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Takram Hidden Library #1

デザイン・イノベーション・ファームのTakramが毎週2本のペースでお届けしているポッドキャスト「Takram Cast」。今回は、Takramメンバーの人生を変えた本・思い入れのある本を集め、Hidden Libraryを作るコーナーです。今回は田川が好きな2冊『メカニズムの事典』『世界を変えた20の科学実験』について話します。(聞き手: Takram 太田)

( トークの導入部分は省略して、佳境に入ったあたりから抜粋 )

太田 今日は田川さんの好きな2冊を紹介いただきます。よろしくお願いします。

田川 よろしくお願いします。僕は今日持ってきたのは、2冊なんですけど、1冊は理工学社っていうとこから出てる、『メカニズムの事典』、伊藤茂さんの編集ですね。サブタイトルが「機械の素」、サブタイトルじゃないね、シリーズ名だね。「機械の素・改題縮刷版」って書いてあるね。

太田 渋いですね。

田川 渋いね。これはアマゾンとかで売ってるのかどうか分かんないんだけど、一応前書きに1983年って書いてあるので、今から30年以上、けどそれより前だね。かなり前の本だね、これね。すごい前だね。元々この「機械の素」シリーズっていうのは、1912年初刊って書いてあるので、それが復刻されて、1980年代に出ているものです。なんでこれを持ってきたかというと、いわゆる機構設計とか機械の設計って言われる領域についての事典、メカニズムの事典だからです。

ネジとか例えばボルト、ナットっていうのが最初のページに書いてあるね。あと、クランクとか、コロとか、軸受とか、いろいろあるね。継手とかね、くさびとか。いわゆる機構設計っていうか、機械を構成するいろんな部品の解説っていうか、できるだけ網羅的に、当時存在していたものを集めて書いてあるよね。最近テクノロジーっていうとデジタルテクノロジーのほうが、普通に皆勉強する内容って意味だと比重が大きいし、そもそもこういう機構部品って、もうある程度一般的になってるので、どっかから買えば組み立てられるみたいな、コンポーネントになってたりするので。ゼロからこういうの設計する人って、だいぶ減ってるのかなと思ったりするんだけど。おすすめっていう意味だと、特に機構設計とかに触れたことのない人たちにこれを見てもらうと、いわゆる幾何学の世界なんだと思うんだけど、幾何学の仕組みを使って、例えばものすごく複雑な動きをするような工夫っていうのが、いろいろあることが分かる。歯車って言ってもいっぱいあって。今歯車のページ開いてるけど、平歯車とか、かさ歯車とかね。ウォームとか、ウォームギアとかみたいな、はすば歯車とかね、あるわけよね。

それの1個1個が、全然違う動き方をするために作られていて。機械の中も蓋を開けてみないと、こういう機構と対面することは一般の人はないんだけど、機械を作ってる人たち自体は、こういうことと向き合ってたりするので。これ多分ね、プロの人たちもある程度使う、勉強するときに使うようなもんじゃないかと思うんだけど。挿絵がいかにも手で描きましたっていうカラス口で描いたような図版に、5~6行の解説が付いていて、多分代表的な機構ってことで数は100種類載ってると思うんだけど。こういうの眺めてると、幸せになるわけですよ。

太田 ありとあらゆる機械を分解すると、全部このパーツに分けられるんですか?

田川 いやいや、いやいや。そんなことはないね。全然、全然。機構設計の広がりってものすごく幅が広いから、ここに載ってるものだけですべてを網羅はできない。例えば発電所とかさ、例えばダムとか、ダムも発電も一緒か。例えば飛行機とかね、電車とかもそうなんだけど、そういう機構を設計するときに、全然この事典だけでは足りなくて。そういう意味だと、世の中に比較的たくさん使われているものを、一旦網羅的にここに載せといて、機構設計のエンジニアたちが引き出しとして、「そういえば何々ってあったな」っていうのを覚えとくためのものだと思うんだよね。そうだね。例えば25番、摩擦を軽減する装置。アンタイフリクションアパラタスとかさ。「摩擦減らすって、どうやったらできるんだっけ」とかって言ったときに、ここ見ると、摩擦を減らす仕組みがいろいろ載ってるわけよね。

プロが見たら、当たり前のことしか書いてない部分もあるんだけど、だけどやっぱり駆け出しの人とか、例えば大学に行ってる人とか、これ全部最初から知ってるわけじゃないもんね。これでボキャブラリーをためるっていう。これ俺いつ買ったんだろうな?大学時代か、大学卒業したぐらいに買ってて。図表がきれいなので、デザイナーが見ても。

太田 きれいですね。

田川 興味深いよね。

太田 辞書の挿絵のような。

田川 そうそう。辞書の挿絵で、挿絵のテイストもなんかちょっと線に微妙な、そこはかとない強弱があるんだけど、これ多分手で描いてると思うんだよね。この点線とかも。昔の人たちってやっぱり、図面手書きで普通に描いてたから。今はね、CADで描くけど。こういうその線のニュアンスとかも、もはや今は見ることもないものだから、ある程度記録として持っとくと、結構うれしいなっていうやつだね。これ1冊目ですね、『メカニズムの事典』。

太田 これはなぜ、Takramに今あったんですか?なんか参照してる?

