なぜジエンドはバグが多いのか【デュエプレ】
この記事の内容を2行でまとめると?
Q. なぜジエンドはバグが多いの?
A. 種族を墓地で参照しようとしてるから。
はじめに
こんにちは。
ジエンドバグ学会会長のオウドゥンヌです。
《龍覇龍デッドマン=THE END》。
デュエプレ24弾「龍魂超決戦」にゲームオリジナルのSRとして収録されたこのカードは、もはや芸術的なレベルの弱さをしているカードであり、「全SRで一番弱い」「特急呪物」「マナに埋められる分ガルバロスの方が強い」と散々な評価をされるカードです。
そして、このカードのもうひとつの特徴として「とにかくバグが多い」というものが挙げられます。
ゲーム内の修正された不具合リストに掲載されたジエンド関連の不具合は15個以上。もはや異常というほかありません。
そこで、本記事ではジエンドのバグの歴史をまとめ、なぜジエンドにバグが多いのか、そもそもジエンドはどのような効果処理をしているのかを、ジエンドの多くのバグの原理解明に携わった私が解説していこうと思います。
ジエンドのテキストを確認しよう!
本編に入る前に、改めて《龍覇龍デッドマン=THE END》のテキストを確認しましょう。
色々突っ込みどころがあるテキストですが、特に問題なのが「こうして破壊したドラグハート、ドラゴンまたはドラグナー1枚につき…」という部分。
破壊したクリーチャーの種族を参照するカードは非常に珍しいのですが、この絶対にいらないテキストがジエンドにバグが起きる原因となっています。
ジエンドの効果処理に関係するバグ
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24弾が実装された時の、ジエンドの処理は恐らく以下のようなものです。
①「破壊されて墓地へ移動したクリーチャーの種族を参照し、ドラゴンかドラグナーならドラグハートを出す。」
一見何の変哲もない処理ですが、この処理は一つの問題があります。それは、バトルゾーンではドラゴンでも、墓地ではドラゴンじゃないクリーチャーはドラグハートを出せないこと。
デュエプレには、バトルゾーンのクリーチャーに種族「ドラゴン」を追加するカードがいくつか存在します。
これらのカードの効果が適用されるのはもちろんクリーチャーがバトルゾーンにいる間だけであり、破壊されて墓地に移動してしまえば種族「ドラゴン」は無くなります。
…そう。つまり、「他のカードで種族にドラゴンを追加されたクリーチャー」が「破壊されて墓地へ移動した後の種族」は当然「ドラゴン」じゃないので、ジエンドはドラグハートを出せないのです。
これがジエンドにバグが多い原因です。もちろんこのバグは修正されるのですが、後にこのバグから派生して非常に多くのバグが発生することになります。
余談ですが、24弾には《リンクウッドの龍変化!》という、自分の全てのクリーチャーの種族に「ガイアール・コマンド・ドラゴン」を追加する呪文が収録されています。
非常にジエンドと相性の良いカードであり、ジエンドの為に収録されたカードだと私は思っていたのですが、実際にはこのバグのせいで当時は使い物になりませんでした。
こんなのジエンド使おうとしたらすぐ気付くバグだと思うんですけど、運営はテストプレイしてなかったんですかね?
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流石にヤバイ不具合だったので、このバグは修正されました。
そして、デュエプレ運営はこのバグを修正するために、元々の処理に加えて恐らくもう1つの処理②を追加しました。
①「破壊されて墓地へ移動したクリーチャーの種族を参照する。」
②「破壊されて墓地へ移動したクリーチャーが、バトルゾーンではドラゴンだったどうかも参照する。」
これなら、バトルゾーンでは他のカードの効果によってドラゴンだったカードを破壊しても、ドラグハートを出す事ができますね。
ところで、デュエプレには一部「破壊されないカード」というものが存在します。
例えば《超神龍バリアント・ハデス》。
このクリーチャーは破壊される時、置換効果でマナゾーンに移動します。(置換効果とは、「◯◯の時、かわりに〜」って書いてる効果の総称です。)
このクリーチャーのように、デュエプレでは破壊される時に「置換効果」が発動して他のゾーンに移動したり、逆にバトルゾーンに残ったりするクリーチャーがいます。
流石にこんなことはデュエプレ運営も知っており、これらのカードをジエンドで破壊してもドラグハートを出すことが出来ます。
つまり、ジエンドには①②の処理に加えてもう1つ、③の処理が存在していました。
③「(置換効果などで)破壊されずに他のゾーンへ移動したクリーチャーやバトルゾーンに留まったクリーチャーは、移動先のゾーンでの種族を参照する。」
ここでもう一度、①②の処理を見返してみましょう。
①「破壊されて墓地へ移動したクリーチャーの種族を参照する。」
②「破壊されて墓地へ移動したクリーチャーが、バトルゾーンではドラゴンだったどうかも参照する。」
…破壊されずに他のゾーンに移動したクリーチャーは、バトルゾーンではドラゴンだったかどうかを参照されてないのでは???
