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「山本一郎は筒井康隆とナンシー関のパクリ」の光栄

  「せっかくnoteやってるのに、なぜ山本さんの活動を告知しないのか」と言われまして、とは言えどもいまいまの活動と言っても親の介護や子どもの送り迎えにお座敷芸とコンサルが中心でたいしたことはしていない日々なんですよ。

 告知含めてそれらしいものは作ってみましたが、単純にTwitterアカウントが凍結されて引退したので、それでTwitterで私のことを見聞きしていた人からすればいきなり消えたようで戸惑っているのかもしれません。

 私は元気です。

 Twitterは有志が告知アカウントを作ってくれました。あとFacebookページぐらいでしょうか。ぜひフォローしてね。


 メインで書いているのはいまは有料メルマガ『人間迷路』で、ゆるゆると購読者が増えつつ、月3回刊… と言いつつ「月3本出すのなら鮮度の高そうなものを書くか」と思い始めて月末に3本のメルマガがまとめて出るという微妙な状態になっております。落としているわけではないけど、申し訳ない。今後はもっと、コンスタントに出せるようにいたします。 

山本一郎 夜間飛行メルマガ『夜間飛行』 http://yakan-hiko.com/kirik.html

いまは、LINEブログと転載先のBLOGOSを除いても外での記事執筆は増えていまして、文春オンライン(文藝春秋)、ヤフーニュース(Yahoo!JAPAN)、産経新聞、月刊『Monoqlo』、4Gamer.net、Appliv、みんなの介護と、証券会社向けの業界レポートや月間媒体でお声がかかると書くような感じでしょうか。

 講演はやるんですが、主に企業研修とか、証券会社さんなど金融機関に呼ばれてそこのお客様宛に面白おかしく喋る、という話が多くて、いわゆる普通の講演は月イチぐらいになりました。また、昔は毎月何回も企画していたネット系のイベントも、また時間拘束の長いテレビの出演も、介護と育児の多忙で朝も夜も空かないのもあってもう1年以上顔も出せていない状態になっています。人生にもう少し落ち着きがあれば、いろんなことをやってみたいという気持ちはあるんですけどね。

LECTURES-記憶に残る講演・講座依頼 http://pr.yakan-hiko.com/lectures/

 ところで、先日女銭湯絵師のパクられ話が騒ぎになっていました。その後も続々とパクリパクられが露顕して、ネットではまだまだ騒ぎ継続中といったところですが、パクり続けるというのは凄いことだと思うんですよね。

 ある種、やり続けている感、やりきってる感は強いように思うので。

【朗報】美しすぎる銭湯絵師勝海麻衣、今日も続々パクリが発覚される http://alfalfalfa.com/articles/251787.html

はあちゅう、女銭湯絵師炎上に見る「美人だから何をしてもいい」わけじゃないだろう問題
この焼け野原の向こうに桃源郷があるのでしょうか #山本一郎 https://bunshun.jp/articles/-/11351

 で、芸術家と習作とパクリについて、個人的には思うことがずっとあって、もちろんこういうパクリ、盗用、剽窃ど真ん中の案件はまったくもってNGとしても、表現者としては何かを模倣したり、その中で自分の表現する型を作ったりというのは大事だと思います。

 私はもともと執筆の速いタイプの書き手なのですが、表現の仕方をどう工夫するかというのはずっと考えていくところでベースはやはり江戸弁の話し言葉とネットスラングがあって、そこに習作として読み書きしてきたものが加わって創作や記事執筆の土台になっていることが分かります。

 私の習作としたものは、筒井康隆『旅のラゴス』とナンシー関『何をかいわんや』です。学生時代、狂ったように読みました。掛け値なしに私の人生を作った本で、300回以上繰り返し読んだんじゃないのかなあ。

筒井康隆『旅のラゴス』


ナンシー関『何をかいわんや』

 何これ、アフィリエイト貼れないの。あ、URL登録まだだから規約上だめなのか。まあいいや。

 その後も、筒井康隆やナンシー関は読み倒しました。文芸が好きな人は、そういう時期はどこかにあると思うんですよ。あるいは、好きなアーティストができて、出ているCD全部聴いたりとか、そういうハイプ期間が。私の場合は、筒井康隆であり、田中芳樹であり、RCサクセション(タイマーズ)であり、ディケンズでした。

 だから、私の書く文章はどことなく筒井臭、ナンシー臭がしていたり、ネットスラングが自然と紛れ込んでいて、古い2ちゃんねる系頻出の言葉遣いや、主語の運びが見え隠れするものなのでしょう。

