3人目の予定外の妊娠のとき私は、困惑の余り最悪の選択をイメージした。一週間ほど夫にも言えず、そんなことは駄目だという自分と、子供はもう無理と拒絶する自分が葛藤していた。
それは本当に苦しかった。
その時 初めて体験した、【そんな者でありたくない】という気持だった。それこそが私の【主体性】の目覚めだった。(前に触れた)
【主体的に産む】ということを体験してこなかった。だから子育ても逃げ腰で、子供の気持ちも見えてこなかったのだ。
この体験から私の中の様々な未解決の問題が明らかになっていった。
小4の夏に迎えた初潮(前に触れた)。そのときの母の対応が私を暗闇へと引きずり込んだ。
性への入り口となったあの得体のしれない暗闇と知りたくても聞いてはならないような、あの暗い世界がいつの間にか触れてはならないこと、あからさまにしてはならないこととして闇を落としたままだった。
それはその後も拒絶という形で残っていた。そのことから憧れの恋もできず、結婚してからも罪悪感、不潔感から逃れることができていなかった。
それがあの妊娠を一旦は拒絶するという反応をしたものの、【新しい命を殺してしまう】そんな事はできない。否したくない。【そんな人間でありたくない】と受け入れたその瞬間から私の性への意識に、大きな変化ををもたらした。
【主体的に産む】という体験は私にとって出産という素晴らしい、感動的な体験へと変わっていった。義務感のようなものが、自分の希望へと変わり性に対する大きな誤解を解くきっかけとなった。
そこから命の素晴らしさ、性の素晴らしさ、人間というものの素晴らしさへとつながっていった。
自身の誕生もその一つだと気づいていった。かつての私は、生まれてこなければ良かったと自身の存在を怨めしく思っていた。
それからそれから、この出来事で私の子供たちへの性についての説明がやっと出来ると思った。
まず3人目が生まれるにあたって出てくるであろう質問に、こんなに大切な【赤ちゃんはどこから生まれてくるの?】という質問に【本当の事】を伝えたかった。自分には得られなかった本当を。
子供は疑問が起こってきたときに答えを得るのが一番の【その時】だ。
予想通り5歳の次男(J)が聞いてきた。
私は彼を私の脇に寄せ大きなお腹をさすりながら「男の子にはオシッコが出る穴とウンチが出てくる穴があるでしょう?女の子にはね、その間にもう一つ穴があるのねー」
「へー、見せてー?」
「見せることはできないけど」と言いながら人体図が載っている【家庭の医学】を取り出し「ここから出てくるのよー!?」と言った。すると
「エーッ?すっごく痛いでしょ?血が出るでしょ?Jたん(自分の名前)分かるー、大っきいウンチが出たとき痛かったし血が出たことあるもん」と言った。可愛かった。愛おしかった。
続いて私「そう、そんな感じ。でもねー、痛いけど嬉しい方が何倍も大きいの」
こういうやり取りをしながら二人は【本当の事】を共有する喜びに包まれているような気持ちだった。出産当日Jは朝 幼稚園に行く前の早朝に 赤ちゃんが産まれたことを義母に知らされ、急いで帰り5歳の足でどうやって来たのだろうと言う程遠い病院へ一人でやって来た。
ベッドに横たわる私の頭に自分の頬を押し付けるようにして、私の頬を撫でながら「お母さん可愛そうー!」と言った。私はその様子に感動し、涙ぐみながら首を横に振り「可愛そうでは全然ないよっ!幸せな気持ちだけ!」と言った。
そう言えば、たった今気づいた。あの時Jは私の病室へ来るのに病院の受付で私の部屋を聞いたのだ。しかも幼稚園の保育時間の間にもズッと忘れずにいた。帰ったら直ぐに病院へ行こうと思っていたのだ。
勿論 物怖じしない子ではあったが、考えるとなお一層愛おしくなる。
それから3〜4年経って今度は長男Tの質問6年生だったと思う。
1泊での校外学習。このタイミングで性教育のようなものがある。その日学校から帰るやいなや「赤ちゃんはどうやったらできるの?」と。
私「今日 学校で何か教わったの?」
T「うん、体の仕組みと夢精について」(表情は明るく早く教えて!という感じ)
私「そうなんだ、だったら話は早い男の人は性器が突起していて、女の人はただの穴だけでしょう?赤ちゃんが生まれてくる所ね、女の人のそこへ男の人の突起を挿入するの、そして射精する」
T「エーッ?!何かいやらしい感じがする」
私「そう?実は私も初めて知ったときそう思った。同じ!でもねー、そうだとしたら、あなたは私とお父さんがいやらしいことをして生まれてきたことになる。がっかりだよね。それで、私が感じているのは素晴らしいそれと、いやらしいそれがあると思うの。だってそうでしょう?あなた達が生まれてきたこと、こんな素晴らしいことはないと思わない?だから素晴らしい人になるか、いやらしい人になるかはあなた次第なんだと思う。何をする人になるかも大事だけど、どんな人になるかはもっと大事だよねっ!」
T「そうかー!😃Tちゃんねー(自分のこと😣6年生)夢精した精子が女の人の体に這って入って行くんだと思ってたー!」
私「そうなんだー😅それでね、この話まだJちゃんには言わないでくれる?」
T「うん、😃Jはまだ分かんないよ!」とすっかり大人の仲間入りした感じだった。
二人とも私に聞いてきてくれて、その疑問に【本当の事】を伝える私、この関係に満足を覚えた。
自分が抱えていたたくさんの問題を一つ一つクリアなものにしていった。
37〜40年も前の話です。


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