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日日是好日

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ひねもすのたり
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記事一覧

ジョアンナとよなよな

ジョアンナとよなよな

それのはじめては鈍色だった。
あくる日の雨には青ざめ、つぎは朱となった。

奇妙に鳴くそれをジョアンナと呼ぶ。
ジョアンナは、いつもひとりだった。

烏はつがいで生きるという定義を彼は捨てた。相棒は、
よなよな。みてのとおりの猫。
 
 
 
ジョアンナの尾羽とおなじ緑の目をもつ。
彼らは共同で狩りをする。

順応しない人間とは違う生物。

美味しいイチジクコバチになりたい

鬱を治したい、ではなく鬱に辛いという。それをとても正常に思う。なぜなら、鬱が均衡のために生まれたものと無意識に知っているのかもしれない。

鬱が辛いのでなく、鬱である自身が辛い。
 
 
 
イチジクコバチは、いちじくの中にしか卵を産めないという。そして、いちじくの繁殖は、このイチジクコバチの媒介によって受粉する。共生とはダーウィンの種の起源を以てするなら自然選択なのだろう。しかし、それは奇跡にも

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珈琲なき珈琲時間

冬の朝ははやく、カーテンを開けば白む窓には露が落ちる。やかんに白湯を点て、未明の過ぎた身体を温める。珈琲を淹れる日課はない。珈琲は好きだ。ただ、珈琲の好き嫌いがある。

若い時分暮らしていた町で知り合った、珈琲店を営むご夫婦を思い出す。彼らは、大きくはない町のなかに珈琲の香りを広げることに夢を広げていた。
 
 
ご主人は、よく外国から葉書をよこした。葉書には、日焼けした彼の笑顔と背に広ぐ珈琲農園

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苦肉のふかし芋

大正生まれの祖母は戦時中の苦労話などを一切語らないひとだった。わたしの知る限りに、祖母の耳は遠く、それが老人性だったか否かも知らずにいた。

体小さくあり、更にその容貌は、わたしから見ても年老いになく少女のような愛らしさ、そして愛されていた。

一度だけ、伯母の酩酊具合の教えてくれたことがある。
伯母たちが小さかった時分の祖母の母親像というものを。
 
 
わたしにとっての祖母と、伯母たちにとって

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金魚湯

金魚湯

ひとは忘れながら生きていく。

記憶のcapacityは表面張力の働かない風呂のよう。引力を無視される。その代わりに湯張り番がいる。番頭さんだ。
 
 
番頭さん、番頭さん、今日の湯かげんはどうだい。
昨日の湯はどこぞへ流れたかね。

湯の行く末は、番頭さんの懐だ。懐が広いね番頭さん。
 
 
うちの番頭さんは、すこしせっかちで今日の湯も流しちまうことがある。そう慌てなさんな。月はまだ高いよ番頭さ

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ジャコデス

ジャコデス

とりとめない浮遊した会話、国境なき医師団。これらに無く、取り巻くトーラスに有るもの。わたしには、どうにも苦手なことがある。

それは目的だ。
苦手というか、苦手に在る。
夏休みの宿題のなかに読書感想文なるものがあった頃、所謂課題図書が提示されるのだが、とくに嗜好もないわたしはただ、与えられたものを読んでいた。

問題は、それらを読んだ感想文にある。
幾つの頃だったか、あれは伝記というものの感想文だ

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色恋の難足るか、容易いかは女子高生に尋ねるがいい

常日頃から周囲に公言していることがある。
水生生物に色恋の相談はしないほうが身のため。

過去を振り返ると、二十代の頃にあった師は小学生の女子だった。三十代の頃には女子高生を師と仰いだ。嗚呼、

衰退より進化の強さたる。

産むものは常に後だし戦法なのだと女子高生は云う。
言い得て妙だ。

やおらと、やおいの夢をみているようなわたしとは思考の辺が違う。
 
 
 
時代は思うより悲観になく、
悲観

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無理

む‐り【無理】

[名・形動](スル)
1 物事の筋道が立たず道理に合わないこと。また、そのさま。「無理を言われても困る」「怒るのも無理はない」「無理な言いがかり」
2 実現するのがむずかしいこと。行いにくいこと。また、そのさま。「無理を承知で、引き受ける」「無理な要求をする」
3 しいて行うこと。押しきってすること。また、そのさま。「もう無理がきかない」「無理に詰め込む」「あまり無理するなよ」

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匂い

匂いは匂いのもととなる分子を嗅覚で感じ、それらが
電気信号となり脳へと伝達される。そしてそれらは、
海馬において記憶を呼び覚ますという役割を担っている。

例えば梅干しやレモンを見ると唾液が溢れだすような条件反射、他にも無条件反射というものもあるが、

夕暮れに何処からともなくカレーの匂いを感じて、思い出される記憶の切なさと愛しさは代えがたい。

一般的には匂いを思い出すということは難しいと聞く。

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印象

印象というものが生まれる経緯を考えていた。
例えば見た目。

昨日はフェミニンなワンピース。
今日は登山靴でも履いていそうな重々しいスタイル。
どちらかのみを見た、もしくは両方を見た他者に与える印象というものは大きく違うのだろう。

言葉はどうだろう。
話し言葉と書き言葉でも随分と印象は変わる。
何を目的として、どこへ向かっているのか、そこに対相手の欲求までもが重要となる。

ある人は、わたしをと

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ショートニング

ショートニングとは
精製した動植物の油脂,硬化油 (大豆油,綿実油,牛脂,鯨硬化油,豚脂など) に 10~20%のガス (窒素ガス,炭酸ガス,空気) や乳化剤を含ませた可塑性の油脂食品で,マーガリンと異なり水を含まない。(コトバンク引用)

すこし前にショートニングというものが問題視されていたことがあった。

果たして真実はどこにあったのだろうか。

幼少期にネグレクトを受けて育ってきたという男性

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