その答えがコチラです。
はい。参照されません。
こらーー!
このバグによって、特に被害を被ったカードが2種類ほどあります。
1種類目は、《龍圧の覚醒者ヴァーミリオン・ドラヴィタ》と《蒼炎の覚醒者サイキック・NEX》。
この2枚は、バトルゾーンを離れる時に覚醒前の状態になる「解除」という能力を持っており、さらに覚醒前は種族に「ドラゴン」を持っていないという共通点を持っています。
つまり、③「(置換効果などで)破壊されずに他のゾーンへ移動したクリーチャーやバトルゾーンに留まったクリーチャーは、移動先のゾーンでの種族を参照する。」という処理が適用され、種族参照される時には覚醒前のドラゴンじゃない状態なので、ドラグハートを出す事はできませんでした。
2種類目は、《竜装ムシャ・レジェンド》。
種族に「アーマード・ドラゴン」を付与するクロスギアです。
これを《光器パーフェクト・マドンナ》などの置換効果でバトルゾーンに留まるクリーチャーにクロスしていた場合、ジエンドが種族参照するタイミングでは《ムシャ・レジェンド》は破壊されているので種族「アーマード・ドラゴン」なんてものは消え失せており、ドラグハートを出すことは出来ませんでした。
余談ですが、置換効果でバトルゾーンを離れない《純潔の信者パーフェクト・リリィ》とジエンドの組み合わせは、公式番組でクボ研究員が紹介していました。
しかし、実際に使おうとすると、このようにバグが起きまくる組み合わせだったのはかなりイカれてると思います。
そして、この状況をさらに複雑にしたのが他のバグの存在。
先ほど、②「破壊されて墓地へ移動したクリーチャーが、バトルゾーンではドラゴンだったどうかも参照する。」という処理が追加されたという話をしました。
しかし、種族「ドラゴン」を他のクリーチャーに追加しているのが《熱血龍ザンテツ・ビッグホーン》と《無双龍聖ジオマスターチャ》というクリーチャーだった場合、これらのクリーチャーより右側にいるクリーチャーは「バトルゾーンでドラゴンだった」と認識されないバグがありました。
(離れたカードの種族を参照する《パンドラ城デス・ファントム》でも同様の現象が起きていました。)
また、種族「ドラゴン」が追加されたセイバー持ちクリーチャーをジエンドで破壊しようとして、そのクリーチャーが自身のセイバー能力で破壊された場合、ドラグハートを出せないバグもありました。
微妙に正しい挙動に見えますが、紙のデュエマではこれと全く異なる裁定が出ています。
このように、大量に発生したバグのせいでジエンド界隈は大混乱でした。
特に、「種族追加」「置換効果でバトルゾーンに残る」という2つの能力は、ジエンドを真面目に使おうとすると真っ先に思い浮かぶ相性の良さそうな能力なのに、実際にやろうとするとバグで何もできないのは本当におかしかったと思います。
2/22
殆どのバグが修正されました。能力は修正されなかったけど。
④「(置換効果などで)破壊されずに他のゾーンへ移動したクリーチャーやバトルゾーンに留まったクリーチャーが、バトルゾーンではドラゴンだったどうかも参照する。」
という処理が追加されたようです。
また、種族「ドラゴン」を追加する《熱血龍ザンテツ・ビッグホーン》と《無双龍聖ジオマスターチャ》の右側にいるクリーチャーは「バトルゾーンでドラゴンだった」と認識されないバグ、セイバー効果で破壊されたクリーチャーの分のドラグハートが出せないバグも修正されました。私は不具合リストに並ぶ大量のジエンドに思わず笑顔になりました。
しかし、修正された不具合の中に1つだけおかしなものがありました。それがコチラ。
