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[落語]配信を加速させたキーパーソン

「多様な配信①」の続きを書こうと思ったが、あくまで私視点による、2020年からの落語家による配信がここまで加速した経緯を書き残したいと思う。

桂紋四郎さんと「おはよう落語」

コロナ禍以前は、Youtubeチャンネルを持っていても趣味程度ぐらいの更新がほとんどだった落語家の配信。相次ぐ落語会の中止でも、当初は動画配信を活用する気配はなかったように思う。

その中でいち早く配信を多角的に活用したのは桂紋四郎さんである。
彼は東京と上方、両方で活動していることもあって、必然的にリモート対応を考える状況にあったのだろうが、それだけでなく、もともとのクリエイティブな素質を遺憾なく発揮され、Youtubeチャンネルを地上波TVのように扱うなど柔軟に使いこなされていた。
その一つが桂華紋さんとの「おはよう落語」である。

毎朝6時ぐらいから生配信をスタートし、落語ネタを3分で話す「3分落語」や、料理の特異な華紋さんの「さっと一品」などのコーナーを設け。またチャットを通じて会話したり、前日にテーマを決めて募った写真を紹介したりと、視聴者との双方向性コミュニケーションで進行。1時間程度で納めている。まるでNHK朝の番組のような構成。いや、チャットを通じての視聴者とのやり取りは地上波を超えていると思う。

桂華紋さんも自身のチャンネルを立ち上げられ、料理配信をされるなど、落語に収まらない活動をされ始めた

上方落語協会が動く

彼らのこのような活動は瞬く間に他の若手落語家に波及し、初めてチャンネルを開設したり、機材を揃えたり。すでに動画の体制は出来ていた者は生配信をし始めるといった動きが出てきた。

その動きを見て、即座に反応したのが上方落語協会である。
会長の笑福亭仁智師匠が比較的フットワーク軽い方だったのもあって、繁盛亭から、日替わりで落語ネタ、色物紹介、公開稽古(!)などを配信し始めた。(開始当初、仁智師匠も「紋四郎君の活動に刺激を受けた」と仰っている)

開始直後は上方落語協会所属のみだけであったが、米朝事務所、吉本興業、松竹など他事務所所属の落語家とも後々コラボレーションするなど、活動範囲を広げられ、関西での配信活動は一層加速していった。

一方の東京では

上方とは異なり、もともと配信はしていたり、ITに強い落語家が個人単位で動画配信をしていた。
真打ちはどうしても協会の壁があるようだが、二つ目クラスはそれぞれの伝手・人脈で協会(落協、芸協、円楽党、立川流)を超えて、チャンネルを持っている落語家の配信に出演し、その配信で得た投げ銭も分け前を貰っていたようだ。

そんな中、もともと個人で配信しつつ、桂紋四郎さんと配信で相互出演など交流されていた林家けい木さんが中心となって、すべらない話の真似事などを生配信されるようになった。

ZoomやLINEなどのコミュニケーションアプリがスマホに入ってさえあれば、生配信に参加できるとあって、「けい木林家のオチのある噺」には多くの二つ目が参加するなど、(上方より出遅れた感はあるが)動画配信が落語家の交流にも繋がっていった

残念ながら諸事情で最近は動画UPされていないが、過去動画の「モノマネ時報」は面白い。古今亭菊之丞師匠もご自身の配信の時に少し触れていらっしゃったが、特徴をつかんで表現されているとのこと。

以上が、最初の緊急事態宣言あたりの動きである。
落語家さん自身は芸を磨く場所や収入源がなくなり、死活問題ではあったが、落語好きの一庶民としては、毎日誰か落語家さんがネタしたり、企画配信したりされていて、喜んでステイホームするぐらい夢のような日々であった。この時によく見ていた配信についても、また書きたいと思う。


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