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アイシードール問題について①


はじめに

この記事は当店のSNSアカウントで過去に投稿した内容を元に再編集してまとめたものです。SNSで一瞬話題になってもすぐに埋もれてしまうので、記録のために作成しています。
またドールオーナーとしてショップのオーナーとして、ある程度の事情は推察できるもののメーカー側の人間でもなく、専門家でもないため、誤った情報が含まれる場合もあります。訂正が必要な箇所があればご指摘ください。
そしてみなさんのフォローやスキ!が励みになります。

ドールを扱う店としてのスタンス表明

当店は株式会社グルーヴが発売する1/6スケールのファッションドール「プーリップ」を扱う個人商店です。
そしてオーナーの私は、ファーストドールは幼稚園時代に買い与えてもらった二代目リカちゃん、その後ジェニー、中学高校時代のブランクを経て20代の頃に出会ったプーリップの20年来のファンであり、長年プーリップのカスタムも趣味として楽しんできました。

そんなオーナーが営む店なので、
当店の基本スタンスはドールのジャンルやメーカー問わず
『うちの子かわいい、よその子かわいい』
『ドールの楽しみ方はみんなそれぞれ』ですが、
アイシードール、ICYドール、ファクトリーブライスと呼ばれるもの、それ以外にも製造メーカーや発売元が特定できないコピードール、模倣品、リキャスト、海賊版など(その疑いがあるものも含み)他社の権利侵害やその恐れのあるものについては店内への持ち込みを禁止させていただきます。
ご自分が製作された作品の世界観を伝えるためのモデル、カスタム練習用としてのコピードール使用も反対の立場です。

当店はブライスの取扱店ではありませんが、近いスケールのドール取扱店として主にアイシードールと呼ばれるドールの氾濫に危機感を持っています。

私はブライスオーナーでも取扱店でもないので、
これまではあくまで個人の見解として、対面接客させていただいた方だけに直接お伝えすることに留めていましたが、
今回 強く広くアイシードール反対の立場を表明した理由の1つとして、徳島県には当店以外にファッションドールを扱う店がなくカスタム品を含むアイシードールの持込み修理相談が度々あるからです。

本来なら売り主がアフターケアや保障すべきなので丁重にお断りしますが、模倣品がベースになっていることやカスタム品のリスクを知らずにファーストドールとして購入している方も多く、説明を聞いてがっかりされる顔を見るととても悲しい気持ちになります。
そして同時にそういう知識の乏しさにつけ込んで儲けている業者、個人に対して強い憤りを感じます。

アイシードールお断り

なぜアイシードールがダメなのか?

ブライスの偽物流通のはじまりは一昔前の中国の生産工場からの金型流出だといわれています。
当然、正規品を作る工場で使用されていたものなので(樹脂の原材料の配合は異なったとしても)、限りなく本物に近い偽物を容易に作ることができます。それがいわゆるファクトリーブライスと呼ばれるものです。


ドールに興味の無い方には理解が難しいかも知れませんが、
カスタムブライスは量産された正規品にはない魅力があり、人気作家さんのものとなるとかなりの高額で取引されることもあります。
そしてカスタムの過程でフェイスパーツを削ったり、盛ったりする改造、さらに関節が可動するボディなど他社ボディに交換することもあるので、カスタムされたブライスが元々正規品として販売されていたものがベースなのか信用の担保がそもそも低い(ちゃんとカスタムの過程を記録して証明をされている方もいます)。
ならばわざわざ数万円する正規品を使ってカスタムしなくても、原価が安い偽物を使ってもバレないんじゃないか…儲けの幅も広がるし…という詐欺まがいのファクトリーブライスを使ったカスタムが密かに横行していたのではないかと、ブライスに詳しい方のお話から想像します。