「破壊されない」は《神の裏技ゴッド・ウォール》が付与されたクリーチャーや《護英雄シール・ド・レイユ》などが持つ効果ですが、これを持つクリーチャーを破壊しようとするとドラグハートが出せるのは不具合だったようです。
ですが、紙のデュエマの裁定にはこれと矛盾する裁定が。
本当にこれが正しい挙動なのか、ジエンドバグ学会には波紋が広がることになりました。
2/29(確認済みに記載、後に修正)
どうやら、デュエプレ公式があんまりちゃんと裁定を把握してなくて、正しい挙動を不具合扱いしてしまったようです。お茶目な運営ですね()
また、ジエンドが破壊したカードが、ジエンドの効果処理中に置換効果でバトルゾーンに戻すと、ドラグハートが出たり出なかったりするというバグも発見されました。
↑
種族「ドラゴン」の状態で破壊して、置換効果でジエンドの効果処理中にバトルゾーンに戻してドラゴンじゃなくすると、ドラグハートが出せない。
↑
ドラゴンじゃないクリーチャーを破壊して、置換効果でジエンドの効果処理中にバトルゾーンに戻して種族「ドラゴン」を追加されるとドラグハートが出る。
どうやら、④の処理は「バトルゾーン→他のゾーン」という1回の移動を想定して作られており、「バトルゾーン→他のゾーン→バトルゾーン」という2回の移動をしてバトルゾーンに戻ってくるクリーチャーに適用することは想定されていなかったようです。想定しろや。
これらの不具合は、3/8に運営が不具合確認のページに掲載し、ドラグハートを出せない不具合は3/15に、出せる不具合は25弾リリース時に修正されされました。
5/4
新弾リリース後は特にジエンドのバグは確認されておらず、「ジエンドバグ学会も解散か…」と思った矢先、爆弾が放り込まれました。
(URL時間指定済)
動画を見るのが面倒くさい人のために簡単に説明すると、ジエンドが《連鎖類覇王目ティラノヴェノム》や《連鎖類超連鎖目チェインレックス》などの種族が元々ドラゴンのクリーチャーを破壊しているのに、ドラグハートが出ないバグが発見されました。
従来のドラグハートを出せないバグは、種族「ドラゴン」を追加されたクリーチャーだけに起きていたものであり、種族が元々ドラゴンのクリーチャーには起きていませんでした。
しかし、この動画では種族が元々ドラゴンのクリーチャーを破壊しているのにドラグハートが出ていないのです。
検証を進めた結果、再現できたのがこちら。
「そのターン中に一度でも破壊されたドラゴン」をジエンドで破壊するとドラグハートが出せないことが発覚しました。
理由は恐らく、そのターン2回目以降にジエンドに破壊されたクリーチャーは、「ジエンドの効果で破壊された」という情報が上書きされていないためです。
ジエンドは「自身の効果で破壊されて墓地へ移動したクリーチャー」の種族を参照します。
つまり、墓地にいるクリーチャーの情報を参照している訳ですが、今回の場合、肝心の墓地にいるクリーチャーは「ジエンドの効果で破壊された」という情報を持っていないためこのようなバグが起きているのだということが予想されます。
ちなみに「破壊したカードの特性参照」という似たような効果を持つ《地獄門デスゲート》でこのようなバグが起きないのは、墓地にいるクリーチャーの情報ではなく、そのクリーチャーがバトルゾーンにいる時の情報を参照しているからだと思われます。
そうじゃないと、エグザイル・クリーチャーのコストの小さい面を破壊した時、大きい方の面のコスト以下のクリーチャーを出せる…なんてバグが起きかねませんからね。
じゃあジエンドも最初から「そのクリーチャーがバトルゾーンにいる時の情報」を参照すればいいじゃないかって?
