TakramCast「Design Engineeringとは #3」

デザイン・イノベーション・ファームのTakramが毎週2本のペースでお届けしているポッドキャスト「Takram Cast」。今回は、Takramの中軸を成すDesign Engineeringについて語るシリーズの第3回。Takramの田川と緒方が、具体的なプロジェクトを例に取りながら、デザインとエンジニアリングを同時進行させるプロセスについて語ります。

( トークの導入部分は省略して、佳境に入ったあたりから抜粋 )

田川 前回のやつを聞いてみて、歴史の話とか、なんで今二つもってるってことにどんな意味があるのかみたいな、抽象度の高い話が前回あったんで。今日は僕の方が聞き手になって、緒方くんがやってきたプロジェクトを少し具体的に例をとりつつ、どんな流れでプロジェクトをやってたのかっていうことの解説の節々に、そのデザインエンジニアリングがどうとか、デザインエンジニアとしてどう動いてきたのかっていう話が聞ければと思います。よろしくお願いします。

緒方 はい。よろしくお願いします。

田川 Takramでも大きく二つちょっと質の違うプロジェクトがあって。一つはクライアントワークで、僕らがクライアントの皆さんからお願いを受けて作るパターン。それと自分たちでいろいろと開発とかをやったりっていうものと二つあると思うんだけど。今日はその中でも主に、緒方くんが長く手がけてきてる「ON THE FLY」っていうプロジェクトを例に取りながら、いきましょう。

緒方 はい。

田川 「ON THE FLY」については、Takramのウェブの上にいくつか事例があるので、それを聞いてる人には、興味がある人には見てもらいつつ。まず、「ON THE FLY」がなんなのかっていうことをちょっと解説してもらいましょう。

緒方 はい。「ON THE FLY」と言っているシステムは、簡単にいうと展示のためのインターフェイスですね。いろんなサイネージみたいなもの、いろいろあると思うんですけど。まずテーブルがあって、テーブルに上から映像がプロジェクションされているんです。そのテーブルの上に紙のカードを置くと、その紙のカードの位置とか種類とかを上からカメラで認識して、そのカードにぴったり合わせたかたちでいろんな映像がカードの上に映ったり。そのカードに穴が空いてるんですけど、その穴を触ることで、それがスイッチになって、いろんなコンテンツを切り替えたりとかっていうことができるっていう、インタラクティブな体験型の展示のシステムです。

田川 緒方くんが元々スタートしたのは、エル・イー・ディーの時代だもんね。

緒方 そうですね。山中さんのところにいたときに、そういう意味ではいきなり最初、自主開発ではなくて、最初クライアントワークだったんですね。クライアントはYCAMですね。

田川 YCAMね。そうだね。

緒方 2008年ぐらいかな。YCAMでミニマムインターフェース展っていう展覧会があって。まずはインターフェイスっていうのがテーマの展覧会っていうことで、会場のナビゲーションでも何か新しい試みができないかっていう相談をされた。それだけだったんですね、お題としては。何か新しい展覧会の体験、ナビゲーションの体験っていうのが、インターフェイスっていう観点からできないかっていう相談をされた。本当にいろんなどういうものを作るかっていうのをゼロから考えはじめて、いろんなアイディアあったんですよね。

例えば、会場の中にスイッチみたいなのが、いろんなところに点在していて、そのスイッチを押すと、会場の中のどこかのサインが光って、こっちだよと教えてくれるとか、いろんなことを考えていて。その中で出てきたアイディアを実現したナビゲーションシステムっていうかたちで。最初に考えていたのは、展覧会の中で、ワイカムって作品がいろんなところに点在してて、その会場の中にいくつかナビゲーションのための場所があって、そこに来た人がどういうものが展示されてて、それがどこにあるのかっていうのを指し示してくれるようなものっていうのを考えていたんですね。

最初は「スイッチ」っていうのを考えていて、そういうふうに物理的なスイッチがあって、押すと次どこって、どこかで何かが反応してるっていうようなことを考えていて。その中で展覧会のチラシとかグラフィックのデザインを、GOOD DESIGN COMPANYの水野さん。

田川 あ、水野さん。

緒方 そうなんです。水野さんがやることになって。水野さんと打ち合わせをしたりしてて、インターフェイスってなんですか、みたいな話になって。インターフェイスなんで、フェイスとフェイスの間です、みたいな話からはじめてって。そのときに水野さんの方から、「この紙の表と裏の間になんかあるんですね」みたいな、すごいざっくりとしたイメージの話になって。じゃあ、ここに穴を空けると面白いんじゃないかっていう話になった。

