運を開きに香港へ

今までに何度か聞いたことがあった。香港には作るだけで運気が上がる印鑑屋さんがある、と。

実際に何人かの友人に「ペニンシュラに判子を作りに行かない?」と誘われたことがあったし、気が乗らないでも無かった。それでもなぜか実現するには至らなかったのだ。ペニンシュラの判子、というキーワードだけを薄っすら記憶に残したまま。

今回の香港への旅は突然だった。そして何処へ行くも、何をするも決まっていないまま(大好きな蓮香楼にだけは何としてでも時間を作って行きたいと思ってはいたけれど)香港へ行くことになったのに、何故か直前になって再び登場したのが「ペニンシュラの判子屋さん」というキーワードだった。

これはもう行くしかない、直感でそう感じた私は、香港に到着するなり寄り道も買い食いもせずにペニンシュラのアーケードへと向かうことにした。そしてペニンシュラのアーケードを突き抜け、“TANGS”と書かれた看板を探す。

階段を登り、ラ・ペルラを横目に、そっとお店へと足を踏み入れる。視界に飛び込んできたのは美しい数々の天然石。日本語が流暢な店員さんに促され、金運や仕事運、恋愛運といった石に込められた力を参考にしながら、自分にとって最もピンとくる石を選ぶ、というのが、このお店のシステムのようだった。

私の本来の好みならば、濃い蒼の石の中に雪のような金が舞うラピスラズリを選んでいただろう。しかしながら何故かその時、私が惹かれたのは赤水晶だった。不思議に思ったので店員さんにアドバイスを求めたら「優しい雰囲気にも合っているし良い」と背中を押して貰えたから、気持ち良いほど迷いは消えたのだった。

印鑑を掘るには1日〜2日要するということで、到着早々にお店を訪れたことは結果として正解だったし、お店を後にしてからも驚くほどにタイミングが良いことや幸運なことが続いた。もしかしたら本当に運気が上がったのかもしれないし、単に私にとって香港という土地が合っていただけかもしれない。それでも気分はとても良かった。

そして翌日。出来上がって来た印鑑は私が今まで持っていたものとは全く違う魅惑的なもので、総ての文字が美しくデザインされていた。どの文字も印鑑の縁と繋がっているのが運気を流しだしてしまわないためのポイントなのだそうだけれど、デザインとしてもパーフェクトだと感じたのだった。

私はずっとこのタイミングを待っていたのかもしれない。そんな気持ちと共に、ドラゴン模様の布が張られたその小さな宝石箱を大切に抱えホテルに戻った。これからは訪れる毎に新しく印鑑を作るのも良いかな、なんて思いながら。

香港は運を開きに行くにはこれ以上無い場所、そんな気がする。


TANGS
住所:Shop MW4, Mezzanine Floor, The Peninsula Hotel, Tsim Sha Tsui
TEL:2712-1382
時間:10:00-19:00
定休日:旧正月

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前田紀至子

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