私もそう思います。
あと、もっと意味不明なバグも発見されました。これは未だに原理が分かっていません。誰か分かった人は教えてください。
ジエンドのそれ以外のバグ
ジエンドはエンターテイナーなので、他にも色んなバグが発見されました。その中でも、特に致命的な5つを紹介しときます。
《龍魂宮殿 ブラックロ》がリンクしている《極真龍魂》が、《悪魔龍王 ドルバロムD》の「バトルゾーンに出た時」の効果で破壊される。
どちらかといえばAOTWのバグです。初期のジエンドはこのせいで黒単に対してクソ不利でした。誰もジエンドなんて使ってなかったけど。
《G・アイニー》と《真・天命王 ネバーエンド》を用いた特定の手順で「侍流ジェネレート」の効果を持たない進化クリーチャーをバトルゾーンに出した際、「侍流ジェネレート」の効果が発動する。
ジエンドでなんやかんやすると侍流ジェネレートができました。なんでだよ。
原理がまったくもって意味不明なバグです。
《龍覇龍 デッドマン=THE END》の「バトルゾーンに出た時」の「このクリーチャーと名前に《龍魂》とあるカード以外の自分のカードをすべて破壊する」効果の適用中に他カードの能力や効果で《龍覇龍 デッドマン=THE END》が破壊された場合、「こうして破壊したドラグハート、ドラゴンまたはドラグナー1枚につき、自分の超次元ゾーンからコスト3以下のドラグハートをバトルゾーンに出してもよい。」効果が適用されない。
長ったらしいことを書いてますが、ジエンドの効果処理中に置換効果でジエンドが破壊されると、ドラグハートが出てこないというバグです。
《影武者ソウル・ブリンガー》でかなり簡単に起こせました。
これで天門型ジエンドがご臨終したとか…。
クリーチャーが破壊される時の置換効果を持つクリーチャーとその置換効果の対象となるクリーチャーが、自分のクリーチャーを破壊するカードの効果で同時に破壊される際、置換効果が正しく適用されない場合がある。
(URL時間指定済)
この配信で起きていたバグ。
ジエンドマスター杯(3/3)では出来ていたのに、この配信(3/16)ではできなくなっているという笑撃のバグだった。
このバグは正確にはジエンドは関係なく、自分のクリーチャーのみを複数体破壊するカードなら起こり得るバグでした。
しかし、自分のカードのみを破壊できるのはジエンドだけであり、ドラグハートの《ニガ=ヴェルムート》にもバグが存在することはジエンド抜きでは発覚しなかったので、一部では「デバッガーとしてならTierSSS」なんて呼ばれたりもしました。
ドラグハートが「龍解」を発動させた後その適用までの間に、バトルゾーンを離れ、再度バトルゾーンに出た場合、先にバトルゾーンにいたドラグハートの「龍解」の効果が後にバトルゾーンに出たドラグハートに適用される。
《バトライ閣》をジエンドで破壊すると《バトライ武神》になって戻って来るバグです。
正確にはジエンド以外でもこのバグは引き起こせるんですが、手順がかなり面倒くさく、一方でジエンドを使えば超お手軽にこのバグを引き起こせるのが問題でした。
ギャグみたいなものが多いジエンドのバグの中で、唯一実用性があるバグであり、ジエンドマスター杯ではこのバグの使用禁止が宣言されました。
おわりに
Q. なぜジエンドはバグが多いの?
A. 種族を墓地で参照しようとしてるから。
余りにも多かったジエンドのバグを「私がやらなきゃ誰がやる!」ってノリで備忘録的な意味で書いたのですが、こんな長さの記事になるとは思ってもいませんでした。弱いカードを出される分にはまだ良いので、せめてバグが無いカードを作ってくれ…と願うばかりです。
誰に需要があるのか一切不明な記事でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
オウドゥンヌ
オマケ(ジエンドに対する個人的なお気持ち表明)
正直、「こうして破壊したドラグハート、ドラゴンまたはドラグナー1枚に付き」とかいう存在意義が不明なテキストのせいでこれほどのバグが発生しているのに、ジエンドに一切アッパーをかけない運営の意図が良く分かりません。
デュエチューブの公式動画にて、紙のデュエマの開発に携わるデッドマン(ジエンドじゃなくて押目祥樹の方)がカード開発に重要な事として「こういうぐらいの難しいことをやれば、こういうぐらいのリターンが返ってくるかなっていうのが大事」と発言していました。
その観点で考えると、ジエンドは返ってくるリターンが掛けたコストに一切合っていません。
これがVRとかだったらまだネタカードとして笑えるのですが、なんとコイツは各弾に10枚しか枠がないSRです。
個人的に、SRはそのカードを主軸にしてマスターに行けるぐらいの強さはあってほしいと思うのですが…私だけでしょうか?
盤面制限でデュエプレでは揃えづらいAOTWを、ザビミラ形式でドラグハートを出して解決するというカードデザインそのものは非常に美しくて好きなので、とても惜しい気持ちです。
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