田川 そこから来てるんですね。

緒方 そう。で、それで逆に、そういうポスターとかチラシに穴を空けましょうかっていう話が先に実はあって。

田川 なるほど。

緒方 そのときにこれ自体をインターフェイスして使えたら面白いんじゃないかなって逆に思って、そういう方法、スイッチっていうのを考えてたっていうのと、その展覧会のグラフィックとして紙に穴を空けるっていうことが組み合わせる。

この穴をスイッチにするとかっていうのができるんじゃないかっていうのが最初のきっかけで。デザインエンジニアリング的な観点で話をすると、最初に作るものを決めて、それを作ってくっていうアプローチだったら、絶対に生まれなかったなと思うんですよ。物理的なスイッチを使う、いろんな仕組みを考えたりしていて、でもその途中でそういう新しい要素っていうかが出てきたときに、それをまたエンジニアリング的にこうやったらできるかもしれないっていうのが、同時に思いついたというか。で、その穴を使うにはどうしたらいいかっていうことを考えたときに、その赤外線をカムで使うとか、穴のシルエットをとると紙の位置が分かるんじゃないかとか、そういうことを使って実験したりとかっていう。

田川 テーブルに再帰性反射材が貼ってあるじゃない。再帰性反射の仕組みとかって、穴をアイ・ディー・イーにできるんじゃないか、あと、いわゆるカメラでトラッキングできるんじゃないかっていうところから、赤外線カメラと紙の上に空けられた穴と、それを反射、コントラストとるために、再帰性反射材を使うっていうところまでは、それって同じタイミングで思いついたの?

緒方 ほぼほぼ同じタイミングですね。で、エンジニアリング的なことがすごい大事だなと思うのは、いわゆるモーションキャプチャっていうのは、赤外線カメラを使って赤外線を照射して、体に、今回アスリート展覧会に使われてるやつですけど、いわゆる体にマーカーをたくさんつけて。その全身タイツみたいなやつに点がいっぱいついてるやつで、アクターが踊ったり、アクションしてる、みたいなシーンは、どっかで見たことあったりするじゃないですか。

だけど、あれが技術的にどういう仕組みで点の位置がとれているのかっていうことを知ると、実は全身タイツについてるポイントに、その再帰性反射材っていうのがくるまれていて、カメラから赤外線出すと、それが反射して光って見えて、その点の位置がとれるということなんで。その原理が分かっていると、点が物理的にポイントじゃなくてもよくて、全体が再帰性反射材でテーブルが覆われてて、そこに紙が置かれてると、まず紙がシルエットになりますと。

田川 黒になりますと。

緒方 黒になりますと。その中で穴が空いていると、それがこう点に見えて。

田川 光って見えます。

緒方 光って見える。

田川 再帰性反射材だけがそこから抜けて見えるからね。

緒方 で、同じことができるんじゃないかっていうのが、そこの技術的な原理を知ってるっていうことで思いついたっていう。

田川 その原理は、この話になる前から、緒方くんは知ってたっていうことだ。

緒方 そうですね。

田川 デザインエンジニアリング的な話でいくと、最初水野さんとの会話の中で何かインスピレーションがあって、それってこうやって実現できる、しかもそれって再帰性反射材の、みたいな具体的なところまで頭の中で思いついた後、多分すぐにプロトタイプ作ると思うんだけど、最初のプロトってどんなプロトなの?

緒方 最初は、そのときはまず、カメラ。

田川 カメラの選定?

緒方 選定。で、そのときに僕は、その前に1回使ったことがあった赤外線のデバイスがあって。それはゲーム用のコントローラーみたいなやつで、帽子とかメガネとかに再帰性反射材のシールみたいなやつを貼るとヘッドトラッキングができるようになるっていう。

田川 ディスプレイ側につけとくみたいな。

緒方 ディスプレイ側にそのセンサーをつけて、そうするとその点をトラックしますよっていうデバイスを、昔使ったことがあって。それは赤外線カメラではないんですけど、あのメーカーは何か作ってないかなと思って。それがOptitrack。

田川 そのときって、あれ、今Optitrackって何フレームぐらいで撮ってるんだっけ?60?

緒方 今は、120フレームですかね。

田川 120でしょ。当時から120フレームぐらい撮れてたんだっけ。

緒方 そうなんですよ。そこはあまり変わってない。

田川 解像度が荒かった?

