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なぜ我が家にヤギがいるのか(前編)

どうも、家主のジェームスです。
お気付きの方もいらっしゃるでしょうが、我が家にはヤギがいます。ヤギです。みなさんご存知のウシ科ヤギ亜科ヤギ族ヤギ属のヤギです。今日は我が家になぜヤギがいるかをご説明したいと思います。

2017年春、私たち家族は兵庫県のとある街の山間にある一軒屋に引っ越してきました。この頃は寄生住人佐奈田がアメリカに行っていた頃なので、至極平穏無事に時間が流れていく頃でした。もともと私は大阪市内の生まれなのですが、物心がつく頃には大阪の南部のニュータウンに引っ越していました。私が育ったニュータウンは昭和50年代に大手不動産会社が山を切り開き分譲した地域で、ちょうど平成狸合戦ぽんぽこに出てくるような典型的なニュータウンでした。住宅街を少し離れれば田畑がひろがり、夏は川や用水路でザリガニを捕まえたり、ヘビや狸やカワセミもたまーに見かけるような、見かけたらまぁラッキーかなぐらいの比較的のんびりした地域でした。

そのせいか大人になってからも大阪市内のような都会の雑踏の中では遊びこそするものの、そこに住むということがどうしてもイメージができず、出来るだけ田舎に住みたいという考えが自然と心の中に芽生えていました。そしてそれは子どもが生まれたことで「子どもにはのびのび過ごしてもらいたい」「植物や生き物に親しめる“土”のある生活がしたい」というふうに加速度的に増していきました。

そんな中見つけたのが佐奈田に寄生住をされている今の家でした。この家には庭と合わせて畑があり、周囲も田畑で囲まれてなんとも見晴らしがよく、その上すぐ近くに池や山がある自然豊かな立地の家でした。築35年と自分より年上の家でしたが、素人目ではあるもののまだまだ建物もしっかりしており、決断するまでにそう時間はかかりませんでした。

家を購入してすぐ問題になったのは「雑草問題」です。もとも畑付きの家を買ったのは畑がどうしてもやりたかったからではなく、広い土地がほしかったからです。子どもが走ったり遊んだりしながら土に触れられる場所の確保が目的でした。その横で家庭菜園ぐらい出来ればいいなという思いはありましたが、私たちは共働きで育児もあるので、本格的な畑をするにはすこしハードルが高かったのです。実際購入前の内覧の時にも子どもたちが畑で走ったり草花を見つけてはしゃいでいる姿が見られたので、引っ越す前から畑の使い道はおのずと決まっていきました。

春になり、桜が散ってあたりの若草が萌えはじめる頃、私たちは引っ越してきました。その時、子どもたちが走り回るはずの畑は藪と化していました。大人の肩ほどある雑草がすごい密度でからまり合い、子どもが走りまわるどころか、これでは多襄丸も若い侍とその女房を誘い込むことが出来ません。(わからない人は本か映画でチェック)

最初の草刈りは、途中私の地元の友人小坪(コツボ)の助けもありましたが、3日がかりでした。うちの畑はもともと田んぼを畑に転用した土地だったようで湿気が多く、雑草もスギナなど地面に茎をはる草がたくさん生えており、文字通り骨が折れるかと思うほどの重労働でした。

草刈りが終わりホッとしていた私ですが、2週間後、私は戦慄することになります。そう、畑はまた藪と化そうとしていたのです。迂闊でした。私はたしかに幼い頃から自然の近くに住んでいましたが、それはあくまでも近くで暮らしていただけであり、自然と隣りあわせの暮らしではなかったのです。30を過ぎて知った自然の恐ろしさ。これでは休みが全て草刈りで終わってしまう。子どもたちやパートナーと過ごす時間も趣味の時間も全て草刈りに費やされてしまう。

私は一義的ではあるものの仕事、労働は余暇を有意義に過ごすために行うものだと思っています。その余暇が草刈りで終わってしまうということは“草を刈るために働く男”というなんとも不思議な人間になってしまいますし、私が今際(いまわ)の際に人生を振り返った時「あぁ、ついに草を刈りきることはできなかったか…」と口では言いながらも草刈りをやりきった穏やかな表情を浮かべながら逝くという訳の分からない人生の終わり方をしてしまうかもしれません。そこで私は決意しました。

「そうだ、ヤギを買おう。」

つづく。