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【日記】なかなか速くならない

5月1日(水)

舞踏とホイト芸の公演を見に行く。
曇天で頭冴えず。
投げ銭制の公演。お金を出すタイミングをお客さん方が伺い合っているのがわかる。一人のスーツ姿の男性が舞台に歩み出てお金を置いて、ホイト芸の方が「はぁー」と言って手を合わせたのを機に、鞄からティッシュを出してお金を包む音がし出す。
終演。
外の塀の、こんな写真を撮った。

速度落とせ、は分かった。だが、そしてどうなるべきなのか?

5月2日(木)

漫画喫茶へ。
普段あまり読まない系統の漫画を読んだ。壮大なストーリー漫画である。SFでもあるし、ロマン譚、冒険譚、人間ドラマ、青春ものの要素もあるだろうか。
たいへん面白かった。絵もきれい。舞台設定が好み。ストーリーの構成と絵の構図などの演出がいい。
漫画の面白さとは関係ないことで少し憂鬱となる。キャラクターが、あまり言葉で他人に理解させることに期待していないと言うか、見限っているのが悲しい。「言っても分からない」と言われると「あんたには決して分からない」と言われているのと一緒のように私は捉えるからだ。言語で理解する方が、多分、得意。頼ってる。つーか、依存してる? 気がするから。
多分、言葉に依存する人が多かった時に書かれているのかもしれない。あなた方が頼り切っている言葉とは違う在り方があるよ、みたいなことなのかもしれない。
でも、どうだろう? 言葉に依存してる人の方が少なかったんじゃないの?
どちらかと言えば、言葉ではないものを感知して意思疎通できる他人の方がもはや多いんじゃないの? と、私は社会学の本を読んで思っていたのだけれど。
こういう事を考えると、最近、後ろ暗い気持ちになるようになった。この漫画を読んで感動し、キャラクターたちに共感し、救われたと言っている人たちの喜びを踏みにじっていると捉えられて嫌われてしまいそうで。私は、仲間に入って話がしたいけれど、言語じゃ、駄目なんだよね?
良いやり方を速く見つけて、修めたい。
そのためには、ひたすら本を読んで、音楽も聴いて、映画も見て、舞台も見て、絵も見て、アニメも見て、ダンスも見て? 本も音楽も映画も舞台も絵画もアニメもダンスも、娯楽や趣味や好きなものじゃなくて、他人に近づくための勉強だったの?

もっと早く気がついて方向転換しろよ。多分もっと他に実直な方法あるよ。すんなりできるかできないかは別とすれば。

このことを帰宅後、大学ノートにメモを残す。「憂鬱」が漢字で書けるようになっていたので、少し嬉しい。

5月3日(金)

新聞紙で作ったこよりで出来た造形物の展覧会に行く。
動物の目の周りの筋肉の流れとか身体のでこぼこ、線が生々しい。リクガメとかイグアナの皮膚のでこぼこしたところが色紙を使ってるのだが、色石をはめ込んでるように密度がある感じ。
会場でアフリカゾウを作っていた製作者の方に「動物好きなんですか?」と聞いたら、「そうでもないです。写真見て、筋肉の流れとか見ながらひたすら作って、エネルギーを感じれるんじゃないかな、と」と話した。好きじゃなくても、これだけのもの作れるんだ、と嬉しかった。ここにある動物の造形作品が無くなったら、悲しいだろうな、と思わせられた。造形の支配力、否応なしに、在る感じがすごい。
おばあさんが製作者の方に「お仕事しながら作ってるの?」と訊ねていた。「いいえ、これが仕事です。あんまりお金使わないようにして、ずーっとこれ作ってます」と答えた。
あ、やっぱりそういう人たちなんだな、と少し苦しかった。

近くの神社で御参り。
鯉に餌をやっている女の子がいる。「なんでそんなにバクバク食べるの? ゆっくり食べた方が幸せでしょ?」と言いながら、餌を一粒一粒落としている。
くすくす笑い、頷きながら様子を見ている。
次の瞬間、女の子は袋の中の餌をわしづかんで「良いよ良いよ、バクバク食べて良いよ」と餌をまいた。
……何があったの? その袋にお手々を入れて出すまでの間に、心の中で何が変わったの?

帰り道、百貨店の前を通ると、物産展をやっている。外で売っている揚げ物の匂い、換気扇から漏れるバターのような匂いが無性に鼻につく。小学校4,5年生くらいの女の子二人が来る。「えらいねーちゃんと買ってさ、お母さんに」「んー、でも○○ちゃんも買うじゃん」「いやでも、うちのお母さん絶対こんなところじゃない」という会話が聞こえる。二人共リュックを背負ってきている。カジュアルな明るい青色のデニム生地のスカートと髪を結ってる白いテロテロした生地のリボンが、幼い。

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最近、もっと速く満足したいと思うようになった。
大学生になるまで他人に関心が薄くて困らせたり実は怒らせたり悲しませたり軽蔑されたりしたかもしれないから(そんな風に相手に思われる程きちんと関わったような気はしないので杞憂だと思うのだが、念のため他人にあまりよく思われていなかったかもしれないという想定をする癖がついた、そうしないと本当に鈍感な酷い奴になると思うと怖かった)、速く速く他人に、かつての同級生たちと同じくらいの関心を示せるようになって、自分自身を軽蔑することを止めたい。速く速く速く、自分自身を軽蔑したくないという自尊心とは関係なく、そこから自由になって、他人と仲良く暮らしたい。速く速く速く、自分の好きなことと喜ぶことを掴み取りたい。縁故じゃないところでも働けるようになりたい。本に囲まれたところでアルバイトしてみたい。

速度はずっとずっと落としている。だからそうしてどうなるべきなのか?
速度を落としている最中は、そんなこと意識していないものなのかもしれない。
ゆっくりゆっくり周囲を確認しているのかもしれない。

神社でおみくじを引いた。病気 本復しますが油断するとぶり返しますって書いてたしね。

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