余談ですが、20数年前に父親の仕事の関係で何度か上海を訪れたことがあり、そこで巨大な偽物市場を目にしました。
そこには間口が2mもないような小さな店がひしめき合い、ブランド品、キャラクターグッズにはじまり、家電、生活雑貨、果ては食品、酒、タバコまでありとあらゆる偽物があふれていました。
工場でB品として検品でハネられたブランド品(ブランド保護のため本来は焼却処分する契約になっているはずのもの)の流出はまだマシな方で、偽物にもランクあり、原料を工場から横流しして素材は本物だけど正規工場以外の場所で勝手に作られたもの(ご丁寧に刻印やギャランティの偽造しているものも)など、かなり本物に似せる努力をしているS級品と呼ばれるものから、正規品とは似ても似つかないような粗悪品まで。値段もピンキリ。
若かった私は偽物市場の広大さに圧倒されつつ後学のために見て回っていると、「日本人はたくさんコピー品買ってくれる。あなたもコピー品好きでしょ?何でもあるよ!いっぱい買って!」と日本語で話しかけられた時は言葉が出ませんでした。
最近は偽物の取引きは当時に比べれば厳しくなり表立った偽物市場は閉鎖されましたが、SHEINやAliExpressにそのDNAは引き継がれていると感じます。


そして、2次コピー、3次コピーとコピーのコピー、そのまたコピーが出回る過程で誕生してしまったのがアイシードール。(そして厄介なことにアイシードールにもいくつものタイプや派生があり、正規品とのわずかな造形の差を理由に「偽物ではない」と認識している方もいらっしゃいます)

それがネット通販やスマホの普及によって全世界で売買されるようになり、日本ではこの後のメ〇カリ、mi〇neに代表されるような個人間売買プラットフォームの登場によっても爆発的に広まりました。
(これは偽ブランド品にも言えることで、最近はフリマアプリにスーパーN級品と呼ばれるほぼ見分けのつかないものも出回っています)

ネットの情報の恐ろしいところは、
その情報が本当に正しいかどうかではなく、検索上位にあるかどうかや、賛成反対どちらかの意見を多く目にするかによって「その情報が正しいと思い込んでしまう」、「自分の意見を正当化する材料にする」という力が働くところです。
そして、アイシードールに関してはSNSなどを中心に肯定派、否定派の個人見解は断片的に話題に上ることはあっても、それが一体どういうものなのか、なぜだめなのかをキチンと個人が判断できるようなある程度まとまった情報を見つけることが難しい。
でもそれをしないと、いつまでもアイシードール問題は解決することなく、その見た目からアイシードールをブライスの廉価版だと勘違いしたり、物議のあるドールだということを知らずにお迎えしてしまう不幸なドールオーナーを増やしてしまう…。
だから私は自分の意見を発信しようと考えました。

私のこの正義感の使い道が正しいかどうかはさておき、
企業が特定の商品やサービスに対して権利侵害である!と訴えることは、それを証明する過程で大変な労力を伴うので、よっぽどの実害や損害がなければ「問題は認識しているがそっとしておく」というのはよくあることかと思います。
だからといって偽物が流通していい理由にはなりませんし、そういったものを流通させないために消費者は賢い選択をしなければいけないと思っています。
企業の利益を守ることは自分の好きなブランドや製品、サービスを守ることに直結します。
逆の言い方をすれば、企業の利益が侵害される偽物の流通は自分の好きなブランドや製品、サービスを破壊することに直結します。
偽物しか残っていない世界。
想像するだけでゾッとしませんか?

この記事のさいごに

私はアイシードールに対して否定的な意見を持っていますが、それを押しつけたい訳ではありません。
近年、ようやく権利の保護についての議論の動きが出てきましたが、法整備もまだまだ追いついていない状態なので司法の判断も難しい分野です。国によっても違います。全くのグレゾーンの話なので白黒はつきません。

これに続く記事を読んで、みなさんそれぞれが「アイシードール」について考えるきっかけになればいいと思っています。

続きは次の記事で…。

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