緒方 解像度も、もちろん、もっと高解像度のが今は出てるんですけど。ベースで使っている「ON THE FLY」に今、使っているやつも変わらないです、その当時から。

田川 そうなんだ。

緒方 ハードウェア的に。

田川 だいぶ、だから先行ってたんだね。その当時からね。

緒方 そうですね。あとは安い。モーションキャプチャの世界では価格破壊だったんで。それまで2,000万とか何千万とかしてたのが100万ぐらいで一式そろうみたいな。それを普通はスリー・ディーで撮るわけですよね、モーションキャプチャの人の動きを3次元に撮るわけですけど。それもカメラ1台だけ使うと、普通はだから6台ぐらい使って3次元に撮るんですけど、これって1台だけ使えば、すごいフレームネットの高い赤外線カメラになるじゃんっていうのも、そこの原理を知ることで、そういう使い方ができるんじゃないかっていう。原理を知ることで、ピュアにその技術の使い方の幅が広がるみたいな。

田川 自分の引き出しの一部にできる。

緒方 だから、モーションキャプチャはモーションキャプチャで、人の動きを撮るもんだっていうことしか知らないと、多分思いつけないのかな。

田川 原理まで一応理解しておくと。その最初の初号機のプロトで思ってたように動いたの?

緒方 意外と基本、可能性を感じるレベルには。

田川 わかる、わかる。それすごい分かる。位置とかあんまり合ってないんけど、いける感触と手応えはつかめる、プロトタイプ。

緒方 それもすごい大事ですよね。

田川 大事ね。その先に可能性がどれぐらいあるかでしょ。

緒方 最初作ってみたときに駄目だなと思うか、すごい荒いんだけど可能性あるなって思うかどうかっていうのが、その感覚がすごい大事ですよね。それが、単純にエンジニア的観点でもなくて。エンジニア的観点って、駄目なとこが目につくじゃないですか。よく企業のエンジニアの人とかも、自社の開発しているものって、基本は課題を潰していく作業だったりするから。ここが駄目なんですよ、とか。そういう駄目なところをどうやって解決するかっていうことをすごい考えてるから、すごいネガティブなんですけど。そうじゃなくて、この荒い中に見い出せる何か、これ面白くなるんじゃないか、みたいな。ここはすごくポイントですね。

そのときは位置とか、そんなに精度まだ合ってないんだけど、とにかくそのレイテンシーがすごいつく、そのウェブカメラとかでやる世界と全然違って、テーブルの上に置いたカードも、すごい速く手で動かしても、ぴったり吸い付くように動いてくみたいなところが、カメラのポテンシャルとしてある。

田川 そうね。ペンタブレット作っている人たちと話してたときに、ペンタブのフレームネットってだいたい200から300ぐらいの間なんだよね。テレビがだいたい30フレームぐらいでしょ。ビジュアル見てるだけだと30フレぐらいで結構いいんだけど、アイフォンが60フレームだよね、多分タッチパネルの追従が。それの倍の120、本当は240とか。マイクロソフト・リサーチの研究で、タッチパネルの。

緒方 1msecみたいなやつね。

田川 そう、そう、そう。1msecでついてくるやつとかって、違うあれだよね。

緒方 そうですね。あと、石川研。東大の石川研究室の。

田川 あの、なんて言うんだろう、「ON THE FLY」見てて思う話と、緒方くんが今言ってた、「技術観点だけじゃないんですよ」って言ってるところって多分、体験の質の部分で。あれってアナログとデジタルとか、結構マジカルの、入れ替わってしまう体験の中のすごい自然さって大事じゃない。その自然さって何って言うと、デジタルとデジタルじゃないものの自然さの質の違いって、やっぱり遅れがないとか、俺たちの物理世界って時間遅れないから。それが多分120フレっていうところに可能性を感じたっていう話は、すごいそうだ。あれ60フレームとかだとちょっときっついかなと思ったり。

緒方 遅れてくるみたいな感じ。

田川 それを、あれだよね、プロトをプレゼン。プレゼンっていうか、みんなにシェアしたのか。YCAMの人たちとか。

緒方 そうですね、うん。でもまあ結構、そのプロジェクトは割と任せてもらってたんで。

田川 もはや、現場で出来上がったものを見な、みたいな。

緒方 ムービーとかを撮って送ったりしながらやった気がしますね。山中さんのところのスタジオで、仮説で作って、試してっていうのをずっとやってまして。

田川 それで展示をして。そこから「ON THE FLY」ってもうあれだよね。なんだかんだ10以上のプロジェクトで使ってて。

緒方 そうです、そうです。10ぐらいは。

田川 まだどんどん使われてるもんね。今でもね。

(つづきは↓からどうぞ)

ちなみに、Design Engineeringシリーズの第1回と第2回はこちら。

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田川欣哉 (Takram)

Takram代表/デザインエンジニア/Twitter: @_tagawa/デザイン・テクノロジー・ビジネスを駆使するデザインイノベーションと呼ばれる仕事をしています。UI・UX・プロダクト・ブランディングなどなど。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート客員教授・名誉フェロー。

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