわきまえて日本の作法に準じるだろうし、日本語中心に会話を置き換えれば言葉数も減るんじゃないだろうか、とも思えてきた。

ご家族の大事な集まりの場面に緊張を持ち込み気を使わせてしまったのかもしれないけれど、それも最初の一歩には誰でも必要な気配りで当然のことなのだろう。と、時間と共に、また、文章を繰りながら考えを変えてきている。

うんうん、あれで良いのだ

そんなふうに自分の行動を肯定する自分の都合の良い思考がたまに自分でもうらやましくなる。

次に会えるのが楽しみだなぁ


〈一旦 おわり〉



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