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中華の個人スコアリングが興味深い(追記あり)

 いま中国系ICTコングロマリット企業「BATH」(百度、アリババ、テンセント、ファーウェイの各社)について、民間でも政府でも物凄い関心をもって調査を進めている状況ですが、このところ中国国内の景気低迷や、デジタルコンテンツの中国国内の規制強化で優劣がつき始め、一部でリストラが始まり、日本でも人工知能系でそれなりに実績のある中国人のリクルーティングも始まっています。

 中国人を雇うことの是非は人によっていろんな見解があるでしょうから個々の事象の見解は措くとして、ご存知の通りアメリカの対中華包囲網の一端にありつつも、比較的日中の経済協力や貿易は一定レベルであり続けた日本は多少は緩衝地帯になっているのかもしれません。

 で、先日中国の決済企業が日本の温泉街などに中国人観光客向けのオンライン決済の仕組みを売り回るという事案があり、それだけみれば「ふーん」で終わるところなのですが、なぜかこの内容に経済産業省が中華事業者の売り込みに加担しているかのようなタレコミが幾つか舞い込んでいたため気になっていたわけです。なんで中華電子決済を温泉地で採用するよう日本の官庁が普及拡大を後押ししているの?

 この絡みで関係事業者から流れてきた話で、一番目を引いたのは中国国内で非常に影響力のある芝麻信用(Sesami Credit)に直結した金融信用情報に関する記載です。そのまま画像を出すと問題があるでしょうから気になる点を羅列すると、だいたいこんな感じになります。

・個人の信用情報が単なる決済スコアだけでなく、就職活動、金銭の貸借、親族の信用状況まで網羅的に第三者が検証可能な状態になっている。

・そのスコアはどうスコアリングされたかある程度類推可能な状態で決済当事者や採用担当者が閲覧できる可能性はある。

・とりわけ、就職(企業からすれば採用)にあたり、単に学歴や経歴だけでなく金銭の貸し借りも含む生活態度に関するスコアや、勤務における精神不安定(鬱などのメンタルヘルスの状況や同僚との不和、職場で管理職や経営者に不平不満を言うかどうかなど)から性格因子(Big-5やHITなど)まで逆引きできるかもしれない。

・さらに、両親兄弟だけでなく、親族、大学などでの同級生などもリレーションマップで引ける方法がある。知らないところで親族が交通事故を起こすといつの間にかスコアが悪化していたりする。

 てなことで、かなり厳格な減点法が採用され、おそらくその当事者は自分でのスコアがどうであるのかきちんと把握できないどころか、スコアが減らされる状況になってもスコアが減っている要因も明らかでないため抗弁のしようもなく、結果としてスコアを減らされないよう品行方正に生きるしか方法がないのでは、と思ったりもします。

 これを見て「うわ、中華は超先進的なサイバネティック社会だな。日本も見習わなければならない」と称賛するべきか、それとも「これ完全なディストピアじゃん。人権観念もへったくれもないじゃないか」と憤るべきなのかはその人の価値観によるところは大きいと思うわけですけれども、幸か不幸かこれらの類推で証拠が何で減点されうるのか良く分からんなあと思うような項目があるようで、少し気になります。これは芝麻信用が用意したテーブルなのか、あくまで海外で強調する事業者のところでだけ、誰か第三者が介在しているのかは分かりませんが、例えば「反秩序的活動」みたいな項目があります(そのものを書くと問題になると思うので、正確な項目名はぼかします)。

 これが何を意味しているのかすぐには分かりませんでしたが、注意深く見ていくと「何らかの抗議活動で参加しているか、付近をたまたま通りかかっただけかは別として顔写真を撮られ本人と判明した」とか「社会生活において望ましくない購買活動(例えば同性愛者が買うようなコンテンツを閲覧し、おカネを払ったとか)を行った」などで、減点の対象となり得るということが理解できます。

 で、秋葉原などで日本人から見ればあからさまにトラップだろうというような中国人向けのビジネス(まあ、そういうサービス)があり、それが狙いなのか騙されているのかは分かりませんが、どこかで見たことのあるガイドに連れられてぞろぞろと中国人男性旅行者が入店していくのが分かります。日本で爆買いが控えられ、アウトバウンド的な輸出が増えたという現象とは別に、なぜ日本に中国人観光客がやってきて不思議な行動をするのか気にしていたのですが、すべてではないにせよ、そういうことなのだろうと思うわけであります。

 たぶん、中国も「悟られていることは充分分かっているけど、気にせず進めている」部分もあるでしょうし、日本と中国の間でのある種の持ちつ持たれつの分野も考えられるのですが、中国の一本調子の経済成長が一息ついて潮目が変わったところで雑踏の動きにも異変が起きるというのはあり得るべきことなのかなと思うのでありました。

(追記 3月18日 18:07)

 読者の方から連絡があり、関連した記事を教えていただきました。

中国で流出した謎のデータベース、180万人の女性に「繁殖OK」のラベルが… https://www.gizmodo.jp/2019/03/mysterious-leaked-database-labels-the-breedready-status.html

中国の「信用されざる者」。飛行機や電車に乗れない人が数千万いる https://www.gizmodo.jp/2019/03/china-untrasted-citizens.html

 どちらの記事も興味深いのですが、実際に起きていることはもう少し、奥行きが深いかもしれません。ただ、状況への理解の参考にはなるので、念のため追記しておきます。


神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント