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「助けて」が言えないなら、オファーを送る

 自分で全部抱え込んでしまう人が時折いて、ほうっておくと最終的に背負った荷物に押しつぶされるように倒れこんでしまう。

 ただ、抱え込んでしまう人の中でも、大事になる前に助けてもらえる人と、手を差し伸べられないまま心身の体調を崩してしまう人がいると感じていた。

 日頃の行いとか、環境の問題はもちろんあるだろうけれど、「わかりやすさ」が大事だと思う。「そんな様子はなかった」と問題が起こってから言われる人は、わかりづらいのだ。

 見るからにパニックになっている人は、実は手助けしやすい。だって、顔をあちこちに向けたり、言葉に詰まっていたり、困っている素振りを全身から発しているからだ。
 そんな様子を見たら、「どうしたの?」と聞きたくなるのが人情だ。

 僕達のコミュニケーションは言語情報によってなされているように思えて、視覚情報(表情・仕草)や聴覚情報(声のトーンや口調)の割合がとても高い。だから「助けて」と言葉で言えなくたって、身振り手振りで伝えればいいのだ。

 そういった身体言語によって、誰かにサインを送ることを「オファーする」と言うらしい。

 たとえば、相手に目を合わせる行為も1つのオファーだ。相手も自分の方を向いてくれたら、オファーを受けてくれたということ。
 そうしたら、今度はカップを傾ける仕草をする。相手は親指と人差し指で丸を作る。2人は言葉を交わさなくてもカフェに行ける。

 困った時に完全に動きを停止してしまう人と、泣きそうな顔で先輩や上司の顔を見る人だったらやっぱり後者の方が助けやすい。

 傷ついているのに、笑う。
 困っているのに、無表情で突っ立っている。
 自分の意図とは違うオファーを出したり、そもそもオファーを送らなければ、望む反応が返ってくるはずもない。「傷ついている」ならそういう身ぶりを示していけばいいのだ。

 そして、それはきちんと相手に送っているだろうか?

 ポーズなら、困ったふりだけでいいかもしれない。でも、オファーは送り、受け取り、返すものだ。受け取ってほしい相手に送らなければ、受け取ってもらえない。公衆便所の壁に落書きされた電話番号にあなたは電話をかけるだろうか?
 まずかけないだろう。

 だから、好きな素振りも日頃から送っていった方がいいし、言葉で「助けてください」と言うのが苦手ならば、全身でそれを伝えればいいのだ。きっと手を差し伸べてくれる人はいる。

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