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なりたい自分に近付く術、遠退く罠

自分が見られたい姿を装うことが必ずしも正解ではないと知ったのは、つい最近のこと。
これまでの私は、透明感が欲しければ紫色のコントロールカラーを駆使し、イノセントに見せたいと思えば白い襟付きのワンピースを纏う、「いわゆるガーリー」に傾倒しては、その枠の中にきちんと収まるように生きていた。それが私にとって最善なのだと信じて疑わずに、気持ちよく過ごしていた。
だけれど、歳を経れば経るほど、どうも「ガーリー」がほんの少しズレて「メルヘン」に仕上がってしまう気がする。そんな違和感を感じる瞬間も稀にあった。

さて見ないようにしようか、気付いていないことにしてやり過ごそうかという時、まるで見透かされているかのようにこう言われたのだ。

「世の中の大体の物事は、得てして見せようとしている逆の側面に光が当たるよ。若く見せようとすればするほど老けて見える。逆にカジュアルなアイテムを纏うことで女性特有の柔らかさのようなものが際立ったりもする」

その瞬間、私は思い当たる色々な人や物を思い浮かべては激しく納得した。黒い服を着ることでその人が持つ華やかさが強調されていたり、アイメイクを濃くすることで余計に目が小さく見えてしまう気がして落ち込んだり、率先してファニーな冗談を言っている人の知性をまざまざと感じさせられて唸ったり。
どうも世の中は良くも悪くも裏目だらけだ。

そう気付くと、これまでの自分に降りかかっていたオブセッションに苦笑いしてしまうと同時に、試してみたいことや思考の幅がぐっと広がった。
メンズのジャケットからきちんとケアした手首や指先を意識的に覗かせてみたり、パーティーでは敢えてマットでシックな色味のメイクにしてみたり。
以来、嬉しいことに憧れているような人たちから「素敵ね」と褒められる回数も増えたし、自分でもしっくり仕上がる日が増えたような気もする。

見せたい姿を見せたいままに演出することだけが術ではない。
それが最近の気付きであり、意識しておきたいと思っていることの一つ。

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前田紀至子

新潮社ニコラモデルや光文社JJライターを経て、旅や美容を中心として暮らしに関する文章を寄稿しています。

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