なるべく誰とも仲違いせず、平穏に暮らしたい。

無理して誰かと仲良くするぐらいなら、涼しいお部屋で一人ハーゲンダッツでも食べながら呑気にアマゾンプライムで映画でも観てたい。
ケンカは面倒だから嫌い。
適切に距離を保って、風通しよく爽やかに過ごそうよ。
歳が近いからとかママ同士だからとか、
たまたまの理由でしばらくの時期、同じ空間にいるだけでしょ。
精神的にそこまで近づいたらさすがに暑いってば。
そんなわたしにも苦手な女、はいる。

こちらからふっかけるのではなく、
何かにつけてやたらと対抗意識を燃やしてくる、やたらと距離の近い女。
仲間内のパーティーがあれば
「あなた何着ていくの？被らないようにしたくて。和服では来ないでね」
年下のボーイフレンドと話していると割り込んできて
「わー、おばさんにも優しいのね！ねぇ、お母さんっていくつ？」
暑苦しいったらありゃしない。
わたしのことは好きにならなくていいし、理解もしなくていい。
苦手なら近寄らなければいいじゃない。どうしてこちらに来るの。

でも、わたしが彼女と接していて何より穏やかでいられない最大の理由は、
そして心底「どうでもいい」とは言えずこっそり気にかけてしまうのは、
彼女には素敵な恋人がいて、（たぶん）しょっちゅう愛し合ってるから。

わたしは夫とのセックスレスを当然周囲に打ち明けていない。
それどころか嗅ぎつけられないよう、仲の良さをことさら誇示しがちだ。
「実は夫に必要とされていない可哀想な妻」だなんて、思われたくないから。

時折どうしようもなく自分が惨めになる。こんなこと誰にも知られたくない。
わたしが一人やりきれない気持ちで何時間も眠れずにいる夜も、
彼女は恋人としてるのだ。肌を重ねた後、寄り添って眠っているのだ。
少なくともわたしより、彼女は必要とされているのだ。なんてこったい。

和服の襟元がいつ見ても野暮ったいなーとか
年齢はそう違わないのに髪や肌の手入れをしてないせいで老けてるとか、
作り笑いの下で小馬鹿にしてるけど、生き物として勝ってるのは彼女、
なのかもしれない。眠れないまま明るくなってくる窓を見ながらそう思うと泣けてくる。

わたしがずっと夫に必要とされていない女だって知ったら、
彼女はどんな風に嘲笑うんだろう。
ちょっと高価な美容液も月イチのヘアサロンも毎日の筋トレも、
何のための努力なんだか、時々わからなくなる。

お願いだから近づかないで。羨ましいだなんて、絶対認めたくないんだから。


#セックスレス #女同士 #マウンティング