小説『Feel Flows』④

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(四)
メッセージの内容はそれぞれ、次のようなものだった。

・自身にとって、あなたの活動はとても面白いもので楽しみにしていた。
・何があったの?
・なにか、誤解をしている可能性はないかな?よく確かめてみて。
・また活動される日を楽しみに待している。

僕のアカウントにこのような温かいメッセージが届いた。
そんな。
僕の発信を楽しみにされている方がいらっしゃる?
まさか。

僕はいつもひとりでいるような気がしていたのに。誰も助けてなんかくれないと思っていたのに。
いや、助けてくれたわけではないかもしれない。助けてくれてありがとうなんて伝えたら、そんなことをするほどの義理はないと笑われるかもしれない。でも、僕にとってこれらのメッセージは暖かく前向きに感じられた。このことで僕の心はなだめれられた。

しばらく、僕は声を殺して泣いた。
誰もいない部屋の中なのだから、声をあげたってかまわなかったはず。
でもきっと、スマホの向こうで見てくれているひとを思った手前、強がる気持ちがあらわれてしまったのだろう。

この涙の理由は、知り合いのメッセージに込められた優しさに触れて感極まっただけではなく、自分の無力さに気づいたからのような気もしている。
他人を巻きまないように、と思いながら書いた内容が知り合いの目に止まり優しい言葉になって返ってきた。僕は何をしたって思った通りにはならない。
悩んでるんだから、頼ればいいのか。でも、頼り方もわからない。無力だ、自分は。

少し落ち着いた後、メッセージのひとつひとつに心からの御礼のことばを返信した。そして、表には書いていない具体的な詳細も少し明かした。もしかすると深層では誰かにこの状況を打破する示唆を求めるような気持ちがあったのだろう。でも、答えは自身で見つけるしかない状況であることに変わりはない。答えが見つかるまで、活動休止を続けることを決心した。

ミュージシャンの小沢健二さんがいつか言っていた、"日常には何でもある"と。
その通りだ。今僕に起こっていることは特別なことではない。単なる日常。こんなことや、あんなことが何でも揃っている。それが日常。
僕は昨日も今日も、日常を生きている。

ふと、「メッセージをくれた知り合いたちは、過去の自分とつながっているひとだ」と思った。当然といえば当然。今よりも過去に僕と知り合ったひとたちなのだから。間違いなくこれらのメッセージは過去に実在した誰かのもとに届いている。その誰かとは自分だ。

「過去の自分も自分」ということばが思い浮かんだ。

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