「スゲエ」前夜 BOaT 『LISTENING SUICIDAL』
(イーストウエスト・ジャパン/3059円)
「結構いいじゃん」というアルバムには出会っても「スゲエ!」と思うことは少なくなる。
それでも月に20枚近くCDを買い続ける(「そんなことより子供作れよ」と友人に叱られた)ワケは、ビーチボーイズの『サーフズアップ』やスパンクハッピーの『フリークスマイル』のような「スゲエ」作品に出会いたいからだ。
あの驚きとときめきをもう1度味わいたいからだ。
BOaTの『RORO』は間違いなく、そんな「スゲエ」アルバムだった。
わずか6曲。
ギターとドラムとベースと、キーボードなどその他の楽器が奏でるロックシンフォニー。
シンプルなメロディーの反復が次第に盛り上がって行く緩やかなグルーブは、ちょっとほかにないワンアンドオンリーの快感を味合わせてくれる大傑作だった。
それに比べると、その前作『'LISTENING SUICIDAL'』は分が悪い。
基本的にはジミヘンやレッドゼッペリン以来の、エレキがかっこいいロックだ。
オープニングにはマイルスばりのミュートがかかったトランペットが響いたり、打ち込みのビートが響いたり、めっちゃくちゃ歪ませたドラム音が鳴ったり、デジタルな味付けもあるにはあるが、時代錯誤にも近い、やかましくて大げさなロックフォーマットであることに代わりはない。
しかし、これがじっつにかっこいい。
「そうだよな、みんなエレキが好きだったんだよな」と遠くを見つめてしまう懐かしのロック。
で、何が悪い?
30代以上のポップミュージックファンで、ブライアン・メイやジミー・ペイジ、ヴァン・ヘイレンやリッチーのエレキにしびれなかったヤツはツチノコより珍しいはずだ。
もし『RORO』がなかったら、傑作と呼んだかも知れない。
が、『RORO』が出ちゃったんだよな。
でも収録曲『銀色打つ時間』は、『RORO』収録超名曲『TUESDAY』の明らかなプロトタイプだし、初回限定8cm CD収録の『NIGHT HOWK NIHGT』はやはり『RORO』収録の『RUMMY NIGHT』まんまじゃん。
ものすごーくカッコイイのに、どうしても『RORO』と比較されちゃうのが、このアルバムの悲劇かな。
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