 そして、恥ずかしいことなのかは分かりませんが、私はこの筒井康隆『旅のラゴス』やナンシー関『何をいまさら』が好きすぎて、各々20回以上写経しています。大学ノートにびっしりと。暇だったから書いたのではなくて、好きだったから書かずにいられなかったのです。一文一文、感動したり笑ったりしながら書き綴っていました。

 そこからだんだん「自分だったら、こう書く」とか「描写はこのほうがいいんじゃないか」と思うようになり、イメージを固めてから書く技能が身に付いたように思います。例えば、筒井康隆は叙述のときに主語と述語が離れていることがあるのですが、たぶん原稿用紙に万年筆かなにか手で書いているから、考えているうちに次々と書きたいことが浮かんできて、主語を書いた後で修飾語が山ほど書き込まれていくのです。

 さらに、いろんな筒井康隆の文章を読んでいき、きっと「こういうことを書こう」とテーマを決めたら、するすると最後まで書きあげちゃう人だったんだろうと思う痕跡を感じるようになります。本当にそうなのかは分かりませんが、アクセントとして文章が膨らんだり、リズム感を出すための短い文章が後から挿入されたんじゃないかと感じる個所があったり、そういうことを類推しながら夢中で写経するのはとても楽しい時間でした。

 ただまあ、そういう写経をするにあたり、今回の勝海麻衣さんのようにナンシー関の文章をまるまる持ってきて「私の作品です」とはしませんし、筒井康隆のテーマと文章を借りてきて似たような文章を発表することはないのです。パクリと習作と模倣というのは悩ましいところだと思うのですが、やはり影響を受けた作品を参考にしながら自分のなかで消化し、自分なりの知見やテーマに置き換えて感じることを次々と書いていく、というのは必要な作業なのでしょう。

 だから、古い文芸の人が連絡を取ってきて、何処で知ったか「山本さんの文章は筒井康隆みたいですよね」と言ってきたことが過去4回ぐらいあります。さすがだ。その後、ベスト新書(KKベストセラーズ)で中川淳一郎さんと漆原直行さんとの本を出す機会があり、そこでやはりそういう習作の話は書きました。読者さんから、反響として習作についての話があったのは、とても印象に残っています。

中川淳一郎・漆原直行『読書で賢く生きる。』 (ベスト新書)

 この『読書で賢く生きる。』のあとに、山本一郎の文章は筒井康隆のパクリという煽りが来たのは、率直に嬉しかったです。パクリというか剽窃のようなそのまんまの文章はもちろん書いてないし発表もしませんが、ずっと参考にしてきた文体でしたからね。もしも晩年、私にそういう機会があれば筒井康隆研究の電子書籍でも出してみたい気持ちもあります。たぶん、書かないだろうけど。

 一方で、ナンシー関の急逝はとても残念でした。なぜかその報を知ったのは少し後のことでしたが、ずっとショックで酒量が増えたのを覚えています。その後、HAGEXさんが刺殺されたときに思い出したのがナンシー関やHAGEXさんが死んで、私は自分の論評の座標とベクトルを確認するのに誰を参考にしたらいいんだ、と思いました。もちろん、ナンシー関が亡くなったのは私が文筆や評論を始める前であったので、何かを参考にしてモノを書いたことは一度としてなかったのですが。

 そんなこんなで、いろいろと文筆的な活動は今後きちんと進めていきたいなあと思っています。実名で、そこそこ書いたのはCakesでして『赤い絨毯』として発表しました。もう6年前なんですね。驚きです。

【第1回】10歳、冬、大曲へ。|山本一郎 @kirik |赤い絨毯 https://cakes.mu/posts/1137

 そこから、noteのアカウントを5年越しに再稼働させて書いたのが、これ。読み手の体力からして、ネットでは10,000字ぐらいの短編が良く読まれるのでしょうか。ご好評をいただいたようで、何よりでした。

「おまえ、noteぐらいやっとけよ」と若者に煽られる選ばれし者の記憶|山本一郎(やまもといちろう)|note(ノート) https://note.mu/kirik/n/n8c8f00c47ce5

仕事が続かない童貞のエトセトラ|山本一郎(やまもといちろう)|note(ノート) https://note.mu/kirik/n/n4baed1393b19

年俸330万→650万の転職と上京と雷鳴|山本一郎(やまもといちろう)|note(ノート) https://note.mu/kirik/n/nd2aa1775e722

 少し前に、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロさんに私が似ている、という風評もあって、恥ずかしくもあり、誇らしくもなりました。まあ似ているだけですが。いま46歳なので、30年ぐらいかけて何かいろいろと取り組んでいくものを実らせてまいりたいと頑張ってまいります。


神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント