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奪い合えばなくなる、分け合えば余る

「どーぞー!いらっしゃっせー!」
「味玉そば一丁入りまーす!」
「ありがとうございました!素敵な1日をー!」

目をつぶればすぐに思い出せる賑やかな営業風景、粉っぽい匂い、汗で染みた父のTシャツ。

そう、僕の家系はラーメン屋だ。

それも、70年続く歴史のあるラーメン屋。
一般的な「会社員」ではない。

私はこの春から、晴れて会社員1年目になる。
大学3年で就職活動を終え、一足先に「半会社員」として内定先でインターンを始めた。

「会社員ではない父」と、「会社員になっていく私」について綴ることにした。

#粉まみれの戦士。父からの教え

父のラーメンは天下一品。麺から自分で作り、こだわり抜いたスープと食材で創り上げる一種の芸術ともいえるほど美しい。(以下画像添付)
「ラーメン100名店」にも7年連続で選出され、地元で知らない人はいないどころか、ラーメン業界に名を馳せている。

ラーメンは天下一品。一方、父は・・・。

粉まみれ。

経営者になってからその風貌は隠しているが、僕の知る父は粉まみれの戦士である。
授業参観にも粉のついたユニホームで来るし、僕のバスケの試合を見に来ても1試合すべてを見切ったことは一度もない。

朝は8時には家を出て、仕込み含め帰ってくるのは夜中の2時。
家族を幸せにすべく、また代々続くラーメン屋の威厳を保つべく、ラーメンの粉を全身にまとって汗水を垂らしていた。

今でこそ、多店舗経営になり粉をまとう姿は少なくなったが、沢山の荷物を背負って戦い続けている。

そんな社会の常識、当たり前の概念から外れたところにいる父だが、常に言い続けてくれたことがある。

奪い合えばなくなる、分け合えば余る。

何事も奪い合おうとするとすぐになくなってしまうが、分け合い助け合う姿勢でいれば余裕ができてハッピーになれるというメッセージである。

思い返すとこの言葉は、バスケ、ボランティア、留学環境、大学、仕事。
どの場面でも私を後押ししてくれたし、いつの間にか自分を象徴する言葉にもなってきている感覚がある。

実は最近、インターンとは別に父の仕事を手伝い始め、共に働く時間が増え
ている。

「社会に出る前に、”働く”ってことを教えてやる」
と、ラーメン屋開業を手伝わせてくれたのだ。

父は「会社員」ではないが、これから「会社員」としての道を歩む私に、とんでもなく大きなものをくれた。

天下一品。父のラーメン。

#私の仕事論

本来、私は4代目としてラーメン屋をついでもおかしくない存在。
きっと継いでほしいという思いはあるもしれないが、一先ずファーストキャリアは自由な選択肢を与えてくれた。

そうきたからには自信の進路選択には人一倍の意思と意図をもって行いたい。義務感ではなく心の底からそう思い、就職活動には真剣に向き合った。

就職活動をしていく中で定めた
「仕事を通してしたい価値提供=仕事論(=ビジョン)」は、

仕事が原因で私生活に悪影響を及ぼす会社を無くしていく

というものだ。
先述した父との関わりや家庭環境も関わっている。
また、アメリカ留学時のホームステイ先家族をモデルに、上記のような仕事論を掲げた。

現状、日本では「会社員」というものに正直ネガティブな思いを持つ人の方が多いと思うが、その仕組みから変えていけるようなインパクトを社会に与えていきたい。

壮大なテーマであることは百も承知だが、この春私が入社する会社はその可能性を最も秘めていると考える。
商品もそうだが、何よりも一緒に戦う仲間の存在が大きい。

成果・ポジションの奪い合いではなく、一つの組織ミッションに向けて苦労を分け合う文化が自分ともマッチしているし、その点に「会社員」の本質を感じる。

この1年間、会社員0年目として業務に向き合ってきたが、
一人では大きな成果を成し遂げられないし、成果を追うガソリンも足りなくなる
ことに気が付いた。

色んな人との関わりの中でナレッジを吸収し、高め合い、成果を追い求めたときには、理想以上の成果が出たこともある。
それだけでなく、自分が得た収穫物を周囲にも分け合った結果、組織力の強化にもつながった。

奪い合えばなくなる、分け合えば余る。
父からもらった大切な言葉は、この先もずっと大切にしていきたい。


#会社員でよかったこと

父のことを「戦士」と書いたが、「孤独な戦士」と表記するのが相応しいかもしれない。
今でこそ共に戦う社員さんがいるが、期待・責任・重圧と言う面では常に孤独感を感じる。

情報格差=出会いの格差
とも感じるところがある。分け合いたくても分け合えない環境は絶対にあるだろう。
これから「会社員」になっていく私は、”出会い”を提供できる会社に行きたいという思いもあり、現在の会社に意思決定を下した。

「会社員」ではない父の姿を常に見て、
「会社員」でよかったことは、
手を差し伸ばし、一緒に頭を悩ませ、目標に向けて汗まみれになれる仲間がいること。

そして、そのことに若くして気づけたことには父に大きな感謝を伝えたい。

「会社員」ではない父が教えてくれた、
「会社員」として生きる上での心得。
奪い合えばなくなる、分け合えば余る。


6個しかないピノも、分け合うと考えると6個もあるってなる。笑

#会社員でよかったこと

最後に、note様、素敵な企画をありがとうございます。
様々な想いでみなさん「会社員」として生きていて、他の方の記事を読むのも楽しくてたまらないです。

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