田川 これ多分ね、俺の本箱の入ってたものを持ってきたやつだね。我が家には本箱システムっていうものがあって。

太田 ぜひ説明をお願いします。

田川 うちには本棚っていうものはないのね。箱が1個だけあって、結構小ぶりな箱で。その箱の中に入りきる本しか残さないっていうルールがあって。1年間ずっと買ってくんだけど、あふれちゃうわけよね。で、あふれたやつを1年に1回、箱の中に入る冊数まで1回減らすのね。1年前から箱の中に残ってる本もあるから、継続で生き残れる本もあれば、新しい本に置きかえられちゃう本もあって。この本はね、多分置きかえられちゃった本だと思う、ほかの本に。それで、捨てるのもなっていうので、Takramに持ってきて置いてある。

太田 Takramの本棚見ると、2軍にいるいい本が埋まってるっていうことですか?

田川 うん、そうだね。二冊目は、『世界を変えた20の科学実験』、出版社は産業図書、ハレさんっていう、これ何人かな?が元々書いたものですね。これはね、タイトルの通りで、僕らが生きてる世界を作ってきた、いろんな科学的な発見っていうのはあるんだけど、例えば物理学的な話もあるし、科学の話もあるし、はたまた例えば重力の発見とかね、星を発見したとかそういう天文学的なこともあるし。いろんな人がいろんなアプローチで自分の考えたことを試して、その試したものっていうのが、誰がこうやっても再現できるっていうことで、その自分の考えた仮説っていうのが、理論として正しいだろうってことを証明するためには、実験をしなきゃいけないわけよね。

だから再現可能性っていうことを、実験で確かめていくんだけど。だから科学者たちっていうのは、実は理論を考えるってことと、実験器具を作るっていうことが、仕事としてはすごく大事なのよね。それが理論と検証っていう。大体その理論で考えた仮説っていうのは、実際実験してみると、理論通りに結果が出ないっていうことが多いわけよね。往々にしてそういう感じで。それで、「なんでこんな結果になるんだろう」って、「思ってたのと違うんだけど」とかいうことをよく観察して、そうするとそこの実験の結果が指し示す情報の中に、自分の理論面の間違いを訂正してくれる情報とか、あとは自分の理論が着目してなかった新しい現象っていうのがあったりして。

さらにそれを深く掘っていくと、自分が元々の仮説で考えていたものよりも、もっと大きな仮説とかっていうのが、そこから見つかったりしてっていうことで。だから理論と実験っていうのは、常にお互いがインタラクションして、行ったり来たりしながら、お互いの完成度が高まっていって、最後は自分の理論が示唆するっていうか、予言する結果っていうのが、実験器具によって完全に再現されるっていうところまで、理論面と実験、検証面もブラッシュアップしていくんだよね。そのいわゆるプロセスっていうのが、Takramでやってる具体と抽象とか、プロトタイピングとコンセプトメイクを同時にやるとかっていう、その振り子的なものと基本的には同じなのよね。だからTakramのプロトタイピングって結構特殊なのかなとか思いきや、全然そんなことはなくて。すごくオーセンティックな、いわゆる真っ当な手法だと思ってるのね。

論文書いたりする人っていうのは、基本的にそれを両方やって、本当のことっていうのを発見していくっていうことなので。だからそういう意味で実験、過去の偉大の科学者たちがやってきた実験っていうのを、歴史本としてまとめたいい本って、何冊かあって。俺が1番好きなのは、『世界で最も美しい10の実験』っていう、それは挿絵もすごいきれいで。例えばガリレオがどうやって実験、玉を落としてやったかとか、玉転がしてやったかとか、そういう話。

太田 これですか?

田川 そうそう。そういうのがすごく文章も読みやすくて、挿絵もきれいで、っていうのもあるし。それと被ってるのもあるんだけど、被ってないものを収めてるのが、このハレの『世界を変えた20の科学実験』で。ここも体裁としては近いんだけどね。いろんな挿絵、当時どんな風景で、どんな器具で実験やってたのかとかいうようなものが、結構あるわけよ。昔の人たちっていうのは、本当に加工技術も今みたいには整備されてないし、そういう中でも精度の高い実験をするために、めちゃくちゃいろんなことを考えてるわけよね。なんか妙に実験器具が大きいとか。俺がすごいと思ったのは、重力定数っていうものを発見しようとした人がやった実験。

太田 この中にありますか?

田川 この中にはないかな。『世界で最も美しい10の科学実験』のほうかな。なんかね、巨大な鉄球を小屋の向こう側につるして、それを双眼鏡で観察しながら動きを見る、みたいな物とかね。

(つづきは↓からどうぞ)

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