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卯の花腐し折れた枝

暗転の空、雨足の厳かな改札に人は無い。
冠水を始めた動かない階段が泥濘のよう足を吸い、縺れた先の浅はか。
 
 
漸くと昇りきったプラットホームには、熱帯魚の泳ぐ浅瀬の珊瑚礁が狭く広がる。

駅か水槽か、水槽か駅かと繰り返す発車ベルの思い逸らんうちに水面を滑る急行が連れ去ってゆく。

せんせい、
わたしは確かにそう呟いた。

夜がな夜一夜。

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