明日から使える素敵な魔法

とても美しい友人がいる。彼女と私は、ライフスタイルも性格も職業も何一つとして共通点は無いのだけれど、幸運にも偶々出会う機会があり、嬉しいことに仲良くしてくれている。

先日、彼女と一緒に駅に向かって歩いていた時のこと。黒いロングカーディガンから覗くナッツ色のトップスや、手に持っているバーガンディー色の鞄が、何だか妙に印象的だった。その後電車に乗っている時に目に付いたのはつり革を持つ彼女の指先。べっこう風のブラウンと真紅のネイルのコントラスト、品良くあしらった繊細なゴールドのモチーフ。それら総てが思わず真似したくなるほど完成されているように見えた。

その日の私はほぼ真っ黒な出で立ちで、それはそれで気に入ったコーディネートではあったのだけれど、反面何か明るい色のアイテムを取り入れれば良かったかなと、ほんの少しだけ後悔した。そしてその分、私は彼女を賞賛した。「色使いが素敵ね、真似したい」と。

すると彼女は、なめらかな唇でこう言った。

「心が愉しくなるから」

私は、はっとした。これまで私は、自分の趣味嗜好や気分を鑑みることはあれど、心が愉しいという発想は持ち合わせていなかった。もしかすると無意識に行えている時もあったかもしれないけれど、仮令それが成立していたとして、「なんだか今日は気分が良いな」だとか「コーディネートがぴったりハマっている」という程度の曖昧な満足で終わっていたような気がする。

しかし、彼女のその言葉を聞いてからというもの、私の生活には閃きや悦びがぐっと増えた。隙あらば心が愉しくなる方を選択するようにしたからだ。

ネイルポリッシュの組み合わせ、お風呂に入れる入浴剤の種類、出かける前の香水にアイシャドウやルージュの色、かぶる帽子。机の上に飾るもの、仕事の内容をメモする時のペン、カフェで注文するメニュー。

このところの私は、日常の中には無限の愉しみの種が落ちているということを知り、とても気分が良い。自分の選択に対して「やっぱりあっちにすれば良かった」と思うことも皆無になった。まるでちょっとした魔法を使えるようになったような、そんな気持ち。

誰でも明日から簡単に使えるようになる魔法。騙されたと思って試しに一度、自分の心に尋ねてみてください。

「その選択、心が愉しいですか?」

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前田紀至子

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