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台湾東北角での臨海実習

1:導入

この記事は上のYouTube動画版「台湾で磯採集をする」の台本をほぼそのままnoteにしたものです。「動画を見る前に内容を確認したい」という方や「文字情報のほうが理解が早い」という方はそのままご覧ください…と、申しましても、やはり動画のほうが圧倒的に情報量が多いので上のリンクをクリックされてまず動画をご覧になられることを強くお勧めします。それでは、どうぞ。

1-1:臨海実習に参加してきました。
1-2:「台湾の東北角の潮間帯で行われた臨海実習に参加する」
1-3:今回、台湾国際大学院プログラムの活動の一環として行われた臨海実習に参加してきましたので、その時の様子をご報告いたします。

今回の動画の趣旨は2022年3月末に行われた生物学実習の様子の紹介です。私の所属する中央研究院の臨海研究場主任が中心となって台湾国際大学院プログラムの学生を対象に臨海実習が行われました。内容は海岸に生息する生物の採集や同定などを経験してもらう目的です。

2:東北角の場所の説明

2-1:台湾の東北部の海岸沿いには生物採集にうってつけの潮間帯が広がっています。
2-2:その中でも、馬崗(マガン)潮間帯と呼ばれるこの一帯は干潮時に生物採集実習にうってつけの潮だまりが現れます。
ちなみに、この馬崗潮間帯が位置する台湾東北部のこの一帯は東北角暨宜蘭海岸國家風景區:読み方は各自ググってみてください)と呼ばれています。
2-3:以前からこの潮間帯には興味があったのですが、今まで行く機会がありませんでした。しかし、この3月末に台湾国際大学院プログラムの教員と学生さんたちが、この場所で臨海実習を行うという話を聞き、特別に参加させていただきました。
台湾の東側は西側に比べて地形が急峻で交通があまり発達していなかったことから、開発がなされてきませんでした。そのせいで、豊かな生物多様性を擁した生物実習に適した大自然スポットがそこかしこにあります。この馬崗(マガン)潮間帯もその一つです。臨海実習があることは聞かされていたのですが、どこで行うかは私は知りませんでした。私が日本から帰ってきてからすぐということもあり、この臨海実習に関しては何の義務も与えられていなかったのですが、今回は純粋に上記のマガン潮間帯への興味から学生たちと一緒に採集に参加することにしました。

3: 採集の詳しい様子

3-1:私たちの臨海研究場のある礁渓(ジャオシー)からこの潮間帯まで車で大体40分ほどかかります。私は皆が到着する前に下見という形で先に現地にやってきて彼方此方歩いてみました。

3-2:遠目には平らな感じに見えたのですが、足元は非常に凸凹しています。また、滑りやすいノリもいっぱい生えているので歩くには注意が必要です。ウッカリ滑ると大怪我をします。

二年ほど前にアキレス腱を切ってまだ違和感が残る足で歩いているので、起伏が激しい磯場や転石浜を歩くのはかなりの恐怖を感じます。特に、波打ち際のノリがたくさん生えた岩場を歩き回るのは不安でしかありませんでした。しかし、カメラを持って打ち寄せる波を撮りたい気持ちや、台湾の東北部に生息する変わった海の生き物に会えるのではないかと思い、気が付いたときには、ノリが覆う波打ち際の岩場まで足を踏み入れていました。

3-3:この凸凹の原因はおそらく台湾の地質学的特徴によるものだと考えられます。東側の地層が激しく傾斜しているせいでこのような筋目のような凹凸がいっぱいできているのでしょう。こういう凸凹にできた潮だまりは、生物たちの格好の住処になります。
3-4:さて、みなさん、到着しました。私も早速、学生たちに交じって採集に参加します。
3-5:この一帯には潮だまり以外にも転石浜もありますので、多様な生物が採集できると期待されます。
3-6:あいにくの曇り空でしたが、非常に熱心な学生さんたちがサンプル瓶を持って採集にいそしみます。

3-7:実習に参加した教員の皆さんもそれぞれの目的に応じた生物を集めます。
今回の実習には無脊椎動物の発生過程の観察も含まれています。よって、今回の臨海実習の企画者の一人であるYu氏がアシスタントの方と一緒に発生学実習用のアメフラシの卵を集めておりました。
3-8:さて、一、二時間ほど採集を行いました。ここで、皆が採集した生き物を集めて確認します。今回の実習の趣旨に合う生き物だけ持ち帰り、あとは元居た場所に返すことにします。
3-9:教員の一人が海岸生物の生態学の専門ということもあり、次々と種を同定して必要な生き物だけをより分けていきます。
海岸生物が専門のベニー氏(中央研究院の海岸生物の生態学が専門)が今回の実習に参加していました。彼が猛烈な勢いで解説と同定を進めてゆきます。おかげで、選別が非常に速やかに行われました。
3-10:さて、作業の途中ですがあいにく雨模様になってきました。なので、一足お先に私は臨海研究場に帰ることにします。山が海に迫った台湾東北部の特徴的な海岸道路を注意しながら礁渓(ジャオシー)に戻ります。
今回、実習が行われた潮間帯は台湾の東海岸の一般的な磯場に比べて安全なためこの場所を実習の場所として選びました。しかし、すこし臨海実験場から距離が遠い難があります。景色が面白いのでドライブするには退屈しなくてちょうどよいですが、曲がりくねった道を進むのは少し疲れます。

4:臨海研究場に帰ってから

4-1:さて、我らが臨海研究場に帰ってきました。採集された生物はこれから様々な実習に使われます。今年から実習のための専用の実験室が使えるようになりましたので、ここで分類や同定を行います。
4-2:貝類や甲殻類のほかにも、ヒトデなど棘皮動物、扁形動物やユムシやホシムシの仲間などが採集されました。これらの生の生き物を使って講義や解説も行われました。
4-3:この後、さらに詳しい種の同定を行いました。しかし、その筋のプロが見てもわからない生き物がいくつかいたということでした。つまり、この台湾東北部の潮間帯には思った以上に自分たちの知らない生物が生息しているのだと考えられます。ちょうど、今回の臨海実習にはDNAバーコーディングの実習も組み込まれていたので、こういう形を見てもわからない生き物はその実習の材料として用いられました。
4-4:教員の指導の下DNAの抽出や、抽出されたDNAのクオリティーのチェックなどを学生さんたちが行います。
4-5:作業は夜まで続きますが、みなが熱心に頑張っておりました。多様な海岸生物と最新の技術を用いた今回の臨海実習。学生の皆さんにとって学びの多い機会となったと思います。そして、私にとってもこの土地の生き物についてさらに知識を深めることができ、良い経験をさせてもらいました。ありがとうございました。

5:おわりに

5-1:はい。今回の臨海実習。企画された教員の皆さんの努力があって無事終了することができました。皆さん、お疲れさまでした。

今回、私は横から見せていただいただけなのですが、また、今後このような実習も予定されております。なので、その時は、ちょっと私もなにか面白い実験実習を企画してみようかと考え降ります。ご期待ください。

この動画が皆様のお役に立てば幸いです。
それではまた。

関連リンク

台湾国際大学院プログラムについて知りたい方はこちらのリンクを参考にしてください。
https://tigp.sinica.edu.tw/



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