【短編小説】ショートコント

今日、女友達が家に来た。
彼女とは学生時代からの付き合いで、社会人になった今でもよく遊んでいる。
数少ない気兼ねなく話せる友人の一人で、働き始めてからはよく居酒屋で仕事の愚痴や私生活の悩みなどを吐きあっている。
上司がイヤなやつだ、金がたまらない、恋人と上手くいかない、などなど。
悲しいことに話題は尽きない。
今日の訪問もそんな飲みの流れで決まったものだった。
といってもやることがあるわけでもなく、二人でだらだらとゲームをやりながらお菓子をつまんで過ごしていた。

しばらくして、僕が台所で煙草を吸っていると彼女がなにかに気づき、あっ、と声をあげた。
目をやると彼女の手には少し前に買って1、2個だけ使ったコンドームの箱が握られていた。

「あれ、なんか使うことあるの?」
と笑いながら聞いてくる。
「うるせぇ、もう使ってねぇよ。知ってるだろ」
「あ、そうだったね。ごめーん」
と大笑いする。
酷いジョークだと思いながらも、僕もクスッと笑ってしまう。
すると彼女が調子に乗って、「どうする?今日使ってあげようか?」と言ってくる。
僕は意識して真顔で返す。
「バカか、友達とは使わねぇよ」
「友達?」
「ああ、友達」
「フレンド?」
「フレンド」
「セックス?」
「フレンド。ってやかましいわ」

あまりにもくだらない会話に、二人して声をあげて笑う。
ああ、幸せだ。とても、幸せだ。
そうだ、これでいい。
幸せとは、これでいいのだ。

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