ゼノブレイドDEの感想(後編)

※この感想には、一部ゼノブレイドDEの軽度のネタバレが含まれます。が、具体的な言及は避けているので、よほど気にされる方でなければ未プレイでもお読みいただけると思います。

思えば、しっかりした国産RPGをプレイするのはひさしぶりのことだった。ガッチリと取り組むレベルでのプレイで考えれば、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド以来だったかもしれない。ちなみにブレワイについては、数百時間を余裕で溶かすほどにハマりこみ、コログコンプは果たせなかったものの、ほこらとサブクエストコンプはしっかりとさせてもらった上に、追加コンテンツも楽しんだ。おそらくは仕事にも支障があっただろうと思うけれど、これには悔いはない。だっておもしろかったもの。

本題に入る。ゼノブレイドをプレイする前、前知識はなるべく入れないようにした。世界観を含めて、驚きが損なわれれば感動は減ってしまう。だから、巨神界や機神界、そして大きな巨像を大地にして様々な人種が街を作り生活をしているという設定には度肝を抜かれたし、細密に描かれた世界を歩き回る際には美しさに何度もため息が出た。リマスターという話だったけれど、ここまでくればもうリメイクといっていいだろう。UIからキャラからすべて美しく描き直され、大本のWii版とはまったく異なる雰囲気のゲームに生まれ変わっていた。

互いに大切なものを賭け、中盤以降に何度も起こるどんでん返しで心を揺さぶられるストーリーとキャラクターの妙など、最後までおもしろさがしっかりと持続し、実に楽しいゲーム体験だった。サブクエストも、ただ付けましたという感じでは一切なく、そのクリアによってマップの一部が開放されてゲームの進行が楽になったり、情報として明かされていないものがそこで初めて明らかになったりと、ここもやらなくてはという意欲をかきたてられる素晴らしいできだったと言える。

気になった箇所がなかったわけじゃない。ストーリーについては、やや力押しで進めるように見えた部分もあったし、説明を脳内で補完した箇所もあった。慣れてくると楽しいバトルも、ドラクエからのコマンド式ターン式に慣れたおじさんには、若干ハードルが高いように思えた。敵キャラの、特に巨神界からの寝返り組については、行動理由をもっと深掘りしてくれた方が、より思い入れ深くプレイできたのになあと感じた。サブクエやキズナトークで補完はされるのだけど、そのまま本編のみのプレイだと、ザ・悪役という感が強くて、敵キャラにも理由を求めたい欲望の強い僕にとっては、ちょっと食い足りない感じが序盤はあった。それと、DE版になってからキャラがアニメっぽいトーンになったのは個人的に歓迎なのだけれど、モンスターはリアル志向で描かれているのでギャップがあり、虫系のモンスターなんかは人によってはちょっとしんどいのかもなあ、と思った(蜘蛛とかアリとかちょっとエグめだよね、それがまたいいんだけど)

だけど、そんな気になる部分もまるごと飲み込めるぐらい、ゲーム本編のおもしろさは突き抜けていた。何度も書くようだけど、フィールドの壮大さとそれにともなうBGMの美しさは出色で、ここだけでもお金と時間を費やす価値があると言っても過言じゃないレベルだった。

総プレイ時間は約100時間。まだ追加シナリオはプレイ完了していないので、サブクエの消化も含め、120時間ぐらいでフィニッシュするのではないかと思う。終わるのがさみしくなるプレイ体験だった。これからやろうとしている方には全力でお勧めしたい。2022年、最初にとてもよいゲームをプレイできて嬉しかった。ありがとうモノリスソフト。ありがとう任天堂。

ここからはゼノブレイドに直接関係のない余談である。
僕はここ最近、ゲームの続編というものに延々裏切られている。続編がつまらなかったというわけじゃなく、続編が「出ない」という裏切りだ。逆転裁判、MGS、GTA、ドラクエビルダーズ、のめりこんだゲームのほとんどが、何らかの理由で続編を絶たれ、やり場のない思いを抱える羽目に陥っていた。

続編を楽しみにして、ファンで集まって一斉にプレイする、というのはゲームを愛する人間にとって格別の楽しみの一つだ。かつて、僕にはそういったタイトルがたくさんあった。中でももっとも楽しみにしていたのがFFだった。FF3で衝撃を受け、FF4でサントラを聞き込み、弟といっしょに昼夜問わずプレイしたFF5、FF6、発表直後のジャンプをコンビニで見て先輩と叫び声を上げたFF7など、その体験はずっと僕の中で特別なものだった。

しかし、FFはその後、次第に様式を変えていった。13まではリアルタイムでプレイしていたものの、14は苦手なオンラインになってしまったため、そのすさまじく高い評価を耳にして気にはなっているものの、結局その波に乗れずじまいだった。何をそんな気にしなくても、と苦笑する方々もいらっしゃるかと思うが、元々、オフラインでゲームを始めた時代の人間にとって、オンラインゲームというのはただそれだけでハードルが高いものになってしまうものだ。買い切りで、誰にも束縛されず、自分だけでプレイできるゲームというのは、僕らの世代にとっては代えがたい宝物なのだ。

僕が改めてゼノブレイドを始めたのも、そうした経緯があったからだ。このタイトルには未来がある。そしてスタイルはオフラインで、内容もどこか懐かしさを覚えるものだ。続編も期待され、その噂もいい形で広がっている。近い将来、発表があるのではとも言われている。国産RPGのビッグタイトルという、失われかけていたものを補ってくれただけでも、僕はこのタイトルをプレイした意味があったと思っている。その点でも、すごく感謝している。

だけど、そこに怖さも感じている。昔に比べて、RPGのタイトル数はわかりやすく減った。オフラインで、新作が常に発売されるという安心感を伴うタイトルとなると、DQやFFではなくポケモンへと移り変わった感がある。第1作目の赤・緑の際にすでに大学生だった世代の僕としては、そのおもしろさは理解するものの、どうしてもハマりきれないポケモンに対し、周囲の盛り上がりにちょっと切ない思いを感じたりもしている。今から作品を追いかけたところで、幼少期に夢中になってプレイしたその体験は、二度と得られないからだ。

ゼノブレイドや、Pシリーズ、そしてDQFFゼルダと、これからも続編が出るだろうシリーズはまだ残っている。だけどいつか、こうしたJRPGがすべて代替わりし、置いていかれる時期が来るのかもしれない。そのときに、新しいものを摂取する程度におじさんの気力体力が残っていればいいのだけれど、もしかしたらそこで、僕のゲームの歴史は絶たれてしまうのかもしれない。

願わくば、そのときがやってきたとしても、新しいものを指さして「昔はよかった」と言うような爺様にはならないでいたい。楽しいものはあり続け、僕らが老いただけなのだから。