お気に入りの服にひと手間を

これまで、なかなか大変だわ、と思ってきたことの一つに洋服探しがある。

背が低い。そもそも総てのパーツが小さい。更に躰が薄っぺらい。標準体型から大きく外れた私の体型に合う洋服を探し出すのは簡単なことではなかった。
上半身は三号で下半身は五号。
そんな体型に合う既製服なんてなかなか存在しない。
仮にあったとしても、まるで子供服のようなものばかりで、「今っぽいデザイン」のものはそうない。サイズがぴったり合うものを見つけ出したからといって、なかなかお洒落にはなれないことを身にしみて実感していた。

そんな折、お洒落の鬼のような方が私の服装を見てさらりと言い放った言葉が忘れられない。
「ちゃんとサイズ直し、してみたら?」

確かに、言われてみれば私は。
いざ洋服を買おうとしてもサイズが合う服を手に入れようと探すばかりで、着たい服やワードローブに加えたい服を選びとった後、自分に合うように調整しようなんて考えもしなかった。ボトムの着丈やウエストはおろか、パンツの着丈さえも。

しかしながら、どうやらそれはファッションに対してどうにも傲慢な行為だったらしい。

早々にお薦めして頂いたお直しのお店は抜群に仕上がりが良いとのことで、その筋では大変に有名なところだったのだけれど、これまで「簡単にウエストを詰めればまあ着れないことも無いかな」といった気持ちで出していた、スピードと気軽さが売りのお直ししか経験したことの無かった私は、少なからず驚くこととなった。

「此処と此処と此処を何センチずつ詰めてトータルで何センチ小さくなるようにしましょう。そうすればシルエットも変わりませんから」

まるで重要なオペの計画のように説明されるお直しの内容と、想像を上回る期間や見積もり金額に。
少しも怯まなかったと言えば嘘になる。それでも思い切って身を委ねた結果、私の服探しの扉は大きく開けた。

「ある程度きちんとした服は、テーラーメイド感覚で作られているのだから、服を自分に合わせて着ることが当たり前になってほしいよね」

気がつけばスカートやパンツを買う度、その足でいそいそと修理に持って行くようになった私を見て、その人が言う。
修理代は数千円、ときには一万円を超えることもあるけれど、その金額を払うだけで鏡に映る自分がぐっと見違えるのだからもうやめられない。
1cm単位で行う調整の大切さを思い知るし、何より「服が今ひとつ自分に似合っていないストレス」から解き放たれることが出来るのだから。

これまであんなにも難しいと思っていたボトムス選び。
実は腰回りのフィットさえおさえれば、着丈は大した問題では無いと知って以来、私は洋服が今までよりもずっと好きになった。

さぁ、ぜひお気に入りの一着に一手間を。

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多謝
90

前田紀至子

乙女的服飾手引

乙女視点の服飾百科
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