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嫌な気持ちをみつけてあげて

「自分はそれが嫌だったんだ」
 たったそれだけのことを認められない人が実は多くいるのかもしれない。

 他者から投げかけられた言葉が引っかかった。
 それは掃除しようと思っていた矢先に、「掃除しなさい」と親から言われた少年時代の気分に似ているかもしれない。

 わかっているよ。
 そう思った後で相手に対して、小さな不満をいだく。

「だいたいあの人は……」と愚痴が思い浮かんでくる。しかし、自分に落ち度があることもわかっている分、正面切ってなにかを言えるわけでもない。

 視点や言い回しで工夫しようとしてみても、上手い切り返しは思いつかない。そうして膨らみかけた不満はしぼんでいく。

 そうして冷静になって初めて気づいた。

 自分は「ただそれを言われたのが嫌だったのだ」という事実に。

 本当は相手が嫌いなわけでもないし、けなしたいわけでもない。ただ、それを言われたくなかったんだ。たとえ正論だったとしても、自分に非があると認めていたとしても、嫌だったのだ。
 その気持ちに気づいた時に、すとんと楽になった。

 ただただ、自分の気持ちに対して無自覚なだけだった。
 訳のわからない不快感だけがあって、その捌け口を相手に吐き出そうとしていただけだった。

 どちらにしろ、相手の言動は変えることはできない。
 だから、相手を悪役にでっち上げることで、自分を楽にしようとする。ただ、不快感を覚えているのはあくまでも自分なわけで、相手にどんなレッテルを貼ってもそれはなくならない。

 自分の「嫌だ!」という気持ちに気づいていない人は多いのかもしれない。

 それが認められないがゆえに、歯を食いしばって我慢をしたり、だれかに当てつけたりする。でも、気づいてみれば案外シンプルだ。
 嫌だったんだなぁ、と内心に語りかければ、「そうなんだよね〜」と気軽に流せるものだ。

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