罪と罰日記 7月6日 (続く)にワクワク、ドキドキ

 「続く」にときめいた記憶をお持ちだろう。

 ガッツ星人に捕らえられたウルトラセブンがはりつけにあった場面を見た後の「続く」。
 3番目のボタンをはずすと爆発するビジンダーが二番目のボタンを開けた後の「続く」。
 あの「ドキドキ」「ワクワク」感は、面白さの重要なポイントだろう。

 「罪と罰」にもある。堅苦しくて難しくてややこしくて名前が覚えられない印象ばかり強いロシア文学の代表作にも、「続く」があるのだ。

 第五部後半。ラスコーリニコフが葬式費用を負担したマラメードフの葬式で、「ラスコーリニコフが金を出してやったのはいやしい娼婦だ」と位置づけることで彼を陥れようとしたスヴェドリガイロフが、マラメードフの娘ソーニャに泥棒の濡れ衣を着せようとする。
 たまたま真実を見抜いたスヴェドリガイロフの同居人レベジャートニコフによって事なきを得たのだが、娘を公然と泥棒扱いされたマラメードフの妻カチェリーナは狂気に追いやられる。
 「罪と罰」。狂いかけているラスコーリニコフといい、泥酔して延々と不満を述べ続ける生前のマラメードフといい、狂気の影がつきまとう。

 フライパンを叩いて幼いこどもたちに物乞いさせるカチェリーナは、肺結核が悪化。
 夫と同様、命尽きるのだが、そこでばーん!またもや登場したスヴェドリガイロフ。
 懲りずに残された子ども達のために金を出す、と提案する。

 なぜ。疑問はつきない。
 しかし、邪心はないと言うし、とにかく無一文の子ども達に寄付金が出るなら断る理由はない。
 胸にわだかまりを持ちつつ、ソーニャを始めとしたカチェリーナの子ども達は寄付金を受け取ることになる。めでたし、めでたし。

 しかし、第五部のラスト、スヴェドリガイロフは不気味な台詞を残す。
 ラスコーリニコフに向かって、
 「私はすっかりあなたに興味を持ってしまった。仲良くやっていけると思っていたし、現実に仲良くなった。私がどれくらい人当たりがいいか、いずれわかりますよ。まあ、見ていなさい」。

 仲良くしようとしているのか、怖がらせようとしているのかよくわからん台詞で、岩波文庫版下巻171ページで第五部は終わる。

 えっ、なに?スヴェドリガイロフ、どうするつもりよ、何があるわけ?(続く)。

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