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雨の日はロールケーキ

身体中にシーツのまとわりついて目覚める夜は、
宵宵の雨のおかげ。

寝床を這い出れば、そこには水たまりと言うには大きすぎる程の池が出来ていた。天井からの水滴には幾つもの歪んだ顔が映る。酷く
 
 
疲れた夜。

夢のなかでは順調そのものだった。
目覚めれば現実は悪夢の天秤を傾ける。
 
 
傘を差すか、レインコートを被るのかは池の底で潜思する。
足枷が重いのか、底が深いのかいつまでと水面には手が届かない。手枷のせいだ。

レインコートが傘をくるくると巻き上げる。

ロールケーキが食べたいわ。
手足のない金魚の宣いごとに飼い主は傘を差した。
 
 
 
曇天に金魚色のロールケーキ。
夢のなかへお帰り。
ロールケーキをひと欠片、金魚の口へいれてやる。
大餐ね。然うして

金魚は空へと、
緋い月の綺麗な夜だった。

月を輪切りにしてやれば金魚は泳ぎだす。
 
 

切り口には傘を

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