小説『Feel Flows』⑦

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(七)
自動車を運転する帰り道、西の空に「か細い線」のような月が見えた。
「なんてきれいなんだろう」。
すぐに路肩に止めてスマホで写真を撮りたかったが、交通量の多い道路で迷惑になりそうでそれはやめた。

今日の月は三日月。
三日月はこれから満ちていく成長が約束された状態でありながら、いま現在でさえ特徴的で美しい形状をしている。
そう考えると「なんとうらやましい存在なんだろう」と思う。
これまでそんなことに思い巡らせたことはなかったが、もしかすると三日月をうらやむひとがこの世にごまんといるのではなかろうか。

「月をうらやむ」、なんと人間的なものの考えだろう。ないものねだりに似た感覚。今の不満は、姿形や状況が変わればなくなるかもしれない。でも、その後にまた不満が出てくるのではないだろうか。いつも、自分にないものが輝かしく見える。

そして、「今の僕を誰かがうらやむなんてことはあるのだろうか」と思ってみた。

蓼食う虫も好き好き。そんなひともいるのかもしれない。
ただ、僕は今の自分の境遇を思うととてもじゃないけど平静ではいられない。厳しい状況の中にいる。それを知ったら、きっと誰も僕のようになんてなりたがらないだろう。

しかし、これからそれを解決することができるとしたら。今から自分が慎重に起こす行動が、将来自分がなりたい満ちた状態を作れるとしたら。

今の僕が誰かにとっての三日月であるかどうかは、これからの行動によって決まるのかもしれない。

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