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コンクリートクリスマス

ジングルベルを埋めてきた。
 
 
 
 
記憶は応えない。ただ、
確かに埋めたんだ。

冬は寒いものだと云うひとがいた。
そうだね。と答えると、

そのひとは寒い国へと旅立っていった。
 
 
 

真夏の太陽を思い出と共に、もみの木の下へと置いて。
いいえ、遮光になくレースのカーテンを落としてみてください。 ほらね。

黒いレースのカーテンの向こうには白い季節がいる 。 
悍ましいことを然も、天気を窺うかの如くに云うんだ。
埋めたはずのジングルベルが聴こえるよ。
 
君の思考はアブストラクトナンセンスだと、コンクリートの壁をハンマーで叩きながら教授は言った。教授の仮説では、そのコンクリートの向こうにジングルベルがあるという。
 
 
 

いつか、わたしにシシュポスの岩を教えてくれたのは
あなたでしたね。教授にもジングルベルは聴こえているのだろうか。

或日、寒い国から手紙が届く。 
 
 
 

わたしにあなたを殺させないで

確かにアブストラクトナンセンスだ。
心臓がジングルベルを奏でている。

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