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断章随筆/書くようになったきっかけーあてこすり歌2番

1.文化人類学の講義で、アフリカの民族の女性が歌うあてこすり歌があることを習った。アメリカの囚人が歌う作業歌、雪深い造り酒屋の労働歌のことも習った。
村の女性たちが集まり、粉引きなどのきつい仕事をしながら、旦那や父親への恨み辛みを歌う。「お父さん、何故わたしをこんなところに嫁に出したの」(*歌詞ではなくイメージです)とか。
冷たい水で重い道具を洗いながら「嫌だ嫌だもう嫌だ辛くて寒くてしんどくてこんなの今すぐ辞めてやる」(*歌詞ではなくイメージです)とか。
でも、それらの歌はあくまであてこすりであって抗議ではない。歌い終わった後に旦那や父親が自分の振る舞いを改めることを狙っていないし、労働環境が楽になることも期待されていない。旦那とも別れないし、明日も同じように働く。
あてこすりを歌う間だけ、自分が納得できないものとの関係性が違うものに、新しいものになるのであるらしい。

2.初めて書いたのは多分、詩である。小学校二年くらいに授業で。ザリガニの赤ちゃんは赤いと思っていたけど白いかったのだな、というだけの内容で、文集に載った時には大分直されていた。改行がたくさんされていた。

3.小説を書いたのは小学四年の国語の授業。当時好きだったアニメ及び漫画と国語の教科書に載っていた物語のプロットを混ぜて作った話だった。

4.小学校三年くらいは自由帳に漫画を描いていた。学級新聞で四コマ漫画を連載していた同級生の真似をした。
自由帳に書いていた漫画は、ただの写経だった。好きだったギャグ漫画のストーリーとプロットはそのままに、キャラクターを変えて写した。そのキャラクターも好きだった漫画の借り物。例えば、星のカービィのキャラクターをあさりちゃんのストーリーとプロットと設定で動かす、とか。その中にクレヨンしんちゃんのギャグや効果を混ぜるとか。

5.オリジナルを作ろうと意識したのは高校に入ってから。入った演劇部では生徒創作の脚本が盛んだったからだ。その時の会議で出したアイディアを褒められ、すっかりやる気になった。
二年生の時に初めて一本、完成させた。しかも、自分の体験というオリジナルっぽいものを題材にして出来た。下校中に見つけた車庫が舞台。そこの主人はバラ栽培とその撮影が趣味の元国鉄職員で、車庫に自分の育てた薔薇の写真や国鉄の記念品、写真を飾っていた。それをヒントに、脚本の舞台を作った。写真屋が無い小さな町で、写真好きが高じて町の小学校の運動会などの写真を請け負っていたおじいさんが死に、暗室も兼ねて写真を保管していた車庫に人々が写真を引き取りに来るという話にした。

6.大学の演劇サークルでも、台本会議がある度に書いて提出した。
一度、「独特な感じで」という感想で、第二候補に選ばれた時は、自分の書いていることはおかしいのかな、と不安になった。

7.たくさん、戯曲や脚本を読んだ。単行本も、同期生が書いたものも。女性の役が、プロもアマも、似たり寄ったりで、飽きたし、虚ろな気分になった。演劇にはオーディションがあるのだけれど、この役に合ってるって選ばれた人って、嬉しかったのかな?? なんか、つまんなくない? 
もう少し行儀が悪く、野心的でも、暗くても、良くない? もっと、知識をひけらかしたり、相手を引っ張ったりもせず引っ張られたりもせず、不敵な感じでも良くない? 
ブス(っていう設定の役)が大抵大人しい奴、多いんだけど、用水路に従って水が流れゆくように、自分を卑下する方向にナチュラルに行きすぎじゃない? 
恋愛対象かお姉さんぶってる妹分って感じの狭さを感じるのですが? だから、私は男の脇役がやりたいとよく思っていた。
男も女も、主役は無自覚ゴーマンでちょっぴり鈍感、ただの馬鹿なのに愛嬌があるなんて言われちゃってる感じ、いけすかぬ。

8.大学二年、演劇を続ける自信が無くなる。先輩の舞台を観に行く前に本屋に寄り、小説の書き方の本を発見し、小説への本格的な転身を考える。

9.大学院浪人の時、県内で主催される文学賞に応募し、優良賞取る。作者プロフィールでウケを狙おうと、8.について書こうとしたが、やっぱり止めて無難に済ます。

10.大学一年のとき、一年だけ映画研究会にも入っていた。短編映画のプロットが採用され、撮影をされたことを気に、映像脚本の投稿も始める。

11.脚本を書いていて、ト書きに物足りなさを感じる。描写が好きなのかもしれないと、長編小説をちゃんと書き始める。一次審査通過に自分の名前が印刷されてるのが嬉しくて、味を占める。

12.少年少女文学の名作を読んだことが無い。トムソーヤの冒険はビデオだったし、宝島とか赤毛のアンとか小公女とかあしながおじさんも読んでないし。大学に入ってから『若草物語』『続・若草物語』を読んだくらい。若草物語が四部作だったことに衝撃受けた。児童文学って、原作から文章を書き直してるやつがあるんですよね。原作はわりと難しい。「ぶん」の方々、ありがとうございます。
青い鳥文庫とわかったさんシリーズ、ナツカのお化け事件簿シリーズ、怪談レストランシリーズ、花子さんが悪霊をひたすらアップリケで倒すシリーズが好きでした。

13.名探偵コナンは読んでて、ミステリーハマってたけど、自分でミステリーを書こうとは未だに思っていない。

14.いわゆるボーイミーツガールものに、カウンターしたい気持ちがある。いじけてる奴に声を掛けるほど、無神経な人はなかなかいないから。
大抵、女子の方が、病気とか特殊能力とか複雑な生まれとか、不思議な呪いにかかってるのは、そうじゃないといけない?
ただ、今なら、欲望の表現とか投影とかトラディショナルな構成とか、いろいろ考えることはできるようになってはいる。

15.渡部直巳『日本近代文学と〈差別〉』を読む。物語がそもそも差別的なんじゃないかという話に、感動と、じゃあどうしようかという不安を覚える。

16.ネット(note)を始める。

17.好きな作品はたくさんあるけど、好きな作家がいない。だから、書くモチベーションが息切れしやすい。

18.リチャード・セネットの本に、かつて舞台は市民生活の見本だったとか、書いてあった気がする。私も、物語を言動のお手本にしていた節はある。だが、今はそのお手本も盤石ではなかったと思う。

19.最近読んだ漫画で、これは所詮お話だから、と思って書かれているのだな、そしてこれを読むのは同じく所詮お話だからと思って読んでる人たちなんだなと思って、萎えた。
子供の頃は、お話とは分かっていつつも、スナフキンから旅の話を聞くムーミンみたいな気持ちで、その人が見てきたものを聞くような気分だった。
父親が戒めとして話す嘘の怖い話だってそうで、本当に怖かった。父親のように上手い嘘をついてくれればいいのに。

20.自分が「見て来たような」話を書ける人の話は面白い。自分の友達の話をするように話が書ければ楽しいかもしれない。

21.あてこすりで書く小説が面白いか不安である。3.や4.の時が、面白かったかも。

22.随筆なので、思い出し次第、追記するかもしれない。

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